VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

文字の大きさ
82 / 228
本編

第67話 マヨイは誘いを受ける。

しおりを挟む

⚫︎マヨイ

 気がついたらカフェテリアで読書を始めて2時間近くが経過していた。サンドイッチ1つで粘るのも限界だろう。ひとまず調薬指南書と錬金術指南書の初級は読み終えることができた。

『こんにちは。シキだけど今大丈夫かな?』

『こんにちは、どうかしたの?』

 カフェテリアを出て組合へ向かう途中、昨日知り合ったシキからフレンドコールがきた。

『テコの東でスケルトンが湧いてる話は知ってる?』

『ちょっとだけ組合で聞いたよ。NPCに怪我人が結構出てるとか』

『その原因を突き止めたんだけど、私ら4人パーティだからパーティの枠余ってるんだよね。もし良かったら来ない?』

 イベントのボスに挑むから助っ人に来て欲しいということか。
 ボスのドロップに関しては良くて山分けだろうから期待薄だけど、まだ見ぬボスに興味がないわけじゃない。

『……行くよ。どこで合流する?』

『テコの東門にいるよ。何分くらいで着く?』

『組合前にいるから5分も掛からないと思う』

『分かった。東門を出てすぐの場所で待ってるから』

 こうして僕は東門に向かうことになった。
 ギルドメンバーではないプレイヤーと交流して人脈を広げるのもギルドマスターに求められる仕事の1つだから、これは決してギルドメンバーが誰もログインしない寂しさを紛らわすためなんかじゃない。ないったらないのだ。


…………………………………


……………………………


………………………


『こっち、こっち!』

 東門から出たところでシキが手を振っているのが見えたので小走りで駆け寄る。

「この人が私のフレンドのマヨイくん。実は魔術士ってこと以外は知らないけど、助っ人としてお呼びしました!」

「あのさー、これからボスに挑むのに初期服の奴を連れてくとか正気か?」

 そう指摘したのは革鎧を着た赤いショートヘアが特徴的な女性。
 名前はショウ、位階は21で公開している素質は拳闘士と狩人だ。

「まぁまぁ、シキにも考えがあるみたいですし……」

 そう言ってショウをなだめているのはマリア、位階はパーティで最も高い23だ。素質は槍術士と信徒、このパーティは物理一辺倒だと聞いていたけれどヒーラーはいるらしい。

「えっと、フレンドには非公開に設定してても名前と位階が分かるんだ。マヨイは私のフレンドの中で1番位階が高いんだよ」

「はぁ!?こいつが?」

「…………マリアより?」

「えっと、これ言って良いの?」

 そうか、シキが僕のプレイヤー名を知っていたのはフレンド欄に載っていたからか。盲点だった。ここで拒否するのは小火ボヤで済んでいるトラブルにガソリンを撒くようなものだろう。
 ちなみに僕は彼女らに魔術士だと思われているのは公開されている素質が未だに魔術士のままだからだ。1度でも獲得した素質なら変化した後でも設定できる仕様は色々な意味で便利だ。錬金術士の素質を公開すれば覚醒の獲得以上に騒がれる可能性もある。

「なるべく秘密にして欲しいんだけど、秘密にしてもトラブルの種になるだけだし今回は構わないよ」

「ありがと。あのね、マヨイの位階は33なんだよ!」

「「はい?」」

「だから、マヨイの位階は33なんだよ!」

 現在、テコ周辺にいるプレイヤーの平均は20前後くらいだ。
 夏休み中にスタートした話題作ということもあって次々と新規プレイヤーが増えているため、全体的な位階の平均は15前後になるだろう。そんな状況で位階が33というのは、何かの冗談だと思われても仕方ない数字だ。

「……ん?」

 シキが「マヨイの、位階は、33なの!」と壊れたオルゴールのように同じことを繰り返している中、僕は服の袖を誰かに引っ張られた。

「こんにちは」

 僕の袖を引っ張っているのはシキの最後のパーティメンバーであるルイというプレイヤーだ。アバターの見た目年齢は小学校低学年ほど、長い黒髪をサイドポニーでまとめている姿は背伸びした幼児のような印象を受ける。
 しかし、彼女こそシキのパーティの要となるプレイヤーだ。
 位階は20とシキのパーティの中で最も低いが、素質が使役者と隠密と使徒、そして暗殺者と使の覚醒を獲得している。ステータス面では他のメンバーとは比較にならないはずだ。
 彼女の足元には黒い毛と金の瞳が特徴的な小柄な狼がはべっている。この狼はルイがテイムしているモンスターなんだろう。まだ小さいからかカッコいいよりもカワイイという印象が強い。

「こんにちは」

「シキの言ってること、ほんと?」

「位階のことなら本当だよ」

「マヨイくん、ショウが信じてくれないの。ほんの少しの間でいいから位階を公開情報にしてくれないかな」

 僕はメニューから公開設定を変更して位階の欄を公開した。
 野良というか固定パーティに混ぜて貰うのだから、これは信用を得るための必要経費のようなものだ。

「マジかー、ってことは位階が1番高いのってマヨイ?」

「個人情報だから数字までは出さないけど、僕より位階の高いプレイヤーはいるよ」

 これは藍香のことだ。昨日、変異種をソロで狩り続けたらしい藍香の位階は現在35になっている。まだ覚醒を1つしか獲得していないので僕の方がステータスは上だと思うけど、逆に言えば藍香が使徒に匹敵する覚醒を獲得したら逆転されてしまう。

「へぇ……でも何で初期服なんだ?」

「後衛の胴体装備って流通少ないし、低性能でも値段設定が少し高めなんだよ。だから当分は今のままでいいかなって思ってる」

「なるー。さっきは変に疑ってごめんね。そろそろ出発しよっか」

「いいよ。そういえば、そのボスの名前は分かってるの?」

「兵士からマリアが聞き出してくれたんだ。なんでもヤクって名前のモンスターらしいよ」

「そっか、高原地帯か……」

「どうしたの?」

「そのモンスターの名前に心当たりがあるんだ。テコ近隣で組合が確認している変異種──あ、変異種ってのはフィールドボスみたいなやつらのことね──そのリストの討伐難易度トップ3に名を連ねているモンスターにやくっていうモンスターがいるんだよ」

「「「「!!!???」」」」

 そりゃ臨時の助っ人に呼んだ奴から初見のボスの情報が出てくれば驚くよね。ただ僕も名前を知っているだけで具体的な特徴は何も知らない。

「たぶん組合で特徴くらいは教えて貰えると思うから、組合に寄ってから挑まない?」


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
次話は掲示板回になります。

ルイ「幼女に見られた気がする。これでも高3なのに」
しおりを挟む
感想 576

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

処理中です...