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第ニ章・お兄様をさがせ!
第二十七話
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「私はお慕いしているお方がいるのです」
と、エルフィア・ドラクレアはそう言った。
校門から本校舎までの長い道中、リリィとエルフィアは雑談に花を咲かせていた。
「それは異性として好きな人がいるってこと?」
そうリリィに尋ねられると、エルフィアは口元に手を当て少しだけ悩み、答える。
「恐らく異性としても、人としてもお慕いしています、愛して止まないという意味ではどちらでも変わらないと思うのですが、どうもその辺りが私の中でハッキリとしないのです」
自分の事なのに胸の内に湧き出る感情が愛なのか好きなのかが分からないですよ、とエルフィアは小さく溜息を吐く。
「リリィにはそういった方はいないのですか?」
同年代の友人がいなかったエルフィアはいい機会だと思い立ち、そう尋ねるとリリィは、ワタシ!? と驚く。
「そうです、リリィにはお慕いしている御仁はいないのですか?」
「ど、どうなのかな? いるのかな?」
良く良く考えてみると自分も色恋沙汰にはてんで無関心だった、という事に気付くとリリィは悩ましげな表情を浮かべて脳内で該当する人物を探す。
しかし好意的に思っている人物を列挙していくことは出来るがそれが異性の、ましてや恋愛感情なのかと問われるとそれは違うような気がする、とリリィは頭を悩ませる。
困ったように眉をひそめるリリィを見かねたのか、エルフィアは小さな助け船を出した。
「気になる方や尊敬してる方もいないのですか?」
気になる人や尊敬している人物、と置き換えると、何故かスラスラとそういった人物が浮かび上がってきた。
尊敬や敬愛する人物が気になる人と言うのであれば、友人含む周囲の人間ほぼ全員がそういう対象に含まれるような気がする、とリリィは思う。
「気になる人は、いる、のかな? 尊敬してる人は沢山いるから慕うって意味ならきっと友達全員になると思うんだよね」
フム、とエルフィアは口元に手を当て一拍の間を持ち考える。
「私たちはもう成人ですからね、色恋沙汰に無関心という訳にもいかないと思うのです」
「確かにそうかもしれないね。でも成人かぁ」
思えばあっという間だった、とリリィは染み染みと感じる。
この世界での成人は数え歳で十五とされている。
当然そうなったからといって誰もが出家したり婚約をする訳ではないが、力のある者は早々に独り立ちするのが世の一般的な習わしとなっていた。
「やっぱりエルフィアはその慕っている人と結婚したいの?」
「結婚は少し難しいですね、個人的には独占して私に依存させて私だけを見ていただきたいのですが」
これが難しいのです、と少しだけ愁いを帯びた顔をする。
「ど、独占に、依存?」
思いも寄らぬ返答にリリィは呆然としてしまう。
「変な事でしょうか? 好いている方やお慕いしてる方に自分だけを見て欲しいと思うのは?」
変ではない、とリリィは思う。友人が自分の既知外の人と親しげに話している所をみるとリリィは言いようのないモヤモヤとした感情に襲われる事があった。
振り返って考えてみればそれは嫉妬という独占欲だったような気がしてならなかったからだ。
「普通、かな?」
「そう、至って普通です。むしろそう言った感情が湧いてこないなら実はその方に関心がないのではないでしょうか?」
「うーん、確かにそうかも知れないけど……」
そう言った感情を友人に向けるのはどうなのだろうか? とリリィは考える。
親密になったからと言って自分だけを見て考えてくれというのはあまりにも自己中心的すぎると思うのだ。
そんなリリィの考えを見透かすようにエルフィアは微笑を浮かべて口を開いた。
「自分の感情に任せて行動すると相手に迷惑がかかる、ですか?」
言い表せない言葉を的確に表現するエルフィアにリリィは激しく同意する。
「そう! それ!」
「そうなのです、だから難しいのですよ」
ああ、なるほど、とリリィは得心する。
エルフィアもこうしたい、ああしたい、という感情はあるが、その感情のままに行動してしまうと良くない、それが分かっているからこその、難しい、だった。
「お兄様は何でも一人で出来る方でしたからね、私に依存させる事できなかったのです」
ーー? お兄様?
