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第ニ章・お兄様をさがせ!
第二十五話
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揺れる馬車の中で一人の少女は想いを馳せる。
ーーお兄様は元気なのでしょうか?
そんな少女が兄と最後に別れてからもう三年になる、その間に連絡の類いなどは一切なく、兄の安否すら分からない状況だった。
しかし、今から約半年ほど前にやっとの思いで少女は兄の居場所を突き止めた、その居場所こそ現在進行形で向かっている職業学園エルニーニョという隣国の職業学園だった。
兄の居場所が分かってからの少女の行動は迅速だった、自分の通っている学園に留学の申請を出し、即座に兄と同じ学園に行こうと行動した。
しかし、学園も優秀な人材を他国の学園に留学させるのはある意味で大きなリスクを背負う事になる。そのためか少女の申請が通ったのは今から数えて一ヶ月も前の事だった。
何故くだらない政治の問題の為に自分の動きを制限されなくてはいけないのかと辟易とする少女だったが申請が通ってからは、やっとお兄様に会える、と少女は胸を躍らせていた。
だが、憂鬱な事に留学生というのは存外面倒な物で、到着してすぐに兄探しとは行かない。
どうやら歓迎も兼ねて学園内を案内をするとかなんとか。
正直煩わしい、と思いつつも留学生という立場であまり悪目立ちをすると兄の面子に関わるかも知れないと少女は兄を探しをしたい気持ちを無理やり押さえ込み、優等生として振舞う事にした。
ーー本当に、早くお兄様に会いたい。
赤髪の少女は流れる景色を横目に兄への思いを募らせるのだった。
ーーーーーーーーーー
「ここが、職業学園エルニーニョですか」
立派な校門の門構えを見上げながら少女は思う、一つ目の門を潜ってから更に馬車で一時間も走らなくてはいけないのだからおかしな話だ、と。
「星詠み賢者、ルーベンス・リベラルド、一介の学園長にして世界で最も資産を持っているのは本当なのですね」
馬鹿みたいに広大な学園の敷地はルーベンスが元々所有していた土地だった、その他にも貴重な鉱山の利権や空の特殊区域の利権など、世界的に貴重な物の利権はほとんどルーベンスが持っているそうな。
ルーベンス曰く、勝手に集まっただけ、らしいが。
しかし無駄に広いですね、と少女が呆れたように溜息を吐くと、不意に背後から声を掛けられる。
「あの、エルフィア・ドラクレアさんですか?」
そこに気配など感じ無かった筈だ、と少女エルフィア・ドラクレアは警戒をしながら振り向いた。
「どうかされましたか?」
ポカン、と不思議そうな表情を浮かべる少女にエルフィアは警戒をしながら問い掛ける。
「何者ですか、名乗りなさい」
いつでも抜刀出来るように腰の剣にてを掛けるエルフィアを見て、声を掛けた少女は、やってしまった、と少しだけ後悔をする。
「すいません、怪しい者ではないんです。ワタシはリリィ・マクスウェルと言いまして、この学園の生徒です」
生徒? と燻し噛むような表情を浮かべるエルフィアに、リリィは懐から生徒手帳を取り出し見えるように掲げた。
二度三度、リリィの掲げる生徒手帳を確認するとホッと息を吐いてエルフィアは警戒を解いた。
「本物、ですね」
本当に驚きました、とエルフィアが一言溢す。
そんなエルフィアに向かい、リリィは苦笑いを浮かべて、すいません、と謝った。
ーーお兄様は元気なのでしょうか?
そんな少女が兄と最後に別れてからもう三年になる、その間に連絡の類いなどは一切なく、兄の安否すら分からない状況だった。
しかし、今から約半年ほど前にやっとの思いで少女は兄の居場所を突き止めた、その居場所こそ現在進行形で向かっている職業学園エルニーニョという隣国の職業学園だった。
兄の居場所が分かってからの少女の行動は迅速だった、自分の通っている学園に留学の申請を出し、即座に兄と同じ学園に行こうと行動した。
しかし、学園も優秀な人材を他国の学園に留学させるのはある意味で大きなリスクを背負う事になる。そのためか少女の申請が通ったのは今から数えて一ヶ月も前の事だった。
何故くだらない政治の問題の為に自分の動きを制限されなくてはいけないのかと辟易とする少女だったが申請が通ってからは、やっとお兄様に会える、と少女は胸を躍らせていた。
だが、憂鬱な事に留学生というのは存外面倒な物で、到着してすぐに兄探しとは行かない。
どうやら歓迎も兼ねて学園内を案内をするとかなんとか。
正直煩わしい、と思いつつも留学生という立場であまり悪目立ちをすると兄の面子に関わるかも知れないと少女は兄を探しをしたい気持ちを無理やり押さえ込み、優等生として振舞う事にした。
ーー本当に、早くお兄様に会いたい。
赤髪の少女は流れる景色を横目に兄への思いを募らせるのだった。
ーーーーーーーーーー
「ここが、職業学園エルニーニョですか」
立派な校門の門構えを見上げながら少女は思う、一つ目の門を潜ってから更に馬車で一時間も走らなくてはいけないのだからおかしな話だ、と。
「星詠み賢者、ルーベンス・リベラルド、一介の学園長にして世界で最も資産を持っているのは本当なのですね」
馬鹿みたいに広大な学園の敷地はルーベンスが元々所有していた土地だった、その他にも貴重な鉱山の利権や空の特殊区域の利権など、世界的に貴重な物の利権はほとんどルーベンスが持っているそうな。
ルーベンス曰く、勝手に集まっただけ、らしいが。
しかし無駄に広いですね、と少女が呆れたように溜息を吐くと、不意に背後から声を掛けられる。
「あの、エルフィア・ドラクレアさんですか?」
そこに気配など感じ無かった筈だ、と少女エルフィア・ドラクレアは警戒をしながら振り向いた。
「どうかされましたか?」
ポカン、と不思議そうな表情を浮かべる少女にエルフィアは警戒をしながら問い掛ける。
「何者ですか、名乗りなさい」
いつでも抜刀出来るように腰の剣にてを掛けるエルフィアを見て、声を掛けた少女は、やってしまった、と少しだけ後悔をする。
「すいません、怪しい者ではないんです。ワタシはリリィ・マクスウェルと言いまして、この学園の生徒です」
生徒? と燻し噛むような表情を浮かべるエルフィアに、リリィは懐から生徒手帳を取り出し見えるように掲げた。
二度三度、リリィの掲げる生徒手帳を確認するとホッと息を吐いてエルフィアは警戒を解いた。
「本物、ですね」
本当に驚きました、とエルフィアが一言溢す。
そんなエルフィアに向かい、リリィは苦笑いを浮かべて、すいません、と謝った。
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