VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第29話 マヨイは情報を交換する。

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「ね、これなら兄さんが手を出してパワーレベリングになっちゃっても問題はないでしょ?」

「いや、なんでアカトキもドヤ顔なの?」

「クレアは私が育てた!」

 ようするにクレアちゃんのゲームの腕が僕の想像以上に高いのは暁が色々と教えているからだと言いたいのだろう。ゲームの腕前とゲームを教える腕前は別という良い例なのかもしれない。

「え、アカちゃん、わたしのママだったの?」

「そんなわけないでしょ!?」

「僕も次から手を出すよ。クレアちゃん、よろしくね」

「ふ、不束者ですがよろしくお願いしましゅ!」

「コンビニ行った時に藍香お姉ちゃんに合流しようって言っておけば良かった……」

 経験値の入り具合は分からないが、暁とクレアちゃんに経験値が入らないようなら手を引けばいいだろう。

「クレア、あの地面が剥き出しになってる辺りだよ。いきなり兄さんが魔力弾を雨のように降らせてエリアボスを倒しちゃったの」

「モンスターは少ないのにプレイヤーの人が多いですね」

 あの調べ物をしているのか僕の魔力弾で出来たクレーター周辺の地面を観察している人が何人か見受けられた。何人かは間違いなくプレイヤーだろう。もしかしたら全員プレイヤーなのかもしれないが。

「こんにちは、ちょっといいかな?」

「……ダメです。それじゃ」

 通り過ぎようとしていた僕らを呼び止めようとしたのはシブンギという名前の男性プレイヤーだった。
 暁が即座に断ったのは彼が配信もしくは録画中なのが分かったからだろう。先ほどのミライという配信者の行動のせいか対応が塩対応だ。

「……っ、そう言わず話だけでも。ここのクレーターなんだけど──え」

 手の動きからして暁が彼を通報したようだ。
 了解も得ずに配信に巻き込むのはマナー違反行為だし、嫌だと意思表示をしている相手に何らかの行為──今回の場合は話を聞かせること──を強要するのはハラスメント行為だと判断されて通報されても仕方ないだろう。
 しかし、さすがに暁のこの反応は過敏過ぎるな。

「相手が嫌だと意思表示しているのに話を続けようとしたんだから通報されて当たり前でしょ。それともだからって一般のプレイヤーに何してもいいとでも思ってるわけ?」

「おい、さすがに言い過ぎだぞ」

「い、いや、私こそすまない。そんなつもりはなかったんだ」

 そう言われて彼は録画を止めた。
 配信ではなく録画だったらしい。

「時間無駄にしちゃった。早く行こ?」

「うん、お兄さんも」

「あー、すぐに追いつくから2人で先に行っててくれないか」

「………あぁ、うん。事情はクレアにも話していい?」

「もちろん」

 このシブンギというプレイヤー、たぶん僕が配信者として活動していた頃の知り合いだ。僕らの方へ近づいてくるプレイヤーの名前からの推測だけど、ここまで見覚えのあるプレイヤー名が並べば偶然の一致と済ませるのは難しい。暁もそれに気が付いていたのかな、彼らと面識はないと思ったけど……

「リーダー、どうした?トラブルか?」

「あぁ、レオか。実は撮影しながら交渉を持ちかけたせいで"プロゲーマーなら何をしてもいいと思ってるのか!"って怒られてしまったんだよ」

「だから誤解を招くから止めろって言っただろ……」

「リーダーが悪い」

「反省してるからオリオンもそう睨まないでくれ」

 シブンギにレオ、そしてオリオンとくれば間違いないだろう。気のせいでなければアバターにも見覚えがある。たぶん僕と同じように作成済みのアバターを流用したんだと思う。

「失礼ですがプロゲーマーチーム"流星群"の方ですか?」

「俺たちみたいなマイナーなチームをよく知ってんな。そうだ、俺たちが"流星群"だ」

「ショウも久しぶり。元気だった?」

「「!?」」

 オリオンさんは僕がアイ&ショウのショウだとすぐに気がついたらしい。このアバターを使って配信したことってあったかな?

