VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第79話 マヨイと多数決

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⚫︎マヨイ

 掲示板を見ながら進んでいたせいか僕がテコに到着した頃には既にイベントは始まっていた。僕がテコの組合に着くとエントランスには見知った顔しかいなかった。

「兄さん、おっそい!」

「ごめん、思ったより帰ってくるのに時間掛かった」

「お兄さん、こんにちは。その装備、どうしたんですか?」

「こんにちは、クレアちゃん。これはクエストの報酬……とはちょっと違うけどNPCから貰った装備だよ」

「あとで見せて貰えませんか?」

「いいよ……あれ、アイは?」

「お姉ちゃんならソロで挑戦しに行ったよ」

「イベントエリアにいるプレイヤーはフレンドコールやギルドチャットが使用不可になるみたいです」

「兄さん、イベント内容の一部変更があったの確認した?」

「変更なんてあったの?」

「えっと、ですね──」

 イベント内容の変更部分と細かいルールについて暁とクレアちゃんから教えてもらった。運営からのお知らせを読んだ方が確実なので後で確認する手間を考えれば無駄な時間なんだけど、暁たちがどの程度把握しているかも知れるので全く無駄というわけではない。それに噛み砕いて分かりやすく説明しようと頑張っている2人の妹分に「お知らせを確認するからいいよ」とは言えなかった。

「趣旨としてはアルテラ北部草原地帯で発生した魔物の調査依頼なんだね」

「でも兎さんだけじゃなくなったみたいです」

「速攻で死に戻ったクラスメイトが蛇に噛まれたとか言ってたよ」

「ランキングはスコア形式、スコアが貰えるのは挑戦する時に選べる難易度、討伐したモンスターの数と強さ、魔物化した原因の調査と解決、でいいのかな」

「はい、それで合ってると思います」

「アルテラ草原って広いから制限時間で全部は無理じゃない?」

「制限時間は1時間か。そういえばイベントエリアで死んだらどうなるの?」

「え、知らない」

「アカちゃん、その日の死亡回数にカウントされるって書いてあったよ」

「あれ、そうだっけ?」

 それなら難易度低いところに挑戦して感触を掴んでから難易度を上げていった方が建設的だろう。

「それと普段はアルテラ草原にいないモンスターが出る可能性もあるって書いてありました!」

「普段いないって言われても僕は狼と蛇と兎しか見たことないからなぁ」

「林になってエリアに夜はコウモリとかフクロウが出るよ。東側にはライオンみたいなモンスターが出るって聞いたかなぁ……」

迷彩獅子ステルスレオだよ。5~6匹の群れで行動しててたまに透明になるんだって」

「へぇ……そういえばアルテラの東側も草原なんだっけ」

 僕は行ったことないがアルテラ東部草原地帯というエリアになるのかな。アルテラ北部草原地帯とは隣接したエリアなのに微妙に出現するモンスターが違うらしい。
 透明化する敵か……もし音も消せるようなら厄介だな。不意打ちには気をつけないと。

『真宵も合流できたのね。まだ組合にいる?』

『いるよ、さっき2人と合流したところ』

『おつかれさまです』

『なら今から行くわ』

『待ってるねー』

 藍香がイベントエリアから出てきたようだ。
 声色から藍香が落ち込んでいるように感じる。これは死に戻りしたか、今の藍香でも倒せないモンスターがいたかのどちらかだろう。

「アイが戻ってきたら情報を貰ってパーティで挑戦しようか」

「「うん/はい」」

 それから数分もしない内に藍香が組合のエントランスまでやってきた。位階が52まで上がっているところから察するに最初から挑む難易度を高くしたんだろう。せっかく位階を追い越したと思っていたのに再び差をつけられてしまった。

