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第ニ章・お兄様をさがせ!
第三十二話
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突然目の前に現れた少年に、私は息が止まった。
心臓が早鐘のように激しく脈打ち、呼吸も浅くなって荒くなってしまう、でもそれは仕方ない事だ。
精悍な顔つき、凛々しい雰囲気、私を見つめる蒼い瞳。
間違えようがない、間違える筈がない、この人が、この人こそが私の最愛のお方、アルクェイド・ドラクレア、その人なのだから。
「さて、これはどういう事っすか?」
少しだけ乱れた呼吸を整えるとお兄様は蒼い双眼で敵意を含んだ視線を私に向ける。
「いや、これは……その」
すぐに剣を引き、事情を説明しようと口を開くが、まるで魚のように私は口をパクパクとさせるばかりだった。
緊張のあまり喋り方さえ忘れた私に呆れたのか、お兄様も宝剣を引き、不機嫌そうな表情を浮かべる。
ーーどうしよう、怒ってらっしゃる。
叱られた子供のように小さく縮こまっていると、お兄様は口を開いた。
「見ない顔っすね、アンタ誰っすか?」
ーー誰っすか? それは、一体だれに言って?
思考が、止まる。
「俺の大事な友達を傷つけてただて済むと思わない事っすね」
お兄様の言葉が、私には全く理解出来なかった。
いや、したく無かった。
「お、お兄様? 私です、エルフィアです」
きっと私が成長したせいで分からないのだろう、そうに決まっている。そうでなければお兄様が私を忘れるなんて事は……。
「? お兄様? よく分からないっすけど人違いじゃないんすか?」
ああ、ダメだ、視界が歪む。
立っていたくない。信じたくない。信じられない。吐き気がする。目眩がする。頭痛がする。胃痛がする。舌の根が乾く。気持ち悪い。辛い。泣きたい。悲しい。悔しい。
目の前の人は誰なんだろう? 何故お兄様と同じ顔をしているのだろう? 何故お兄様と同じ声でエルフィアの事をアンタと呼ぶのだろう? 何故お兄様の瞳でエルフィアを敵視するのだろう? 何故この人はお兄様と同じ仕草をするのだろう?
何故だろう? 何故だろう? 何故だろう?
何故? 何故? 何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故、
なんで?
「ごめんなさい、アルク兄様」
泣きそうな声が出る。
これはきっと夢だ、私が悪い子だったから罰が当たったんだ。
でも夢ならきっと大丈夫、謝れば許してくれる。
だって、お兄様は優しいから。
「アルク? 俺はアルフレッドっすよ? どちらかと言えばアルフっす」
これは悪い夢だ、お兄様はそんなに意地悪じゃない。
大らかで器のデカいお方だ。
私が泣きそうだったら一緒に居てくれる。
私を虐める人がいたら助けてくれる。
みんなから尊敬されて、みんなから愛されて。
エルフィアの事も好きだって言ってくれて。
夜が怖い時は一緒に寝てくれて。
一緒にお食事もしてくれて。
一緒にお勉強をしてくれて。
誰より強くて、誰よりカッコよくて、エルフィアが一番大好きな人は、こんな些細なことで許してくれないなんて事は絶対にない人だ。
「それで、何で俺の友達をーー」
「お兄様、ごめんなさい、エルフィアが悪い子でした、だからいつもみたいにーー」
遮るようにお兄様は私の言葉を遮る。
「あの、もしかして俺の知り合いっすか?」
「知り、合い?」
「前の俺は死んだから、その……アンタの事も覚えてないんすよ」
「死んだ? じゃあ、いま目の前にいるお兄様は誰なのですか?」
「アルフレッド・ドラグニカ、竜騎士っす」
アルフレッド・ドラグニカ? 冗談も程々にして欲しい、ドラグニカは受け継がれる物、アルフレッドは過去の英雄の名、ある物を適当に混ぜたような、そんな名前がある訳がない。
なるほど、エルフィアはきっとこの夢でお兄様を助けるのだ。
アルフレッドと名乗る、この何かを倒してお兄様を助けだすのだ、それで終わり。この夢は終わり。
きっと、次にみる夢ではお兄様は優しいお兄様に戻っている。
どれもこれも、全部、夢なんだ。
「では、貴方は私の事を覚えていないのですね」
「残念ながら、もしかしてさっきの口ぶりからすると家族の人っすか?」
「ええ、私の家族はお兄様ただ一人だけです、だから」
「だから?」
「お兄様を返せ!! 天結・電光招来」
この人を、アルフレッドを倒そう。
お兄様を取り返す為に。
心臓が早鐘のように激しく脈打ち、呼吸も浅くなって荒くなってしまう、でもそれは仕方ない事だ。
精悍な顔つき、凛々しい雰囲気、私を見つめる蒼い瞳。
間違えようがない、間違える筈がない、この人が、この人こそが私の最愛のお方、アルクェイド・ドラクレア、その人なのだから。
「さて、これはどういう事っすか?」
少しだけ乱れた呼吸を整えるとお兄様は蒼い双眼で敵意を含んだ視線を私に向ける。
「いや、これは……その」
すぐに剣を引き、事情を説明しようと口を開くが、まるで魚のように私は口をパクパクとさせるばかりだった。
緊張のあまり喋り方さえ忘れた私に呆れたのか、お兄様も宝剣を引き、不機嫌そうな表情を浮かべる。
ーーどうしよう、怒ってらっしゃる。
叱られた子供のように小さく縮こまっていると、お兄様は口を開いた。
「見ない顔っすね、アンタ誰っすか?」
ーー誰っすか? それは、一体だれに言って?
