11 / 228
本編
第1話 真崎宵は相談する。
しおりを挟む高校に入学してから3ヶ月が経った。
「クラスに馴染めていない?」
「うん、避けられてる気がするんだよね」
5月の連休明けまではクラスの男子と普通に会話ができていた。けれど5月の中旬辺りから少しずつ避けられ始めて最近じゃ挨拶くらいでしか話をしなくなったんだ。
うちの学校は10年前まで女子校だった名残りで男子が各クラスに5人くらいしかいない。男子から避けられる現状、クラスの女子と積極的に仲良くしようとしない僕はクラスから完全に孤立していると言っていい。
「真宵は自分からじゃ女子に話しかけられないヘタレだもんね。これを機に少しはコミュ力磨いたら?」
「簡単にできたら相談しないよ……」
相談相手の夏間藍香は幼馴染だ。
同じ病院で同じ日、同じ時間帯に生まれた僕らのことを僕らの両親からは『両親の違う双子みたいなものだよね』と頻繁にネタにされている。
実際、双子の姉と弟(藍香の方が生まれるのが2分ほど早かったらしい)のような関係だ。僕の実の妹である暁も藍香のことをお姉ちゃんと呼んで実の兄以上に慕っている。
「どうすればいいかなぁ……」
「1番簡単なのは共通の話題を作ることね」
「共通の話題……?」
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
"Continued in Legend"は来週末からサービスが開始されるVRMMOのタイトルだ。まだサービスが始まっていないのにバンバンCMを流している。
「まだ発売されてもないゲームがクラスメイトとの共通の話題になるの?」
「既に話題になってるわよ」
言われてみれば"Continued in Legend"で動画配信するから観て欲しいとか言っていたクラスメイトがいたはずだ。
「VRMMOかぁ……」
「いいじゃない、また一緒にゲームしましょうよ」
うちの学校はバイト禁止だからね。
遊ぶ友達も……藍香しかいないし。
「分かったよ。帰りにお店に寄るね」
藍香の両親は"見和即和"というゲーム専門店を経営している。僕も小さい頃から何度も行っているので既に常連さんとも顔見知りだ。
店名の由来は麻雀用語らしいけど意味は知らない。
「───────」
「なんか言った?」
「いいえ、なんでもないわよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇
今日は"Continued in Legend"のサービス開始日だ。
本当に久しぶりにVRゲーム専用のギアを装着する。
「ログイン」
視界が切り替わる。
懐かしの僕のホームだ。
『プレイするゲームを選択してください』
表示されているのはダウンロード済みのゲームだ。
その1番下にお目当てのゲームはあった。
『"Continued in Legend"をスタートします』
また視界が切り替わる。
気がつくと空に浮かんでいた。
「綺麗だ……」
眼下には海や山、遠くには街も視える。
しばらく眺めていると目の前にパネルが現れた。
『利用規約に同意しますか』
音声の案内もある。
どうやら普通に応答するだけでもいいらしい。
「えっと……」
利用規約の中にはチートや改造、解析といった行為は100万米ドル以上の罰金を科すなど過激な文章が含まれていた。
またゲーム中での殺人に代表される犯罪行為を行うことは不可能ではないが、犯罪行為に起因するゲーム内での処罰に対して如何なることがあっても運営は責任を負わないと書いてある。
PK(プレイヤーキル/他のプレイヤーを殺傷する行為)やNPK(ノンプレイヤーキル/ゲーム内の登場人物を殺傷する行為)そのものは可能だけれど、運営としては推奨しているわけではないということかな。
「同意します」
『プレイヤーネームを入力してください。既に登録されている名前はご利用できません』
名前に関する注意事項がパネルに書かれている。
・文字数は1~8文字
・使用できるのは平仮名と片仮名、漢字と英数字のみ
・名前が重複した場合はナンバリングで区別される
・公序良識に反する名前は使用できない
昔、藍香と動画配信で遊んでいた頃の名前はやめておくことにした。配信者に戻るなんてことはないだろうし、そもそも覚えてる人がいたら面倒くさい。
「マ、ヨ、イ、っと……」
『登録されました。次にアバターの作成を行います。VRギアに登録されているアバターデータを利用しますか』
ゲーム内のアバターは以前作成したアバターを流用できるようだ。わざわざアバターを作るのも面倒なので保存されているアバターの中から特に気に入っているアバターを選択する。
選択したのは現実の姿をスキャニングしたアバターを元に髪の色と長さを調整しただけのアバターだ。身体の大きさなどは現実の姿をスキャニングしたアバターの方が操作性しやすい……と僕は思っている。
「これを利用します」
『……適用しました。これよりプレイヤーキャラクターの作成を行います。貴方の持つ素質を最大2種類まで選択してください』
選択した素質によってステータスや選択できるスキルが変化するようだ。
選択できる6種類の素質の名称から予測するに他のゲームでいうところの職業のようなものだろう。それならば自身の望むプレイスタイルに沿う組み合わせを選ぶのが賢い選択のはずだ。まだ望むプレイスタイルが定まっていないのなら応用の効く組み合わせを探すのがいいだろう。
「狩人と魔術士で」
『次に獲得した素質の数までスキルを選択してください』
これだけ美しい世界なんだ。
色々なところへ行ってみたい。
そのためには最低限の戦闘能力と生存率を上げるスキルが欲しい。
「《魔力弾》と《探索》の2つを習得します」
遠距離攻撃と探索用のスキルを選択した。
僕は近接戦闘があまり好きではない。
得意か不得意かなら得意だと答えるけれど、遠距離から一方的に攻撃する方が好きだ。
『登録しました。初期クレジットを配布します。最後に作成されたキャラクターのプロフィールを確認してください』
◼︎パーソナル
名前:マヨイ
性別:男
位階:1
属性:狩人/魔術士
◼︎ステータス
体力:40
魔力:52
筋力:6
耐久:6
器用:7
敏捷:8
知力:7
精神:8
◼︎スキル
①探索
②魔力弾
───────────────
初めまして。この度は拙作『VRMMOで神様の使徒、始めました。』の第一話をお読みいただきありがとうございます。
私は一 八重と言います。
本作品の更新日は基本に週4日(日火木土)です。
ストックに余裕のある場合は祝日も更新しています。
今後ともよろしくお願いします。
61
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる