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本編
第71話 マヨイと数の暴力。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
失敗した。厄が僕らに杖を向けた時点で遠距離攻撃の事前動作だと予想できていたのだから、僕らは散開して回避行動を取るべきだったのだ。助っ人だからと指示を出さないようにしていたのが裏目に出た形だ。
「え、まっ」
「きゃぁっ!」
「プロテ……」
立て直す間もなくパーティはほぼ壊滅状態だ。盾で受け止めようとしたシキ、回避に失敗したショウ、咄嗟に防御魔術を使おうとしたマリアは紫色の光線に呑まれて体力が一瞬で尽きた。
大きく横に飛び退いた僕とルイは回避に成功したが、ルイのテイムモンスターである小次郎は回避が遅れて2発ほど受けて吹っ飛んだ。まだギリギリ体力は残っていたようだけど、すぐ近くには剣を持ったスケルトンがいる。
「小次郎!」
ルイが反射的に小次郎の元へ駆け出したタイミングで厄から先ほどと同じ攻撃が繰り出された。僕は問題なく回避出来たけれど、背を向けているルイに避けれる道理はない。
「きゃっ」
ルイは背中からまともに受けてしまい死んでしまった。主人が死んだので小次郎も消えてしまう。これで残るは僕ひとりだけだ。
「(魔力弾×1000)」
相殺出来ないかと放った魔力弾が光線に呑まれて消える。
こうなったら地道に回避しながら削っていくしかないだろう。
──何故、逃げない。逃げてくれない!
それにしても厄からの光線の連打が止まらない。
クールタイムなしで放たれる範囲即死攻撃だけど、回避するだけならなんとかなる。物理攻撃が通用しないなら接近する必要もないだろう。しかし、広範囲にばら撒かれる光線を避けながら魔力弾で狙いを定めるのは難しい。それでも牽制として放っている魔力弾が厄の体力を削っている。このまま撃ち合いになれば勝てるだろう。
この手の敵がワンパターンで終わるなんて都合のいい事があるはずないよね?
…………………………………
……………………………
………………………
パーティが壊滅してから体感で1時間くらいだろうか。
牽制として放った魔力弾で厄の体力バーを1本削り切ると戦闘は次の段階へと移行した。
──禁忌・万骨招来
光線は止んだが厄の周囲の地面から次々とスケルトンが現れた。しかも全てのスケルトンが剣や槍、盾や鎧で武装している。おそらく街道沿を進んだ時に遭遇したスケルトンとは比較にならない強さだろう。弱点の魔石も鎧に覆われているせいで狙えない。
ただ光線を回避する必要がなくなったおかげで反撃する余裕ができたのはチャンスだ。
「(魔力弾×3000)」
狙いは地面から出現したスケルトンではなく厄を狙った1000発の魔力弾は放物線を描いて厄と厄の周囲に降り注いだ。ちなみに1000発しか放たなかったのは魔力を使い過ぎて不足の事態に対応出来なくなるのを避けるためだ。
「(ダメージは与えられてるみたいだけど)」
遠目から見たバーのゲージは1割も減っていなかった。
牽制として放った魔力弾も100発で数ドットだったので1割近く削れただけ御の字だろう。ここで畳み掛けても削り切れず、迫り来るスケルトンの大群に呑まれてしまうのがオチだ。ここからはスケルトンの対応をしながら厄の体力を削らなくてはならない。
──従者狂化・抗魔
「なっ(魔力弾×2000!)」
──従者狂化・抗魔
「ちっ」
──従者狂化・抗魔
スケルトンの大群、その1体1体が紫色のオーラで包まれる。
コウマ、というのは抗魔だろう。つまり厄はスケルトン全体に魔法への耐性を付与したのだ。魔力弾がメインウェポンである僕との相性は言うまでもなく悪い。咄嗟に放った魔力弾で魔石まで砕くことが出来た個体は目視で100もいない。
目前まで迫り来るスケルトンを素手で迎え撃つ。
「は?」
剣を振りかぶったスケルトンの懐に入り込んで胸部を殴ると拳が鎧を貫通した。おまけに魔石まで砕くことが出来てしまった。
「っと」
もしかすると魔法耐性を劇的に上げる代わりに物理耐性が著しく下がっているのかもしれない。しかし、迫り来るスケルトンの物量を全て捌くのは僕には難しい。せめて槍や杖のような振り回せるものがあれば……メニュー欄を開いて代用できるものはないか探す。
「(これだ!)」
アイテム欄から取り出したのはアルテラ大森林で採取したゼパース・ウッド。それをスケルトンたちの頭上に出現させると、狙い通りスケルトンを5~6体ほど潰してくれた。これを繰り返せばスケルトンも問題なく片付けられるだろう。
「どーん!」
やばい、これめちゃくちゃ楽しい!
魔力弾で蹂躙するのとはまた違った爽快感を味わいながら僕はスケルトンをゼパース・ウッドで押し潰していく。スケルトンを倒す度に厄の近くから倒したのと同じ数のスケルトンが現れるが、それもいつか止まるだろう。……止まるよね?
…………………………………
……………………………
………………………
スケルトンの大群をゼパース・ウッドで潰し始めてから体感で2時間近くが経過した。その間も厄の体力を少しでも削るために魔力弾を放ち続けたけれど、スケルトンを倒すことを優先したせいでほとんど削れていない。
──嗚呼、いいぞ、決して諦めるな
スケルトンの召喚から1時間が過ぎた辺りで厄から再び光線が飛んでくるようになった。その対処のために動き回ったのも魔力弾を放つ余裕がほとんどなかったのだ。
「これでラスト!」
最後の4体をまとめてゼパース・ウッドの下敷きにした。
そして厄から飛んでくる光線にも慣れてきた……というより全力で厄の周囲を円を描くように走るだけで回避できることに気がついた。攻撃パターンが変化しても対応できるように気をつけながら魔力弾を放ち続ける。
──禁忌・万骨招来ぃぃ!
2本目のバーを削りきると厄は再び攻撃の手を止めてスケルトンを召喚した。正直、またゼパース・ウッド無双をしなければならないのかと辟易しそうだ。この手の作業ゲーは得意じゃないのだ。
──従者狂化・堅牢
──従者狂化・堅牢
──従者狂化・堅牢
焼き回しのような光景が眼前に広がっている。
しかし、スケルトンへの支援スキルの内容が違う。おそらく先ほどと同じパターンなら物理防御力を飛躍的に上昇する代わりに攻撃力か魔法防御力が下がってるのだろう。
「(魔力弾×3000)」
再び迫り来るスケルトンの大群を先ほどの苦戦が嘘のように薙ぎ払うことができた。やはり魔法攻撃に対して脆くなっていたようだ。
途中から再び厄からの攻撃が飛んでくるようになったが、攻撃パターンには変化はなく最後は完全に作業ゲー状態になってしまった。
──感謝、する。名も知らぬ英雄よ
[The Disaster type necromancyを倒した]
[素材:厄晶を9個獲得した]
[貴重:ヨーゼフの手記を獲得した]
[装備:ヨーゼフのローブを獲得した]
[装備:使役の宝杖を獲得した]
[称号:英雄を獲得した]
[称号:災厄の討伐者を獲得した]
メニューで確認すると戦闘開始から5時間近く経過していた。
いつの間にかシキたちはログアウトしたらしくパーティは解散、戦闘終了時に僕しか残っていなかったせいか報酬を独り占めしてしまった。実質ソロ討伐だけど、今回はシキたちの助っ人として参加したのだから報酬についてはシキたちと相談した方がいいだろう。
しかし、シキはログアウトしているらしく連絡が取れない。
「はぁ……ログアウトするか」
時間の戦闘のせいで連続接続制限のリミットである8時間まで残り1時間を切っていた。フィールドでログアウトすることに一抹の不安を感じながら僕は精神的な疲労感からアイテムの確認や街への帰還を断念してログアウトすることにした。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
ストックに余裕が出来れば厄の心理描写をもう少し書き足したいと思っています。
次回は久しぶりの運営サイド回になります。
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自筆です。
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