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本編
第130話 マヨイはゴリ押しする。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
「あの穴の上で爆発させるんです!」
クレアちゃんに彼女が作った呪炎瓶というアイテムの使用方法について聞くと彼女は少し嬉しそうな顔で教えてくれた。しかし、穴の中ではなく穴の上で爆発させるのは難しい気がする。
「え、爆発?」
「見ててください!……えいっ」
クレアちゃんが可愛らしい掛け声と共に呪炎瓶を投げた後、即座に弓を構えて矢を放つ。その矢は穴の直上にあった呪炎瓶に命中、直後に爆発した。大きな音こそないものの、呪炎瓶の中身が紫色の炎をまといながら穴の中へと落ちていく。
「おお……」
「このために投擲の技能を習得したんですよ!」
ドヤ顔をしたクレアちゃんは可愛いが、すぐに穴の中から大量の蜂型モンスターが飛び出してきた。生理的嫌悪を掻き立てる羽音の重奏は僕の神経を掻き乱す。
「……魔力弾×1000!魔力弾×1000!魔力弾×1000!」
「ラ、ラピッド&ペネトレイトアロー!」
もう毒袋を手に入れるために蜂型モンスターの頭部をピンポイントで狙う余裕なんてなかった。蜂型モンスターをこちら近づけないことを最優先するので精一杯だ。
あまりにも焦っていたので正確な時間は分からないけれど、しばらくすると他の蜂型モンスターよりも2回りは大きな蜂型モンスターが現れた。名前はクリスタルビー、魔物と近衛兵の2つの覚醒を持ったモンスターだ。位階は40と低いものの今までの蜂型モンスターよりもステータスは遥かに高い。しかも面倒くさいことに魔力耐性[大]という技能まで持ち合わせている。
「ペネトレイト&スナイピングアロー!」
そんなクリスタルビーだったがクレアちゃんの弓矢に頭を射抜かれて即死してしまった。出落ち要員としては及第点だろう。
他にも数匹のクリスタルビーが現れたが僕が手を出すよりも先にクレアちゃんが弓で次々と射落としていった。頭を射抜かなくても1撃で倒せてしまっている点については単純にステータス差が大きいからだろう。それに加えて技能を使っているからかも知れない。
「ん?」
「どうしました?」
「……いや、穴の中めちゃくちゃ燃えてるなぁって」
そう言って紫色の炎が立ち上る蜂の巣があった(と思われる)穴に視線を向ける。おそらく何匹もの蜂型モンスターが穴の中で力尽きているんだろう。
炎の勢いも弱まった頃、穴からクリスタルビーよりも更に大きな蜂が現れた。出待ちしたようなクレアちゃんの狙撃を受けてもほとんどダメージを受けた様子がないそれの名前はジュエルクイーンビー、魔物・女王・支配者と3つの覚醒を持った位階75のモンスターだ。名前からして女王蜂だし、体力ゲージが2つあるのでボス格だろう。
「すいませんっ」
「あれは僕が何とかするからクレアちゃんは他の蜂を倒して!」
「はいっ!」
試しに魔力弾で牽制するがダメージはほぼない。
つまりは数のゴリ押しが通用する相手ということだ。
「魔力弾×100000!」
杖が届く範囲まで接近してから温存していた魔力の大半を使って確実に体力を削る……はずだった。
[Jewel Queen Beeを1匹倒した]
[素材:宝石女王蜂の毒針を獲得した]
[素材:宝石女王蜂の毒袋を獲得した]
[素材:鉱石蜂の蜂蜜を獲得した]
[装備:鉱石蜂の毒壺を獲得した]
[称号:宝石女王蜂の討伐者]
「え、えぇ……」
たった1度の魔力弾だけで何とかなってしまった。
せっかくクレアちゃんに杖を貰ったというのに出番がないのは少し寂しい。まだギルドメンバー以外のプレイヤーに僕が魔力弾をメインに使っていることは知られていないようだし、しばらく魔力弾禁止の縛りプレイでもしてみようかな。
[Bee's Jewel Castleを破壊した]
[素材:宝石城を残骸を15個獲得した]
[称号:宝石城の破壊者を獲得した]
[エリア:テコ大鉱脈に入れるようになった]
その後、八つ当たり気味に蜂型モンスターを倒していると更にアナウンスが聞こえてきた。どうやら蜂の巣もボス扱いだったらしい。蜂の巣を破壊したのは間違いなくクレアちゃんの使った呪炎瓶だろう。直接見たわけじゃないから分からないけど、ボス格の体力をアイテム1つで削り切るなんて凄いな。
「おわったー?」
「終わったよ」
「あ、今の鳴き声はククルちゃんですか?」
「そうだよ、戦闘が終わったのか聞かれたところ」
戦闘音がしなくなったからか僕の帽子の中からククルが話し掛けてきた。やはりクレアちゃんはククルの声が鳴き声にしか聞こえないようだ。
「私もククルちゃんと会話してみたいです……」
「ククルもー!」
「えっ!?」
「どうしたの?」
「女の子の声で"ククルもー!"って聞こえて……それに魔物言語理解っていう技能を習得しました」
「それがアイが言ってたモンスターと会話できる技能かな?おめでとう」
僕が習得するか迷った言語理解初級の技能が浅く広い範囲に対応した技能だとすると、クレアちゃんが習得した魔物言語理解は狭く深い範囲に対応した技能なのかな。
「ありがとうございます。……ククルちゃん、私の名前はクレアって言うの」
「くえあ?」
「ク・レ・アだよ」
「クレア?」
「そうそう。偉いねー!」
クレアちゃんから褒められたククルは僕の帽子から抜け出してクレアちゃんの胸元に飛びついた。
「ママ?」
「えっ、ま、ママ!?」
「クレアはママ?」
「……お兄さん、どうしましょう?」
「僕もパパ呼びされているし別にいいんじゃない?」
「え、い、いいんですか!?」
「嫌なら呼び捨てか"お姉ちゃん"呼びになるんじゃないかな」
「私まだ中学生だし……」
「ママ、だめ?」
「うっ……ママでいいよ」
「ママ!」
「こんなのダメなんて言えないですよぉ……」
「ははは……わかる」
「ママ、おじゃべりしよー」
それからクレアちゃんはククルとの会話に夢中になっているうちに僕は蜂の巣のあった穴を確認することにした。織姫の一件を聞いた時は随分と落ち込んでいた様子だったけど、今はククルのおかげで凄く楽しそうだ。これもアニマルセラピーってやつなのかな?
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
耐性があってもステータス差が如何ともしがたく……出落ち要員になってしまいました。
ククルの女性陣に対する呼び方はマヨイへの呼び方をダイスで決めた際に決めていました。楽しみにしていた方すいません。
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自筆です。
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