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第三章・石化魔眼の災厄蛇
第四十五話
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どうしても、力が足りない。
全力を尽くしても、全てを賭けても。
何一つ、誰一人として守ることが出来ない。
お兄様が家から立たれた日も、私に力が無いから一緒に連れて言って貰えなかった。
しかしそれは、幼いから、そんな理由で連れて行って貰えない私が悪かったのだ。
本当に片時も離れて欲しく無いなら私はもっと努力をするべきだった。
愛される努力を。
お兄様と共に戦える努力を。
お兄様の一番になる努力を。
非凡な私は努力が無くては誰かに愛される事すら出来ないのだ。
人を引き込むカリスマ性や秀でた才能が無い私には最初から持ち合わせている居場所など無かったのだ。
いえ、お兄様の傍らだけが私の唯一の居場所だった。
だからこそ私はお兄様を……。
「キャハ、キャハハはハハハハハ、どうしました? もう終わりですか?」
「う、うるさい、ですよ」
無数の蛇の頭部がエルフィアを襲う。
「気持ち悪い」
吐き捨てるようにそう口にすると、エルフィアは無数の蛇の頭蓋を剣で真っ二つに切り裂いた。
「あらあらあら、子供達を皆殺しとは酷いことをしますのねぇ」
「酷い? 王都を火の海に変えておいて良くもそんな事を平然と言えますね」
「キャハははは、しょうがないことですよ、自分を殺したあの人がココにいるのがイケナイのですよ」
「貴女を殺した人?」
「ええ、一度目は洞窟で、二度目は森の中で、そして自分は此処にいる、深淵に近い魂を持って」
「深淵、魔導の深奥?」
「おやおやおや、深みを知っているのですか? ならば気をつける事です、深淵を覗くものは深淵に覗かれている事を忘れてはいけない」
「命のやり取りをしている相手の心配とは、貴女はやはりナメている」
「命のやり取り?」
蛇の少女はクスクスと笑う。
「何がおかしいのですか」
「いやいやいや、おかしいに決まってるじゃないですか、だって自分はまだ全力ではないのですから」
蛇の少女が瞑っていた眼を開くと、視界に入っていたエルフィアの体が重くなる。
「これは魔眼、しかも停止の上位、石化ですか」
「おやおやおや、流石と言わざる得ないですね、まさか抵抗スキルをお持ちとは、しかし練度が足りてないですね、石化を制限に抑えるだけとは」
「最近壊されてしまったばかりなのですよ、私の友人は優秀な魔法使いですから」
エルフィアは剣を持ち直し構えを取る。
「力の差は歴然、援軍は来ず、人はそれを蛮勇とよぶのでは?」
「知った事ではありません、私には何もない、生きていても死んでいても世界に変わりはありません、貴女に私が敗れると言うことは、どの道この場にいる全員が死ぬ事になる、ならば人事を尽くすのが私の役目ですよ」
「貴女はやはり面白いですねぇ」
蛇の少女は口元を釣り上げ長い舌をチロチロと遊ばせる。
「別に死んでもいいなら自分の命だけを守ればいい、それをしないということは、貴女は他に信念があるのでは? どうも貴女からは自分に良く似た香りを感じます、どうでしょうか? 貴女、自分の物になりませんか?」
「断る!」
蛇の少女の首を目掛けて、エルフィアは剣を振るう。
しかし、エルフィアの剣は少女の髪から伸びる蛇に止められる。
「いやいやいや、自分は冗談を言っている訳ではないのですよ、自分は貴女に興味がある、この状況で貴女を瞬殺しないのは単純にそういう事なんですよ」
より深く絡みつき、蛇の少女はエルフィアに甘い毒を流し込む。
「うっ」
「さあさあさあ、これで少しは素直になれますね」
ゆっくりと血液から回る毒のせいかエルフィアの思考はボンヤリとしていく。
ーーこのままでは不味い。
残った力を全て吐き出すように少女は剣に力を込めまとわりつく蛇を全て切り倒す。
「はあ、はあ、はあ」
「大体わかりました、貴女は孤独なのですね」
「うる、さい」
「まあまあまあ、まだそんな強がりを言えるのですか、自分は驚きです」
よろよろと立ち上がり、エルフィアは剣を構える。
しかし、毒のせいか自分の意思とは関係なく言葉が溢れる。
「私が、私がやらなくちゃいけないのですよ、死んでも、殺されても、私の代わりなんていくらでもいる、だから今だけが、私が必要とされている時間なのですよ」
そんな心の吐露に、蛇の少女が舌を伸ばしニヤリと笑う。
「自分は貴女が必要ですよ、エルフィア」
「?」
「自分も孤独、貴女も孤独、なら一緒に生きませんか? 自分なら永遠に貴女と居られる、自分は貴女を絶対に手放したりはしない、愛して毒して堕としてあげられます」