はて、おかしな単語を聞いたとリリィは首をかしげる。
リリィが悩ましく首をかしげる仕草を見て自分の発言に疑問を持ったのだと思ったエルフィアは発言の意図を解説する。
リリィの疑問はそこでは無かったのだが……。
「自分の感情に任せて行動するのは確かに愚策ですが、相手から私を求めるようになってしまえば全く問題ないですよね?」
酷く純真な笑顔を浮かべながら歪んだ感性を全開にするエルフィアだった。
「それはそうだけど……エルフィアさん?」
「はい?」
「お慕いしてる人ってお兄さん、なの?」
リリィの言葉に空気が固まったかのような錯覚を受けるエルフィア。
固まってしまった笑顔のまま、上ずった声でリリィに問い返す。
「………ナゼソンナコトヲキクノデスカ?」
突然片言で喋り出すエルフィアにリリィは確信を得る。
「やっぱりそうなの?」
「………チガイマスヨ」
目を逸らし、あからさまに動揺しているのが分かるとリリィは疑わしい視線をエルフィアを向ける。
リリィが凝視し続けると次第に冷や汗のような物が額に見て取れると、追い打ちを掛けるようにリリィは口を開く。
「エルフィア? さっきね、お兄様は何でも出来る方って言ってたよ? 流れを汲むとそういうことなのかなってワタシは思うんだ」
口を真一文字に結び、エルフィアは壊れたロボットのようにゆっくりとリリィに向き直る。
「わた、私は別にお兄様に特別な感情を抱いたりはしてないのです、これはあくまでも家族愛に属するものであって恋愛感情なるものではないと自負してます、ハイ」
「でもさっき異性として好きなのか人として好きなのか分からないって言って無かった?」
「あぅ、あれは……………そう、物の例えです、人の感情というものはよく分からないという例え話なのですよ」
「フーン」
とって付けたような言い訳にリリィは更に疑わしいという視線をエルフィアに向ける。
「例えば、例えばの話ね?」
「は、はい」
「もしもエルフィアのお兄さんが美少女を何人も周りに侍らせて鼻の下を伸ばしてたらどうする?」
エルフィアはそんな質問をされた瞬間にスイッチが入ったように眼光が鋭く光らせると威圧感を含む声音で答えた。
「即座に虫を排除してどうしてそんな事をしたのか問い詰めた後に答えによっては………」
しかし、リリィがニマニマと笑みを浮かべている事に気づくとエルフィアは目を逸らし口を閉じる。
からかうようにリリィなエルフィアに聞いた。
「答えによってはどうするの?」
「チガイマスナニモシマセン、オニイサマノエランダジョセイナラキットスバラシイカタガタデショウ」
またも片言でシラを切るエルフィアにリリィは一つため息を吐いて言った。
「もう、強情なんだから。それじゃあワタシがお兄さんの事を好きになったりしても良いの?」
エルフィアはバッと勢い良くリリィの方を向くが何を口にしたらいいのか分からずに口をパクパクとさせる。
「嫌でしょ?」
エルフィアはシュンと落ち込み、小さく頷く。
「私は自分が変だと自覚はしているのですよ、でもどうしようもないのです、お兄様へのこの想いは日に日に強くなるばかりで自分を偽るのが辛いのです」
沈痛な面持ちを浮かべながらエルフィアは言葉を続ける。
「最初は只の憧れでした、何でも簡単にこなしてしまうお兄様を見て私もお兄様のように慣れたらいいなとそう思う程度だったのですよ、でも……」
「でも?」
大事な思い出を噛みしめるようにエルフィアは柔らかな笑みを浮かべた。
「私が七つの時のことでした、私は金銭目的の誘拐犯に誘拐された事があるのです、幸い大事になる前にお兄様が救い出してくれたのですけれど、当時の私は誘拐犯がとても恐ろしいとお兄様にしがみついてずっと泣いていたのですよ、そんな私を宥めるようにお兄様はずっと手を握り声を掛けてくれました、『大丈夫だよ、エルは僕が必ず守るから』と優しい声で、心の底から安心した事を良く覚えています」
「じゃあ、お兄さんに特別な感情を抱くようになったのってその時から?」
「そう、なりますね。優しい言葉を掛けられただけで靡く単純な女だと笑っても良いのですよ?」
少しだけ自虐的な笑みを浮かべるエルフィアにリリィは首を横に振った。
「ワタシは笑ったりしないよ」
リリィの言葉に、エルフィアは顔を上げた。