思考が、止まる。
「俺の大事な友達を傷つけてただて済むと思わない事っすね」
お兄様の言葉が、私には全く理解出来なかった。
いや、したく無かった。
「お、お兄様? 私です、エルフィアです」
きっと私が成長したせいで分からないのだろう、そうに決まっている。そうでなければお兄様が私を忘れるなんて事は……。
「? お兄様? よく分からないっすけど人違いじゃないんすか?」
ああ、ダメだ、視界が歪む。
立っていたくない。信じたくない。信じられない。吐き気がする。目眩がする。頭痛がする。胃痛がする。舌の根が乾く。気持ち悪い。辛い。泣きたい。悲しい。悔しい。
目の前の人は誰なんだろう? 何故お兄様と同じ顔をしているのだろう? 何故お兄様と同じ声でエルフィアの事をアンタと呼ぶのだろう? 何故お兄様の瞳でエルフィアを敵視するのだろう? 何故この人はお兄様と同じ仕草をするのだろう?
何故だろう? 何故だろう? 何故だろう?
何故? 何故? 何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故、
なんで?
「ごめんなさい、アルク兄様」
泣きそうな声が出る。
これはきっと夢だ、私が悪い子だったから罰が当たったんだ。
でも夢ならきっと大丈夫、謝れば許してくれる。
だって、お兄様は優しいから。
「アルク? 俺はアルフレッドっすよ? どちらかと言えばアルフっす」
これは悪い夢だ、お兄様はそんなに意地悪じゃない。
大らかで器のデカいお方だ。
私が泣きそうだったら一緒に居てくれる。
私を虐める人がいたら助けてくれる。
みんなから尊敬されて、みんなから愛されて。
エルフィアの事も好きだって言ってくれて。
夜が怖い時は一緒に寝てくれて。
一緒にお食事もしてくれて。
一緒にお勉強をしてくれて。
誰より強くて、誰よりカッコよくて、エルフィアが一番大好きな人は、こんな些細なことで許してくれないなんて事は絶対にない人だ。
「それで、何で俺の友達をーー」
「お兄様、ごめんなさい、エルフィアが悪い子でした、だからいつもみたいにーー」
遮るようにお兄様は私の言葉を遮る。
「あの、もしかして俺の知り合いっすか?」
「知り、合い?」
「前の俺は死んだから、その……アンタの事も覚えてないんすよ」
「死んだ? じゃあ、いま目の前にいるお兄様は誰なのですか?」
「アルフレッド・ドラグニカ、竜騎士っす」
アルフレッド・ドラグニカ? 冗談も程々にして欲しい、ドラグニカは受け継がれる物、アルフレッドは過去の英雄の名、ある物を適当に混ぜたような、そんな名前がある訳がない。
なるほど、エルフィアはきっとこの夢でお兄様を助けるのだ。
アルフレッドと名乗る、この何かを倒してお兄様を助けだすのだ、それで終わり。この夢は終わり。
きっと、次にみる夢ではお兄様は優しいお兄様に戻っている。
どれもこれも、全部、夢なんだ。
「では、貴方は私の事を覚えていないのですね」
「残念ながら、もしかしてさっきの口ぶりからすると家族の人っすか?」
「ええ、私の家族はお兄様ただ一人だけです、だから」
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