VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第19話 その頃の運営サイド1

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 マヨイがアルテラの北の草原──正式名称はアルテラ北部平原──の一部を破壊した直後、その様子をリアルタイムで監視していた者たちがいた。運営サイドのGMたちである。

「さて、私そろそろ休憩時間だから……」

「局長!?」

「佐藤君、あとよろしく」

「局長ォォ!?」

 厄介事を押し付けられることに定評のある佐藤さとう志津子しずこ(25)の悲痛な叫びも虚しく局長は遅めの昼ご飯に出掛けてしまった。

「はぁぁぁ……」

「佐藤さん!北部平原で死亡したプレイヤーから問い合わせが殺到してます!」

「バグやツールの使用は確認されていないで通して!」

 事実としてアルテラ北部平原の一部が破壊されたのは1人のプレイヤーの力技によるものだ。

「でも彼のステータスだとフィールドを破壊するほどのダメージは出せないはずよね……」

 フィールドの耐久値は木々や建物とは違い、フィールドの耐久値は非常に高く設定されており、現在のマヨイのステータスでも破壊するのは不可能なはずであった。
 佐藤は問い合わせへの対応を他のスタッフに任せ、マヨイの行動をエミュレーター上に再現する。すぐにマヨイがフィールドを破壊できたカラクリは判明した。

「あぁ……なるほど……」

「どうしました?」

「いえ、何で彼のステータスでフィールドを破壊出来たのか分かっただけよ。これを見て、爆発の余波が重複している部分のダメージ算出が足し算じゃなくて掛け算になってるのよ。まぁ……元からある仕様だけど、これ個人で条件を満たすこと想定されてたのかしら」

 この仕様は当初パーティでの使用を想定したもので、おそらく1人のプレイヤーが再現することは想定されていないはずだ。

「同系統の攻撃を同じ箇所に同時に命中させた場合に発生するやつですよね?」

「そうよ、この仕様は全ての攻撃系スキルに適用されるわ。上に掛け合って重複した場合の算出ダメージの上限とかフィールドの耐久値とか色々と調整しなきゃいけないわね」

 この場合の『上』というのは現在食堂で唐揚げ定食を食べている局長と同等以上の権限を持った人たちのことだ。

「佐藤さん、問い合わせ対応用のAIからヘルプです」

「今度は何!?」

「あのマヨイってプレイヤーから"他のプレイヤーを殺したはずなのに犯罪者プレイヤーになってないのは何故か"という質問が……」

「なんでよ、別に問い合わせなくてもいいじゃない!ラッキーだとでも思ってスルーしなさいよ!あ゛ぁ……もう私が対応するわ。回線を回して頂戴」

 マヨイが犯罪者プレイヤーになっていない原因は仕様を理解している佐藤からすれば明白である。今回、マヨイの攻撃の対象になったのはモンスターとモンスター周辺の地形だった。例え他のプレイヤーを巻き込んでしまっても殺人判定とはならない。改善すべきという意見も多いが、今はそういった仕様になっている。

「対応を代わりました。運営のサトウです。お問い合わせの件につきましては仕様となっております」

『どのような仕様が原因なのかは教えていただけませんか』

「……申し訳ありません。個人的な仕様のお問い合わせには対応致しかねます」

『ありがとうございました』

「ふぅ……」

 佐藤は一息つくために紅茶に口をつける。
 その間にも問い合わせが殺到しているわけだが、その大半は問い合わせ対応用のAIが処理してくれる。
 ちなみに問い合わせ用のAIには開発に携わった人の名前が付けられているので稀に勘違いを起こす者がいるが、実際に社長が来て問い合わせに対応とかする訳がない。佐藤は紛らわしいから改名すべきだと思っているが口には出さない。

「佐藤さん!」

「今度は何!?」

「ひっ……そ、その、ゲーム内の掲示板がめちゃくちゃ荒れてるんですけど、どう対処すればいいですかね?犯人探しみたいなのしてる人もいるんですけど」

「そんなの放置しときなさいよ。規約に触れるよつな迷惑行為したやつは容赦無くアカウント削除してやればいいし、そうでなければ無害でしょ」

「え、えぇ……いいんですか?」

 実は掲示板に書き込んだプレイヤーの中には覚醒を獲得したプレイヤーの仕業だという正解に辿り着いた者もいた。しかし「いくら何でもプレイヤーには無理だろ」という意見も多く、現在は人型の特殊なモンスターではないかという意見が優勢になっている。実際に被害に遭っていない大多数のプレイヤーたちからすればプチイベントのような扱いだ。

「ただ昼頃にも問い合わせがあったけど、プレイヤーの個人情報の取り扱いだけは気をつけてちょうだい。晒した奴は警告と8時間のログイン停止処分で統一、再犯した奴は殺していいからアカウント停止ね」

 その後、局長が戻るまで1時間近く陣頭指揮をった佐藤は室長と入れ替わるように遅めの昼食に出掛けた。

「局長、また複数の神の使徒を獲得したプレイヤーが現れました!」

「佐藤君!」

「佐藤さんならお昼休み中です。あ、そろそろ私も時間なので対応お願いします」

「えぇ!?」

 まだゲーム開始から2日目。
 "CiL開発局"の苦難は続く。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
もちろん、リアルタイムで問い合わせに電話対応してくれるゲームというのはフィクションの存在です。そこら辺のリアリティに関しましてはご容赦ください。
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