VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第36話 マヨイはソプラの現状を聞く。

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[動画被写体通知:許可/不許可]

 軽い運動を済ませた僕が藍香と合流するために再び移動を開始してすぐに"動画被写体通知"というのが来た。これはメニューの設定から操作できる項目の1つで、僕がうつっている動画や写真を掲示板に載せようとしたり、外部出力しようとした人がいた際に届く通知だ。
 許可しなければ投稿や外部出力は不可能になる仕組みだ。

「あー、動画撮られてたのか……ま、隠したいとこは隠せたし大丈夫でしょ」

 少し悩んだけど僕は許可することにした。
 どうせいつかはバレるし、本当に隠したいのは僕のステータス──特に神様関係のスキル──だ。その隠れ蓑としてわざと狂狼化を使ったわけだけど、これは狼のボスが安定して倒されるようになれば簡単にバレる情報だから隠す意味合いは薄い。

「あれ流星群の人たちかな」

 アルテラまで残り3分の2というところまで進んだ頃、遠目に見覚えのあるアバターが集まっていた。まだここにいるということは僕からの情報を元にボスを狩ろうとしているのだろうか。

「おはようございます」

「タイミングばっちり」

「おはよう、マヨイくん。この後は何か予定があったりするだろうか」

「はい、アイと合流する予定です。どうしましたか?」

「どこから説明すればいいだろうか……マヨイくんはソプラで今朝未明に起きた事件について聞いているかな?」

「掲示板に書かれている断片的なものしか知らないです」

「そうか実は────」

 シブンギさんの話を整理すると、今日の午前3時頃にソプラがワイバーンに襲われたことで街に大きな被害が出たそうだ。その原因がプレイヤーによるトレイン行為ということでソプラの復興作業をしていたプレイヤーは怒り心頭らしい。

「さらに問題なのがワイバーンに襲われたソプラの住民、ようするにNPCだね。幸い死者はいないが10名ほどの住民が"重症"というバッドステータスを受けているらしい」

「"重症"って初めて聞くんですけど」

 バッドステータス、つまり状態異常のことだ。
 ヘルプから調べられる範囲には"重症"という状態異常はない。

「余命6時間」

「は?」

「"重症"を受けると余命のカウントダウンが表示されるらしくてね。カウントが0になると"重症"を受けたNPCは全員死ぬそうだ」

「余命が見えるとか、悪辣すぎませんか?」

「即死しないだけ温情?」

 死ぬのが確定的な状態でも助かる可能性があるのを温情というなら確かにそうかもしれないけれど、街のNPCと交流が深かったプレイヤーからすれば最悪に近いんじゃないかな。

「カウントダウンは既に2時間を切っていているんだが、その"重症"を回復させられるには聖術で"欠損回復"の能力を解放しなければならなくてね。今からではまず間に合わない」

「既に解放済みの人は?」

「分かるってるのはオリオンとヒーラーというプレイヤーだけなんだ。他にもいると思うけどね」

「ならオリオンさんが行けば問題ないんじゃ」

「アルテラに戻ってからだと間に合わない」

「既にカウントダウンは2時間を切っているんだ。私たちも状況を知ったのは10分くらい前でね」

「アルテラからソプラって何分くらいなんですか?」

 ここからアルテラまで約30分だとすればアルテラからソプラまで1時間20分くらいなら間に合うはずだ。

「ふむ、アルテラ大森林があるから正確な時間は分からないが……」

「アルテラ大森林でモンスターを倒しながらだと2時間近く掛かるぜ。無視して進めばMPK同然だしよ、せっかく悪評から立ち直った俺たちにゃ無理な手段だ」

 地図のようなものを広げながら口を挟んできたのはペルセウスさんだ。中性的な高身長のアバターなので性別の判断はつかないけど、ただ喋り方からして男性の可能性が高そうだ。
 僕らとトラブルがあった時のペルセウスさんは女性だったので、もしかしたら代替りしたのかもしれない。あとで"流星群"のサイトで確認しておこう。

「ここから直接ソプラへ行けばどのくらい?」

「距離だけなら……そうだな、ここからテコまでと大差ねぇくらいのはずだ。ただ道中で狼型のボスと熊型のボスのいるところを突っ切らなきゃならねぇ。ノンアクの熊ならともかく、アクティブの狼との戦闘は不可避だ」

「熊も4人以上のパーティで近くと襲って来るようですから"流星群"のメンバーで集団行動すれば戦闘回避は無理でしょう」

「そういえばヒーラーといつプレイヤーはログインしてないんですか?」

「それがね……現地にいるプレイヤーの1人とヒーラーくんの間でトラブルがあったらしくてね、とてもじゃないが協力してくれと言える状況にないらしい」

 それは後でヒーラーさんという方が非難されるんじゃなかろうか。僕からすればNPCは個性という特徴を持たされたデータだ。そうと分かっていても感情移入してしまうのだけど、それは小説の登場人物に感情移入するのと同じようなものだと思っている。

「まよいー!」

「あ、アイが来たので僕はこれで」

 そう言ってこの場を離れようとした僕の腕をオリオンが掴む。

「待って。私にいい考えがある」


───────────────
お読みいただきありがとうございます。

距離設定の誤りを修正しました(2020/12/1)
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