「久しぶり。あ、プレイヤー名はマヨイだからよろしく」

「分かった。マヨイ、よろしく」

「それとシブンギさん、クレーターを作ったの僕なんで調べても何もでないと思いますよ」

 シブンギさんたちがクレーターを調べていることは掲示板を見たので知っている。知り合いに無駄足を踏ませるのは後味が悪いし、彼らはある程度なら無償で情報を渡してもいいくらいには信用している。

「……どうやったの?」

「そこは秘密ってことで。でも劣化再現は可能だと思いますよ」

「ありがとう。フレンド登録する?」

「それなんですけど、初めてのフレンド登録は何かあるって聞いたんです。何があるのか知ってたら教えて貰えませんか?実害がなければフレンド登録はむしろ歓迎するんですけど」

「……アイは?」

「アイとは明日合流する予定なんです」

「……なら次会った時お願い」

「質問に答えられてねぇぞオリオン。初めて登録したフレンドだけフレンド欄の名前の横にマークが付くんだよ。特に何かメリットがあるかは解ってねぇけどな」

「なるほど、ありがとうございます。お礼と言ってはなんですが北の草原のエリアボスらしきモンスターのドロップ情報とかいります?」

「い、いや、やめておこう。こちらとしては喉から手が出るほど欲しい情報だけど対価が払えないからね」

 お礼だと言ってるのに対価を用意しようとする辺り、シブンギさんも義理堅いというかビジネスライクだな。情報の軽重だけを考えれば妥当な判断ではある。

「対価ならあるじゃねぇか。ショウ、ゴブリンとは遭遇したか?」

 交渉というか情報交換はオリオンさんではなくレオさんが対応するようだ。シブンギさんは腹黒なとこがあって交渉しにくいからありがたい。

「遠目には見ましたけど戦闘はしてないです」

 クレアちゃんが一撃で倒しちゃいました。
 ゴブリンの話というと援軍に関してだろうか。援軍を呼ぶということだけなら僕も知っているので対価としては足りないと思うんだけど。

「そのゴブリンは一定時間事に援軍を呼ぶんだけどよ、それの中にホブゴブリンやゴブリンソルジャーがいるんだ。俺たちはレベリングのために最初に遭遇したゴブリンを倒さず援軍だけ倒し続けてたんだが、1時間くらいしたら最初に遭遇したゴブリンがゴブリンアヴェンジャーってのに進化してな。そいつに負けた。このクレーターを作るくらい火力があるならワンチャンあるんじゃねぇか?」

 アヴェンジャーってどういう意味だっけ?
 シブンギさんたちも僕と同じように位階と資質を隠しているから分かりにくいけど、それでも確かゴブリンは狼よりも討伐難易度は高かったはずだ。その亜種などを相手にレベリングをしていたという事は位階は20近いだろう。そんなプロゲーマーのパーティを全滅させるだけの強敵に関する情報ありがたい。

「火力はあっても耐久面が不安ですね。でもありがとうございます。それで、ここのエリアボスの名前は───」

 エリアボスの名前とドロップ品、そして称号の情報を伝えるとシブンギさんが「西の森の猪は1時間で再出現したらしいが、こちらは目撃者すらいない。何か条件が──」と思索にふけり始めてしまった。

「では僕はパーティメンバーを追いかけるので。また配信を再開させるかもしれないので、その時はよろしくお願いします」

「…………うん、また遊ぼ」

「またな。アイにもよろしく言っといてくれ」

 こうして短時間ではあったけど有意義な情報を手に入れた僕は暁たちを追いかけて北へ向かった。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。

改めて読み返すと「第2章と第3章って話繋がってんじゃん。分ける意味ないじゃん」とセルフツッコミが脳内再生されましたので第2章と第3章を統合しました。
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