「おかえり。どうだった」

「敵の位階が50超えてくるなんて思ってなかったわ……」

「最高難易度?」

「6よ。10段階で選べる難易度のほぼ真ん中よ。レベリングするには効率良いかも知れないけどソロだと事故が怖いわね。最後は透明な何かに囲まれて死んだわ」

 藍香が1時間生き残れなかった。それも選択できる難易度からすれば更に4つも上があるらしい。

「この後どうする?」

「ギルド全員で難易度5に行きましょう。出てくる敵の位階は40を超えるでしょうけどアカトキとクレアは運が良ければ生き残れるわよ」

「無理、絶っ対に無理!私は一般的なんだし覚醒したからって格上と連戦なんて無理だよ」

「え、あかつ……アカトキ覚醒したの?」

「私だけじゃないよ。クレアも覚醒したの!」

「凄いじゃん」

 暁は守護者と忍耐、クレアちゃんはサジタリアと弓神の巫女という覚醒をそれぞれ手に入れたそうだ。これは暁が忍耐という覚醒を手に入れた時に素質と同名の称号があれば覚醒できることに気がついて2人で試行錯誤した結果らしい。
 そして僕は忍耐の獲得条件を聞いてドン引きした。

「閾値を超えた精神的苦痛を受けてもログアウトしなかったったって……何がやったんだよ」

「あー、前に話した峯村がキャラロスしたらしいんだ。それでキャラを作り直したからレベリング手伝ってくれってクラスの奴らにお願いしたみたでさ。ほら、前にもクラスメイトでタンクが私しかいないって話をしたじゃん?そしたらクラスメイトの何人かが手伝ってやれとか言ってきてさ、断ったらクレアのフレコを峯村に教えるとか言い出したんだよ。それで仕方なくレベリングを手伝ってやったんだけどめちゃくちゃウザくてさ────」

「長いわ。あと早口で捲し立てるな、要点だけ言え」

「クレア以外のクラスメイトとは2度とパーティ組みたくない!」

「え、えっと、アカちゃん以外のクラスメイトとは2度とパーティ組みたくないです!」

「それは要点じゃなくて結論だろ……」

「いいんじゃない?特に親しくもない奴のパワーレベリングを手伝うとか拷問でしかないし。あ、でもユウジをキャラロスさせたのは私と真宵だから間接的に2人に迷惑掛けたことになるわね。ごめんなさい」

「あー、そうなるか。迷惑を掛けたようで本当に申し訳ない」

 仕様を把握していなかったが故の事故というのは言い訳にしかならない。自分の行為が回り回って身内を傷つけたのだから、これは僕の自業自得だろう。

「え、いや、別にいいよ。ぶっちゃけクラスメイトの奴らいい加減うざかったし」

「アカちゃんを便利な盾、みたいに思ってそうで私も嫌でした」

「私の義妹いもうとをパシリにしてた、ねぇ……」

「アイ、僕の妹だからね?」

 暁とクレアちゃんのクラスメイトはクレアちゃんに「クラスメイトなんだからタダで装備を作ってくれ」とも言っているらしく、それに関しては藍香が「しばらくは販売や譲渡せず貯めて欲しい」とお願いしていた。おそらく店舗を構える時に一緒に並べる算段なのだろう。

「あ、そういえばエイトに土地と建物を貰えることになったから明日にでも下見に行かない?」

「「「………は?」」」

 僕は厄の討伐からの一連の話を説明することにした。
 ちなみに説明を終えた直後に『ギルドマスターがギルドメンバー以外とパーティを組む場合、ギルメンの過半数の賛成が必要』という謎ルールが僕以外の賛成多数で決まった。ちなみにギルドマスターに投票権はなく、賛成と反対が同数だった場合は反対が優先されるそうだ。
 その代わりギルドマスターは反対票を投じたギルドメンバーに何でも1つ命令できる権利が発生するらしいので僕にだけデメリットがあるルールではない。

「なんだ冗談か」

「そうよ。でもルールはルールだからね」

「はいはい。それで下見に行く?行かない?」

「行ってもいいけど下見しかしないの?」

「エイトに何があるかくらいは把握したいかな」

「私たちも行っていい?テコにいるとクラスメイトに絡まれそうだし、クレアも出待ちされるの嫌でしょ?」

「うん」

「なら少なくともイベント期間中は固定パーティを組みましょか」

 こうして僕らは藍香の提案でイベントが終わるまでの1週間、常にパーティを組んで行動することになった。暁やクレアちゃんを守るという意味でも悪くないと思う。
 しかし、イベント期間中に流星群から接触があるはずだ。暁たちに迷惑が掛からないようにしたい。そこら辺は藍香も分かっているはずなので夜にでも相談しよう。

「よし、そろそろイベント行こうか」


───────────────
お読みいいただきありがとうございます。

いよいよ暁の人外スペックがアップを始めました。
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