「ワタシもね? 世間的にはきっと間違った選択をしてると思うの」
「間違った選択?」
「うん、ワタシの目標はね、偉大な魔法使いなの、職業適性が最低のクセに大それた職業を目指してる、でもそれって周りからみたらとても馬鹿で、どうしようもない愚か者って思われると思わない?」
そんなリリィの言葉にエルフィアは顔を顰める。
確かに、普通ならあり得ない選択をリリィはしているかもしれない、しかしそれを間違った選択かどうかを決めるのは周りの人間ではないとエルフィアは思うのだ。
「それは、そうかもしれません。しかし少なくとも私はリリィの夢が間違っているとは思えないです」
そんな飾り気のない言葉を受けたリリィは小さく微笑んだ。
やっぱりエルフィアはどこかアルフに似ている、そう思った。
「ありがとう、エルフィア。貴女がそう思ってくれたみたいに、ワタシもエルフィアのお兄さんへの想いが間違ってるとは思えないの」
「…………」
「ワタシはまだ誰かを好きになった事はないけど、そういう気持ちって自分じゃどうしようもないんでしょ?」
コクリとエルフィアは頷く。
「ならしょうがないよ、ワタシの偉大な魔法使いになりたいって気持ちも同じだから分かるの、周りになんて言われても、どう思われても、止められないし止まらない、でしょ?」
「……はい」
「それならワタシは応援するよ」
「応援、ですか?」
驚いたようにエルフィアはリリィに聞き返す。
「そう、応援」
「でも私の気持ちは間違っても褒められるような物ではないですよ?」
「それでも応援するよ」
「十人に聞いたら十人がそれは変だってきっといいますよ?」
「ワタシは言わないし思わない、だから応援するよ」
「……なんで、ですか?」
リリィは迷わずに答える。
「ワタシもそうやって励まされたから、応援したい気持ちも本当だけど、ワタシの大事な友達がくれた物をエルフィアにもあげたいと思ったの」
気恥ずかしそうにリリィは頬を染める。
そんなリリィを見てエルフィアは目を瞑り、言う。
「いい、友人をお持ちですね」
「そうでしょ?」
誇らしげなリリィの声音を耳に、エルフィアは感謝の気持ちを込めて、小さく呟いた。
「始めて打ち明けた相手が貴女で良かった」
と、エルフィア・ドラクレアはそう言った。
校門から本校舎までの長い道中、リリィとエルフィアは雑談に花を咲かせていた。
「それは異性として好きな人がいるってこと?」
そうリリィに尋ねられると、エルフィアは口元に手を当て少しだけ悩み、答える。
「恐らく異性としても、人としてもお慕いしています、愛して止まないという意味ではどちらでも変わらないと思うのですが、どうもその辺りが私の中でハッキリとしないのです」
自分の事なのに胸の内に湧き出る感情が愛なのか好きなのかが分からないですよ、とエルフィアは小さく溜息を吐く。
「リリィにはそういった方はいないのですか?」
同年代の友人がいなかったエルフィアはいい機会だと思い立ち、そう尋ねるとリリィは、ワタシ!? と驚く。
「そうです、リリィにはお慕いしている御仁はいないのですか?」
「ど、どうなのかな? いるのかな?」
良く良く考えてみると自分も色恋沙汰にはてんで無関心だった、という事に気付くとリリィは悩ましげな表情を浮かべて脳内で該当する人物を探す。
しかし好意的に思っている人物を列挙していくことは出来るがそれが異性の、ましてや恋愛感情なのかと問われるとそれは違うような気がする、とリリィは頭を悩ませる。
困ったように眉をひそめるリリィを見かねたのか、エルフィアは小さな助け船を出した。
「気になる方や尊敬してる方もいないのですか?」
気になる人や尊敬している人物、と置き換えると、何故かスラスラとそういった人物が浮かび上がってきた。
尊敬や敬愛する人物が気になる人と言うのであれば、友人含む周囲の人間ほぼ全員がそういう対象に含まれるような気がする、とリリィは思う。
「気になる人は、いる、のかな? 尊敬してる人は沢山いるから慕うって意味ならきっと友達全員になると思うんだよね」
フム、とエルフィアは口元に手を当て一拍の間を持ち考える。
「私たちはもう成人ですからね、色恋沙汰に無関心という訳にもいかないと思うのです」
「確かにそうかもしれないね。でも成人かぁ」
思えばあっという間だった、とリリィは染み染みと感じる。