「あい?」
「だから如何ですか? 自分の物になりませんか?」
ーー私は…………。
全力を尽くしても、全てを賭けても。
何一つ、誰一人として守ることが出来ない。
お兄様が家から立たれた日も、私に力が無いから一緒に連れて言って貰えなかった。
しかしそれは、幼いから、そんな理由で連れて行って貰えない私が悪かったのだ。
本当に片時も離れて欲しく無いなら私はもっと努力をするべきだった。
愛される努力を。
お兄様と共に戦える努力を。
お兄様の一番になる努力を。
非凡な私は努力が無くては誰かに愛される事すら出来ないのだ。
人を引き込むカリスマ性や秀でた才能が無い私には最初から持ち合わせている居場所など無かったのだ。
いえ、お兄様の傍らだけが私の唯一の居場所だった。
だからこそ私はお兄様を……。
「キャハ、キャハハはハハハハハ、どうしました? もう終わりですか?」
「う、うるさい、ですよ」
無数の蛇の頭部がエルフィアを襲う。
「気持ち悪い」
吐き捨てるようにそう口にすると、エルフィアは無数の蛇の頭蓋を剣で真っ二つに切り裂いた。
「あらあらあら、子供達を皆殺しとは酷いことをしますのねぇ」
「酷い? 王都を火の海に変えておいて良くもそんな事を平然と言えますね」
「キャハははは、しょうがないことですよ、自分を殺したあの人がココにいるのがイケナイのですよ」
「貴女を殺した人?」
「ええ、一度目は洞窟で、二度目は森の中で、そして自分は此処にいる、深淵に近い魂を持って」
「深淵、魔導の深奥?」
「おやおやおや、深みを知っているのですか? ならば気をつける事です、深淵を覗くものは深淵に覗かれている事を忘れてはいけない」
「命のやり取りをしている相手の心配とは、貴女はやはりナメている」
「命のやり取り?」
蛇の少女はクスクスと笑う。
「何がおかしいのですか」
「いやいやいや、おかしいに決まってるじゃないですか、だって自分はまだ全力ではないのですから」
蛇の少女が瞑っていた眼を開くと、視界に入っていたエルフィアの体が重くなる。
「これは魔眼、しかも停止の上位、石化ですか」
「おやおやおや、流石と言わざる得ないですね、まさか抵抗スキルをお持ちとは、しかし練度が足りてないですね、石化を制限に抑えるだけとは」
「最近壊されてしまったばかりなのですよ、私の友人は優秀な魔法使いですから」
エルフィアは剣を持ち直し構えを取る。
「力の差は歴然、援軍は来ず、人はそれを蛮勇とよぶのでは?」
「知った事ではありません、私には何もない、生きていても死んでいても世界に変わりはありません、貴女に私が敗れると言うことは、どの道この場にいる全員が死ぬ事になる、ならば人事を尽くすのが私の役目ですよ」
「貴女はやはり面白いですねぇ」
蛇の少女は口元を釣り上げ長い舌をチロチロと遊ばせる。
「別に死んでもいいなら自分の命だけを守ればいい、それをしないということは、貴女は他に信念があるのでは? どうも貴女からは自分に良く似た香りを感じます、どうでしょうか? 貴女、自分の物になりませんか?」
「断る!」
蛇の少女の首を目掛けて、エルフィアは剣を振るう。
しかし、エルフィアの剣は少女の髪から伸びる蛇に止められる。
「いやいやいや、自分は冗談を言っている訳ではないのですよ、自分は貴女に興味がある、この状況で貴女を瞬殺しないのは単純にそういう事なんですよ」
より深く絡みつき、蛇の少女はエルフィアに甘い毒を流し込む。
「うっ」
「さあさあさあ、これで少しは素直になれますね」
ゆっくりと血液から回る毒のせいかエルフィアの思考はボンヤリとしていく。
ーーこのままでは不味い。
残った力を全て吐き出すように少女は剣に力を込めまとわりつく蛇を全て切り倒す。
「はあ、はあ、はあ」
「大体わかりました、貴女は孤独なのですね」
「うる、さい」
「まあまあまあ、まだそんな強がりを言えるのですか、自分は驚きです」
よろよろと立ち上がり、エルフィアは剣を構える。
しかし、毒のせいか自分の意思とは関係なく言葉が溢れる。
「私が、私がやらなくちゃいけないのですよ、死んでも、殺されても、私の代わりなんていくらでもいる、だから今だけが、私が必要とされている時間なのですよ」
そんな心の吐露に、蛇の少女が舌を伸ばしニヤリと笑う。
「自分は貴女が必要ですよ、エルフィア」
「?」
「自分も孤独、貴女も孤独、なら一緒に生きませんか? 自分なら永遠に貴女と居られる、自分は貴女を絶対に手放したりはしない、愛して毒して堕としてあげられます」
「あい?」
「だから如何ですか? 自分の物になりませんか?」
ーー私は…………。
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