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本編

第15話 マヨイは装備の作成を依頼する。

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「はい。組合員に対する福利厚生の一環として、この建物の2階から5階にある部屋の一室をお貸ししていますよ」

 僕は組合で[組合依頼:森猪の討伐]の達成報告と報酬の受け取りを終わらせた。ついでに暁から聞いた部屋を借りられるという話について聞くと、受付のおばさんは丁寧に説明してくれた。
 ただ暁が言っていた初回無料という話は最もグレードの低い部屋に限った話だった。受付のおばさんによるとグレードの高い部屋は基本的に貴族などとの取引をする場合に利用することになるらしい。僕は1番グレードの低い部屋を借りて暁とクレアちゃんと一緒に向かうことにした。

「ふぅ……クレアちゃん、スキルの派生について詳しく教えて貰えないかな。もちろん対価は払うからよ。エリアボスのドロップでもいい?」

 まだプレイヤーでエリアボスのドロップを持っているのは僕だけだ。エリアボスが安定して狩られるようになるまでは交渉材料になるだろう。僕は森大猪の魔石を取り出して2人に見せた。

「こ、これ、貰っていいんですか!」

「え、兄さんエリアボス倒したの!?」

「うん、ついさっきだけどね」

 それから僕は興奮した2人を鎮めるためアルテラ大森林でエリアボスを半ば擦りつけられたこと、やや(魔力弾の威力に)問題はあったものの無事に倒すことができたことを説明した。

「えっと、スキルの派生はスキルを使っているうちに起こる現象みたいです。わたしは加工の心得がスキルに武器加工の心得というスキルに派生しました。あ、でも加工の心得がなくなったわけじゃなくて、枝分かれみたいになってます」

 そう言ってクレアちゃんはステータスを見せてくれた。


◼︎パーソナル
名前:クレア
性別:女
位階:9
資質:狩人/加工
覚醒:なし
称号:弓神のお気に入り

◼︎ステータス
体力:138
魔力:138
筋力:23
耐久:14
器用:41
敏捷:32
知力:14
精神:14

◼︎スキル
①テイム
②加工の心得
 ┣武器加工の心得
 ┗装飾加工の心得
③弓術

◼︎装備
武器:初めて作った弓
胴装:街娘の服[服12/黒&黄]
背中:無限矢筒
脚装:街娘の服[脚7/黒&黄]
靴装:狩人の靴
装飾:初めて作ったメダル


「武器加工の心得は武器、装飾加工の心得は装飾品を作る時に補正っていうのが入るスキルです。心得系のスキルはシステムアシストっていうのを使わずに作ると派生するって教わりました」

「へぇ……なら私はシステムアシストを使わず農作業すれば対応したスキルが派生するのかな」

「アカトキ、農作業するの?知識あるの?」

「やらないし、ないけど」

 なら何故、生産の素質を選んだんだ……
 いや、ステータスの補正値目的なのは分かるけど少しもったいないように思える。

「それと気になったんだけど"弓神のお気に入り"って称号についても聞いていい?」

「はい。この弓を作った後に矢を作ってたんですけど上手くいかなくて……困ったたら変な声がしたんです。そうしたらこれを貰いました」


【弓神のお気に入り】
 これでいっぱい練習しなさい。
 神器:無限矢筒の獲得

名称:無限矢筒
分類:神器 背中装備
部位:背中
効果:魔力を消費して矢を生み出せる。
   消費する魔力量によって矢の威力が変動する。
制限:弓神と名のついた称号


「つ、強いね……」

 弓と言えば矢の残り本数によって攻撃回数が制限されてしまう武器だ。矢を作成するにしても購入するにしても倒す相手によっては収支面で赤字になってこともあるだろう。それを考慮せず魔力の消費だけで矢をれるのは大きいはずだ。

「はい、おかげで矢を削り出す必要が無くなりました」

 どうやらクレアちゃんは薪を買って矢を作ろうとしたらしい。なんでそこまで弓にこだわるのか疑問を思っていると、

「クレアはアーチェリーってスポーツをしてるの」

「へえ……」

 アーチェリーは機械で出来た弓を使う弓道みたいなもので夏期オリンピックの種目にもなっているスポーツだったはずだ。

「というか何でアカトキはスキルの派生について知らないのさ。昨日も一緒にやってたんじゃないの?」

「え、えっと、素材集めは手伝って貰ったんですけど、さすがに作業にまで付き合わせちゃうのはどうかと思ってアカちゃんがログアウトした後に作業したんです」

 どうやら暁の生産スキルは木材を伐採するのに適していたようで、それなりの量の木材を手に入れることができたらしい。ただ暁がログアウトしてから作業したため、暁は黒いライオンとは会っていない、ということのようだ。

「そ、それで、たぶん防具を作れば防具作成の心得みたいなものが貰えるんじゃないかなぁって思ってて、お兄さんの防具も作りたいんですけど……」

「そういうことなら、これも使ってよ。その代わりお代は少し安くしてくれると嬉しいかな」

 僕は森大猪の大牙と森大猪の背苔を取り出してクレアちゃんに渡した。背苔は名前とは裏腹に質感は苔というより岩に近いので、きっと防具の素材になるはずだ。まぁ、無駄になってもまたエリアボスを倒してくればいいだけなので別に困らない。

「武器は槍ですか?」

「あれ、槍が得意だなんて言った?」

「い、いえ……な、なんとなくです!」

 何となくて相手の得意な武器が分かるって凄いな。

「できれば短剣にできないかな?」

「短剣ですか?」

「間合いの短い武器は使いたくないとか言ってなかった?」

 もう何年も前のことなのに暁もよく覚えてるな。
 もちろん、武器を使うなら間合いの広いものを選ぶべきだというのが僕の持論は変わっていないけれど、今の僕に必要なのは攻撃するための武器ではなく防御に優れた武器なので、取り回しのいい短剣の方が使いやすいだろう。
 それに間合いで言えば槍より魔力弾の方が数倍はあるからね。

「まぁ……僕にも事情があるんだ。それでお代だけど」

「そ、その……よかったら、お代の代わり森大猪の背苔で籠手を作らせてください。これだけ大きければ1つで両腕の籠手くらいは作れると思うんです」

 籠手か。ないよりはあった方がいいだろうし、クレアちゃんからすればスキルを派生させるチャンスだ。僕のメリットの方が大きいように思えるけど、クレアちゃんがそれでいいというのなら問題ないだろう。

「もちろんOKだよ。僕の方が貰いすぎな気もするけど大丈夫?」

「はい、大丈夫です!任せてください!」


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お読みいただきありがとうございます。

アーチェリーについて私は詳しくないので細かい描写は無理です(おい
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