この世界での成人は数え歳で十五とされている。
当然そうなったからといって誰もが出家したり婚約をする訳ではないが、力のある者は早々に独り立ちするのが世の一般的な習わしとなっていた。
「やっぱりエルフィアはその慕っている人と結婚したいの?」
「結婚は少し難しいですね、個人的には独占して私に依存させて私だけを見ていただきたいのですが」
これが難しいのです、と少しだけ愁いを帯びた顔をする。
「ど、独占に、依存?」
思いも寄らぬ返答にリリィは呆然としてしまう。
「変な事でしょうか? 好いている方やお慕いしてる方に自分だけを見て欲しいと思うのは?」
変ではない、とリリィは思う。友人が自分の既知外の人と親しげに話している所をみるとリリィは言いようのないモヤモヤとした感情に襲われる事があった。
振り返って考えてみればそれは嫉妬という独占欲だったような気がしてならなかったからだ。
「普通、かな?」
「そう、至って普通です。むしろそう言った感情が湧いてこないなら実はその方に関心がないのではないでしょうか?」
「うーん、確かにそうかも知れないけど……」
そう言った感情を友人に向けるのはどうなのだろうか? とリリィは考える。
親密になったからと言って自分だけを見て考えてくれというのはあまりにも自己中心的すぎると思うのだ。
そんなリリィの考えを見透かすようにエルフィアは微笑を浮かべて口を開いた。
「自分の感情に任せて行動すると相手に迷惑がかかる、ですか?」
言い表せない言葉を的確に表現するエルフィアにリリィは激しく同意する。
「そう! それ!」
「そうなのです、だから難しいのですよ」
ああ、なるほど、とリリィは得心する。
エルフィアもこうしたい、ああしたい、という感情はあるが、その感情のままに行動してしまうと良くない、それが分かっているからこその、難しい、だった。
「お兄様は何でも一人で出来る方でしたからね、私に依存させる事できなかったのです」
ーー? お兄様?
はて、おかしな単語を聞いたとリリィは首をかしげる。
リリィが悩ましく首をかしげる仕草を見て自分の発言に疑問を持ったのだと思ったエルフィアは発言の意図を解説する。
リリィの疑問はそこでは無かったのだが……。
「自分の感情に任せて行動するのは確かに愚策ですが、相手から私を求めるようになってしまえば全く問題ないですよね?」
酷く純真な笑顔を浮かべながら歪んだ感性を全開にするエルフィアだった。
「それはそうだけど……エルフィアさん?」
「はい?」
「お慕いしてる人ってお兄さん、なの?」
リリィの言葉に空気が固まったかのような錯覚を受けるエルフィア。
固まってしまった笑顔のまま、上ずった声でリリィに問い返す。
「………ナゼソンナコトヲキクノデスカ?」
突然片言で喋り出すエルフィアにリリィは確信を得る。
「やっぱりそうなの?」
「………チガイマスヨ」
目を逸らし、あからさまに動揺しているのが分かるとリリィは疑わしい視線をエルフィアを向ける。
リリィが凝視し続けると次第に冷や汗のような物が額に見て取れると、追い打ちを掛けるようにリリィは口を開く。
「エルフィア? さっきね、お兄様は何でも出来る方って言ってたよ? 流れを汲むとそういうことなのかなってワタシは思うんだ」
口を真一文字に結び、エルフィアは壊れたロボットのようにゆっくりとリリィに向き直る。
「わた、私は別にお兄様に特別な感情を抱いたりはしてないのです、これはあくまでも家族愛に属するものであって恋愛感情なるものではないと自負してます、ハイ」
「でもさっき異性として好きなのか人として好きなのか分からないって言って無かった?」
「あぅ、あれは……………そう、物の例えです、人の感情というものはよく分からないという例え話なのですよ」
「フーン」
とって付けたような言い訳にリリィは更に疑わしいという視線をエルフィアに向ける。
「例えば、例えばの話ね?」
「は、はい」
「もしもエルフィアのお兄さんが美少女を何人も周りに侍らせて鼻の下を伸ばしてたらどうする?」
エルフィアはそんな質問をされた瞬間にスイッチが入ったように眼光が鋭く光らせると威圧感を含む声音で答えた。
「即座に虫を排除してどうしてそんな事をしたのか問い詰めた後に答えによっては………」
