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本編
第82話 マヨイは身の程をわきまえない。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
組合内の武器屋で臨時収入を換金した僕らは今度こそイベントに挑戦すべくテコの南門に来ている。ちなみに装備を売り払ったのは「よく考えたらさ、あいつが使ってた装備を再構成した装備とか気持ち悪くて使えない」と言い出した暁のわがままが原因だ。それと周囲から「外道」とか「鬼か」とか色々と聞こえたけれど、賭けを申請したのは僕ではなくトリスである。
「あいつも大概だったけど、兄さんが決闘する必要なかったよね?」
「いや、自称とはいえ剣術を習ってるプレイヤーは希少だよ?」
「発想が戦闘狂のそれだよね」
「お兄さん、格好良かったです!シュッて投げてドスッて!」
牽制で短剣を投げたら払うどころか回避もしてくれなかったのは期待外れだったけど、クレアちゃんが喜んでくれたならいっか。
それに藍香も僕がトリスと決闘したことで溜飲が下がったようだった。僕としては藍香がブチギレて彼らから色々と毟り取りやしないかヒヤヒヤしていたのだ。
「で、あの織姫って子に告白されたって件、私は聞いてないわよ?」
「あー、去年の今頃だったかな。僕に告白してきた子の中でも印象に残ったからすぐ思い出せたよ」
「「印象に残った?」」
「終業式の後、簡単な自己紹介をされた後で"一目惚れしました、結婚を前提にお付き合いして下さい"って告られたんだよ。あまりの衝撃になんて言って振ったか覚えてないくらい」
「私、知ってるよ『僕は君に興味ないから無理。それに受験生に告白するとか正気?相手が困ることを考えなかったの?あと一目惚れで結婚とか言い出すなんて貞操観念がないのかな?ご両親に相談して病院に行った方がいいよ』だったかな。鬼畜外道だよね」
「そんなこと言ったかなぁ……」
あの頃の僕、そんなに口悪かったかな?
ちなみにカフェテリアで暁からフレンドコールで謝られたけど、織姫が僕に妙に積極的だったのは暁が雑に焚き付けたからかもしれないらしい。なんてことをしてくれたんだ……
「去年の夏頃と言えば真宵も色々とストレス溜まってた時期だから仕方ないわよ。それに一目惚れしたから結婚して欲しいっていうのは私もどうかと思うわよ?」
「私は一目惚れから始まる恋があっても良いと思うよ?」
「悪いとは言わないけど、やっぱり人間は内面こそ重視されるべきだと思うのよね。老人になればイケメンだってしわくちゃよ?」
「油ぎったオッサンの人格者ならいいの?」
「油ぎったオッサンに人格者なんていないわよ」
「それもそっか。クレアはどう思う?」
「たった1回会っただけで名前を覚えて貰うなんて織姫ちゃんはずるいと思う」
「「はい?」」
「え?」
クレアちゃんは何やら考え事をしていて藍香たちの会話を聞いていなかったようだ。たぶん僕がクレアちゃんの名前──本名の呉朱莉──を初めて会ってから数ヶ月、知ろうとすらしてなかったことを思い返していたんだろう。その節は本当にごめんなさい。
「はい、はい、無駄話はこれくらいにしてイベント行こうね」
ちなみに僕は油ぎったオッサンにも人格者はいると思う。
何故なら僕の父さんも一応は油ぎったオッサンに分類されるからだ。父さんは細かな欠点こそ多いものの、父親としてゲーマーとして十分に尊敬に値する人物だと思ってる。
…………………………………
……………………………
………………………
南門にいる兵士に話し掛けることでイベントエリアに転移できるらしいので、その前に僕らの間でイベントに関する情報を再確認する。
「へぇ……スコアの算出方法は公開情報なのか。あとギルドで挑む場合は1度設定すると24時間は設定した難易度より上の難易度には挑めないみたいだしパーティで挑んで様子見した方がいい?」
「でもギルドで挑むと調査結果が保存されるみたいだよ?パーティだと挑む度に最初からだからギルドで挑戦して全体像を把握した方がパーティやソロでやる時に楽じゃない?」
「どっち選んでもメリットとデメリットがあるから迷うな……あと挑む難易度だけど藍香は5が妥当だって言ったけど覚醒2つ持ち4人なら7か8でも行ける気がするんだ」
「なら難易度は8でどうかしら」
「お姉ちゃんが難易度6に挑んで負けたんでしょ?無理じゃない?」
「無理だったら下げればいいのよ。それに位階50後半の狼型モンスターに狂狼化を使った私の通常攻撃で急所なら確1、そうでなくても確2だったわ。あの透明なのに囲まれなければ何とかなるわよ」
確1というのは「1回の攻撃で確実に倒せる」の略だ。
他にも「1回の攻撃で倒せる可能性がある」という意味の乱1などがある。元ネタは某国民的RPGで使われている用語だ。一昨年のクリスマス直前にはVRRPGとして過去作のリメイクが発売され話題を呼んだ。ちなみに藍香は去年1年、受験勉強ガン無視して遊んでいた。藍香曰く「飛行機に乗らなくてもフランス旅行できて服も買えて高級レストランの料理も堪能できるとか控えめに言って最高よね」らしい。めっちゃ分かる。
「私は攻撃面では貢献できないよ?」
「アカトキはタンクなんだから当たり前だろ。タンクが攻撃面で活躍できてたらアタッカーの立つ瀬がないよ」
「今更だけどタンク1アタッカー3って歪よね」
「最悪、僕らには回復アイテムがあるから何とかなる……といいね」
その後、少し話し合って僕らはパーティとして難易度は8に挑むことにした。これは今回、僕らの主な目的がランキングに載ることではなくレベリングだからだ。そのためイベントエリアに移動したらスコアの獲得効率を無視してモンスターを倒すことになっている。
ちなみにスコアの算出方法は『難易度×(倒したモンスターの位階の合計+調査点)+ボーナス』となっている。イベントエリアにある雑草や小石に鑑定を使っても調査点が入るらしく、鑑定スキル持ちを募集するパーティが多いようだ。
イベントエリアに移動するため南門で大勢のプレイヤーに囲まれてる兵士に僕も話し掛ける。いやぁ……お勤めお疲れ様です。
「アルテラ草原に存在する野生動物が魔物化してしまった。魔物化したモンスターを倒すため、領主様ご自身が領軍の精鋭を率いて対処されるそうだ。しかし、先の災厄との戦いで領軍の状態は万全とは言いがたい。再編成にも時間が掛かるだろう。そこで君らに頼みがある。義勇兵として領軍が到着するまでの間に領軍の負担を可能な限り減らすことに協力して貰えないだろうか」
【義勇兵として領軍に協力しますか?】
協力する
協力しない
考えさせて欲しい
「協力させてください」
【イベントエリアの形式を選択してください】
ソロ(選択できません)
パーティ
ギルド
ソロが選択出来ないのはパーティを組んでいるからだろう。
パーティを選択する。
【難易度を設定してください】
10▽
僕は▽の部分をタップして8を選択する。
【注意:パーティの平均位階が選択した難易度の推奨位階に達していません。難易度の再設定を推奨します】
身の程をわきまえる
身の程をわきまえない
「もうちょっと言い方ない?」
僕は"身の程をわきまえない"を選択した。
【イベントエリアに移動します】
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
イベントの当初の流れ
野生動物が魔物化する事件を派遣されていた領軍が調査することになった。彼らが討ち漏らした魔物を掃討して貰いたい。
※厄はエイトから出陣したウォルターに討伐され、イベント終了後にはエイトまで行けるようになるはずだった。
※このイベントはギルドの立ち上げ以外にも複数の条件から1つ達成された時点で発生する予定でした。
マヨイが厄を討伐したので領軍は引き上げてしまい、本来なら領軍の精鋭が片付けるはずだった魔物の討伐や事件の調査をプレイヤーがすることになりました。ちなみにウォルターは厄が倒されたことを報告するために王都へ向かわなければならないので手が回らないという設定です。
追記
最後の設問の言い回しを変更、それに合わせて話タイトルも変更しました。ストーリーへの影響はゼロです。
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自筆です。
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