憧れの先輩にお持ち帰りされて両想いになるまで快楽責めされる話

辻河

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憧れの先輩にお持ち帰りされて両想いになるまで快楽責めされる話

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「それじゃあ、改めて……乾杯!」
「かんぱーい!」

 もう何度目かも分からない掛け声とともに、グラスをぶつけ合う音が響く。追い出しコンパとして始まった飲み会は、既に開始から二時間ほど経過していた。皆が酒に酔い、もはや目的を失ってただの宴会と化している。

「柊木先輩」

 羽目を外して騒ぐ仲間達の合間を縫って、端の席でゆっくりとグラスを傾けている人物の隣に座る。彼はこちら姿を目にすると、穏やかに微笑んだ。

「ああ、佐倉」

 挨拶代わりに差し出されたグラスに、自分のグラスを軽く合わせる。軽やかな音が喧噪の中に消えていく中、俺はちらりと先輩を見つめた。
 柊木修一。一つ上の先輩であり、このサークルの副代表だ。清潔感のある容姿に、涼しげな印象を与える目元。物腰も柔らかく誰に対しても優しいという、まさに非の打ち所がない人だ。そんな彼のことを慕う人は男女問わず多く、かく言う俺もその一人だった。

「追い出される側なのに、こんな隅に座ってていいんですか」
「いいんだよ。送別の言葉なら十分もらったし」

 そう言ってグラスの中身を飲み干した彼につられて、手に持った酒をあおる。一気に口に含んだアルコールが喉の奥へ流れ込んでいく感覚に、少しだけ眉を寄せた。

「あはは、良い飲みっぷりだね」
「揶揄わないでくださいよ。それより、まだ何か飲みますか?俺が頼みますよ」
「うん、お願い。佐倉も一緒に飲もうよ」

 首を傾げて笑う仕草に、知らず知らずのうちに胸が締め付けられるような感覚を覚える。いつもと同じ、穏やかな表情。けれどどこか寂しさを感じさせる様子に、言いようのない感情がひしひしと迫ってくる。やけに感傷的な自分を叱咤するように小さく咳払いをして、注文のために立ち上がった。

 ほどなくして頼んでいた品が運ばれ、再び二人でグラスを合わせる。それほど酒に強い方ではないが、今日は飲まずにはいられなかった。ふわふわとした心地の中、目の前にいる先輩を見やる。その顔は相変わらず白く透き通っていて、とても酔っているようには見えない。対して俺はと言うと、自分で思っていたよりもずっと早く酔いが回っていたようで、視界の端の方がぼんやりと滲んでいた。

「佐倉がうちのサークルに来たのがついこの間のことみたいなのに、もう俺が卒業するなんて信じられないよね」

 懐かしむように話す先輩の視線の先には、上級生も下級生も入り乱れて楽しそうに酒を酌み交わしている光景があった。自分が初めてあの輪に入った時のことを思い出しながら、静かに相槌を打つ。このサークルに入って間もない頃、右も左も分からなかった俺に声をかけてくれたのが柊木先輩だった。緊張で石のように固まっていた当時の自分を思い出すだけで恥ずかしくなるくらいだが、先輩のお陰で今の自分があると言っても過言ではない。だからこそ、卒業によって接点が無くなってしまうことが辛いのだけれど。

「佐倉、聞こえてる?」
「え、あ……すみません」

 昔を思い返しているうちに、いつの間にか我を忘れてしまっていたらしい。慌てて返事をしたせいで声が裏返りそうになったところをなんとか抑え込み、誤魔化すようにグラスに残った酒を勢いよく流し込んだ。その様子を眺めていた先輩がくすくすと笑みを零した。

「もしかして佐倉も、俺が居なくなると寂しいって思ってくれてる?そうだったら嬉しいな」
「それ、は……まあ……俺だって寂しいですよ」

 図星を突かれてしまい、気の利いた言葉を返すことも出来ず素直な気持ちを口に出す。一度言葉にしてしまうと、次々と思いが溢れてきた。今まで感じていたさまざまな感情が次々と浮かんでは消えていき、上手く整理することができないまま口を開く。

「先輩は本当に凄い人で、憧れですから。……最初に会った時、こんな人が居るんだなって思ったんです。すごく綺麗で、面倒見も良くて、とても心強い存在で。大学に入ったばかりの俺に色々と教えてくれましたし……」

 感情の赴くままに喋っていると、不意に大きな手が頭に乗せられた。そのまま優しく髪を撫でられ、自然と肩に入っていた力が抜けていく。

「ありがとう、佐倉」

 アルコールのせいだろうか、嬉しそうに微笑んだ先輩を見て頬がじわじわと熱を帯びていく。気恥ずかしくなって視線を逸らすと、頭に乗っていた手がそのまま首筋へと下りていった。辺りはまだ騒がしく、こちらの様子に気付いた人はいないようだ。普段と変わらない涼し気な佇まいの中で、先輩の眼だけが妙に熱を持ってこちらを射抜くように見つめている。

「じゃあ……もうすぐ可愛い後輩と別れて寂しくなる先輩のお願い、聞いてくれる?」

 囁くように紡がれた言葉の意味を十分に理解できないまま、こくりと小さく首を縦に振る。たとえどんな頼み事であったとしても、尊敬する先輩の頼みとなれば断る理由など無い。半ば反射的に出てしまった返事に、先輩は満足気な表情を浮かべた。
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