しかし、リリィがニマニマと笑みを浮かべている事に気づくとエルフィアは目を逸らし口を閉じる。
からかうようにリリィなエルフィアに聞いた。
「答えによってはどうするの?」
「チガイマスナニモシマセン、オニイサマノエランダジョセイナラキットスバラシイカタガタデショウ」
またも片言でシラを切るエルフィアにリリィは一つため息を吐いて言った。
「もう、強情なんだから。それじゃあワタシがお兄さんの事を好きになったりしても良いの?」
エルフィアはバッと勢い良くリリィの方を向くが何を口にしたらいいのか分からずに口をパクパクとさせる。
「嫌でしょ?」
エルフィアはシュンと落ち込み、小さく頷く。
「私は自分が変だと自覚はしているのですよ、でもどうしようもないのです、お兄様へのこの想いは日に日に強くなるばかりで自分を偽るのが辛いのです」
沈痛な面持ちを浮かべながらエルフィアは言葉を続ける。
「最初は只の憧れでした、何でも簡単にこなしてしまうお兄様を見て私もお兄様のように慣れたらいいなとそう思う程度だったのですよ、でも……」
「でも?」
大事な思い出を噛みしめるようにエルフィアは柔らかな笑みを浮かべた。
「私が七つの時のことでした、私は金銭目的の誘拐犯に誘拐された事があるのです、幸い大事になる前にお兄様が救い出してくれたのですけれど、当時の私は誘拐犯がとても恐ろしいとお兄様にしがみついてずっと泣いていたのですよ、そんな私を宥めるようにお兄様はずっと手を握り声を掛けてくれました、『大丈夫だよ、エルは僕が必ず守るから』と優しい声で、心の底から安心した事を良く覚えています」
「じゃあ、お兄さんに特別な感情を抱くようになったのってその時から?」
「そう、なりますね。優しい言葉を掛けられただけで靡く単純な女だと笑っても良いのですよ?」
少しだけ自虐的な笑みを浮かべるエルフィアにリリィは首を横に振った。
「ワタシは笑ったりしないよ」
リリィの言葉に、エルフィアは顔を上げた。
「ワタシもね? 世間的にはきっと間違った選択をしてると思うの」
「間違った選択?」
「うん、ワタシの目標はね、偉大な魔法使いなの、職業適性が最低のクセに大それた職業を目指してる、でもそれって周りからみたらとても馬鹿で、どうしようもない愚か者って思われると思わない?」
そんなリリィの言葉にエルフィアは顔を顰める。
確かに、普通ならあり得ない選択をリリィはしているかもしれない、しかしそれを間違った選択かどうかを決めるのは周りの人間ではないとエルフィアは思うのだ。
「それは、そうかもしれません。しかし少なくとも私はリリィの夢が間違っているとは思えないです」
そんな飾り気のない言葉を受けたリリィは小さく微笑んだ。
やっぱりエルフィアはどこかアルフに似ている、そう思った。
「ありがとう、エルフィア。貴女がそう思ってくれたみたいに、ワタシもエルフィアのお兄さんへの想いが間違ってるとは思えないの」
「…………」
「ワタシはまだ誰かを好きになった事はないけど、そういう気持ちって自分じゃどうしようもないんでしょ?」
コクリとエルフィアは頷く。
「ならしょうがないよ、ワタシの偉大な魔法使いになりたいって気持ちも同じだから分かるの、周りになんて言われても、どう思われても、止められないし止まらない、でしょ?」
「……はい」
「それならワタシは応援するよ」
「応援、ですか?」
驚いたようにエルフィアはリリィに聞き返す。
「そう、応援」
「でも私の気持ちは間違っても褒められるような物ではないですよ?」
「それでも応援するよ」
「十人に聞いたら十人がそれは変だってきっといいますよ?」
「ワタシは言わないし思わない、だから応援するよ」
「……なんで、ですか?」
リリィは迷わずに答える。
「ワタシもそうやって励まされたから、応援したい気持ちも本当だけど、ワタシの大事な友達がくれた物をエルフィアにもあげたいと思ったの」
気恥ずかしそうにリリィは頬を染める。
そんなリリィを見てエルフィアは目を瞑り、言う。
「いい、友人をお持ちですね」
「そうでしょ?」
誇らしげなリリィの声音を耳に、エルフィアは感謝の気持ちを込めて、小さく呟いた。
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