84 / 228
本編
第69話 マヨイは呆れる。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
シキとシキの仲間と一緒に組合に戻った僕はお馴染みになりつつある受付のブライトに厄についての情報を求めた。
「厄についてですか……そうですね、厄というのは魔力溜まりなど空気中の魔力濃度が高い場所で発生するモンスターです。分類はアンデットという説が一般的です」
「魔力溜まりというのは何ですか?」
「魔力溜まりというのは空気中の魔力が集積する場所の総称ですよ。この辺りではテコとエイトを繋ぐテコ東部高原地帯の中間地点よりやや南西の地点がそうだと言われています。これは今から20年前、その地点で初めて厄が確認されたことから推測されているだけですが……」
「20年も倒されてないのですか?」
そう横から質問したのはシキだ。
確かに厄が出現したのが20年前というならばテコとエイトを繋ぐ街道が使えなくなってから20年ということになるだろう。そんな状況を放置するというのは腑に落ちない。それに最初のということは2番目以降がいるということだ。
「厄というのは何らか要因で異常な量の魔力を取り込んだ生物の衝動や感情が魔力に定着することで発生すると言われています。20年前に出現した厄はゴブリンキングを核としていたそうですが当時のエイト領軍が総出で討伐、多数の死傷者が出たという記録が残っています。また7年前にワイバーンを核に発生した厄は現在の領主で当時は組合に所属していたウォルター・エイト様がレギオンを率いて討伐されています。この際、核となった生物によって厄の強さや能力が異なることが分かっています」
「今回の核となった生物は分かっているんですか?」
嫌な予感しかしないけれど確認する必要があるだろう。
よくて普通に強力なモンスター、悪ければ変異種の亡骸ってところだろうか。どうせ僕らプレイヤーは死んでも生き返るし、変異種の亡骸を核にしていたとしても1回くらい挑戦してといいだろう。
「──です」
「「「は?」」」
「人間、それも高位のネクロマンサーです」
予想していた最悪よりはマシなのかは分からないけれど、人間の亡骸を核にしたモンスターというのはシキたちには少し荷が重いようだ。VRではあるけれど見るからに動揺しているのが伝わってくる。
ちなみにネクロマンサーとはゲームなどのサブカルチャー作品に登場する生物の死体を操る存在のことだ。
「ということは能力もネクロマンサーと同じようなものですか?」
「そうですね。大量のスケルトンを指揮しているのが分かっています。また核となった人物は数の暴力で相手を蹂躙するような戦闘を好んでいたそうです。もちろんネクロマンサーですから、幻覚や毒など無数の状態異常攻撃もしてくるでしょう」
大量のスケルトン、掲示板やシキからの情報が正しければ数千単位らしい。それが1つの意思の元で指揮されているとなれば軍が苦戦しているのも納得だ。それに加えて状態異常を操る可能性が高いとなると……あれ?
「本体の能力、というより耐性は予想できてますか?」
「これまでの厄と同じように一般的な物理攻撃は通じないと考えられていますが、核となったネクロマンサーは接近戦とは無縁の魔導士でした。魔剣などの魔力を帯びた武器ならばダメージは与えられると思いますが……」
「元が魔導士、ということは魔術耐性も高いということですか?」
「そうですね。魔剣、それも厄クラスのモンスターに通用するものは限られています。なので現在、エイト領軍は厄を無視してスケルトンの駆除から手をつけているようです」
物理攻撃無効だけでなく魔術耐性も高いとなれば、持久戦に持ち込んで地道に削るのが確実なのは理解できる。使役されているスケルトンだって無限ではないのだから領軍に分がある賭けだろう。
「魔術、つまり魔力由来の攻撃ならダメージは与えられるんですね?」
「はい、最初に会敵した組合員からアイテムや魔術でダメージを与えて怯ませたという報告が上がっています」
「ありがとうございました」
「またのお越しをお待ちしてます」
厄についての基本的な情報を得た僕とシキたちは組合を後にした。
彼女らのパーティの空気は決して良いものではない。助っ人を呼んでまで倒そうとしてたボスとの相性が最悪に近く、倒せるビジョンが浮かんでこないんだろう。
「マヨイくん、私から誘っておいてなんだけど……」
「物理偏重のパーティで物理無効のボスに挑むのはキツいよね」
「マヨイ、勝てると思うか?」
そう質問してきたのはショウだ。
質問に対する僕の回答は「僕だけなら勝てる可能性がある」だ。
状態異常は無効にできるし、魔力弾で僅かとはいけダメージを与えることができる。それにアイテムでもダメージを与えられるというのだから単純な相性では僕の方が分があるだろう。基本スペックで負けてたら分からないけど。
もちろん、このまま言えば角が立つので全力ではぐらかす。
「シキとショウにとっては最悪に近い相性なんだよね。マリアの場合は聖術はあるけど間違いなく魔力が足りない。ルイの戦い方は知らないけれど、たぶん状態異常の対策はできないよね」
「ステータスでレジストするから大丈夫」
組合に来るまでに聞いた金の使徒の固有スキル──ルイはユニークスキルだと言っていた──それと厄との相性は悪くない。彼女から挑まずに逃げるのは嫌だという意思がヒシヒシと伝わってくる。
「でもさ、怖いもの見たさというか、興味はあるんだよね」
「実際に死ぬわけじゃないものね」
「負けたら鍛え直せばいい」
シキは厄の討伐に消極的だけど、他の3人は違うようだ。
ショウとマリアは負け前提で話の種が欲しいだけのような印象を受けるが、ルイだけは勝ちに行く気のようだ。
「…………マヨイくん、挑んでもいいかな?」
「僕が反対しても多数決なら3対2みたいだし、いいんじゃない?」
助っ人として呼ばれて許諾したからには協力するけれど、もし足手まといになるようなら彼女たちを切り捨てよう。
勝算のない勝負は好きじゃないんだ。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
52
あなたにおすすめの小説
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる