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本編
第128話 マヨイは破壊する。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
「よし、入っていいぞ」
僕らは許可証を見せることで特に手間取ることもなく関所を通過することができた。関所にいた兵士NPCは少しだけ世間話をしそうな雰囲気を醸し出していたけれど、兵士としてそれでいいのか?
「蜂の巣と聞いたので蜂の巣のような建物を想像してましたけど……」
「まー、資料にあった通り洞窟だね」
"蜂の巣"というダンジョンの名前の由来はダンジョンの奥に存在する巨大な蜂型モンスターの巣のようだ。1匹の女王蜂型のモンスターに使役された複数種の蜂型モンスターは位階が高いだけでなく連携もしてくるらしい。
その蜂の巣の手前にあるアンダラシルという植物の葉か実がダンジョンの踏破を証明するアイテムらしいので無理に蜂の巣を破壊する必要はなさそうだ。
「アンダラシルってどんな植物なんでしょう?」
「聞き覚えのない名前だしゲーム固有のものじゃないかな」
「資料には魔法を使う植物型モンスターって書いてありますけど……」
「森にいるらしいマンイーターの仲間かもね」
複数の状態異常を同時に与えてくるらしい魔法攻撃だけでも十分に危険だけど、蔦を使った拘束攻撃と体力と魔力を吸収する攻撃も警戒する必要がある。それに資料にはアンダラシルに攻撃を加えれば周囲の蜂型モンスターが襲ってくるとも書いてあった。
「宝石蜂は女王蜂型のモンスターと次世代の女王蜂候補のことらしいから普通なら遭遇することはないモンスターみたいだね」
「なら女王蜂さんも倒しましょう!」
「……そうだね、頑張ろうか」
こうして洞窟に入ったまでは問題なかったのだけど、洞窟内は蜂の羽音が反響していて四方八方を蜂に囲まれているような感覚を覚えた。
羽虫、というか羽音が苦手な僕にとっては本当に不快な音だ。
少しは我慢できるかとも思ったけど、これは生理的に無理だね。
「クレア、ちょっと無茶するよ」
「お兄さん?」
まずは探索技能でダンジョンの構造を丸裸にする。
立体的なマップは複雑な迷路のようだ。資料には大まかな最奥までの通路案内も書かれていたけれど、おそらく普通に戦闘しながら進めば1時間掛けてもたどり着けないだろう。
「アンダラシル、アンダラシル……これか」
次にマップに表示されたモンスター全てに高位鑑定を使用してアンダラシルという名前を探す。これは資料通りに最奥に密集していた。どうやら単体のモンスターではなく森のように群生している樹木型のモンスターらしい。
「ふぅ………クレア、少し下がって耳を塞いでいてね」
「は、はい……」
「威力調整+100%・形状変化・魔力弾×1500000」
現状の最大火力によるダンジョンの内壁破壊。もし洞窟が崩落したとしても出入り口近くにいる僕らが生き埋めになる可能性は低い。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ
洞窟という音が反響しやすい環境だったせいか手で耳を塞いでいても耳鳴りがするほどの大音量が鳴り響く。ただ眼前に表示されているマップには僕らのいるダンジョンの入り口からアンダラシルが群生している奥地までを貫通する路が表示されている。
また出来たばかりの通路を通って僕らの方に向かってくる蜂型モンスターの姿も確認できた。
「なんのおとー?」
「ごめんよ、ククル。起こしちゃったね」
「パパ、おはよー」
頭の上に乗ったまま器用に寝ていたククルを起こしてしまった。
「うぅ……頭がぐわんぐわんします」
「クレアちゃんもごめんね。大丈夫?」
「はい、大丈夫です。……それよりダンジョンの壁って壊せたんですね」
「あー、確かに。壊せない可能性かあったの忘れてたよ。それよりクレアちゃん、ちょっと掴まっててね」
「はい……きゃっ」
僕はクレアちゃんをやさしく両腕で横向きに抱える──お姫様抱っこというやつだ──と飛行技能を使って新しく出来た(作った?)通路に飛び込んだ。
「お、おに、お兄さん!?」
「かなり揺れるだろうから舌を噛まないように気をつけてね」
「ねー!」
「あ、ククルちゃん!」
ククルが僕の帽子の中から抜け出して僕に抱えられているクレアちゃんの懐に飛び込んだ。クレアちゃんがしっかり抱きとめてくれているし、これなら少し荒っぽい動きをしても大丈夫だろう。
僕は下層から迫り来る蜂型のモンスターを躱しながらダンジョンの終着地であるアンダラシルの群生地まで降りて行った。
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お読みいただきありがとうございます。
久しぶりの環境破壊回でした。
生理的に無理な羽虫の羽音が反響してる洞窟なんてマヨイがまともに攻略するわけないんですよ……
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