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本編
第136話 マヨイは挑ませる。
しおりを挟む⚫︎アイ
タクヤたちを強制ログアウトに追い込んだ後、色々とやることが出来た私は1度ログアウトするためことを真宵に伝えようとした所で自分がやらかしたことに気がついた。
「次は譲ってくれるって言ったじゃん」
「ご、ごめんなさい、我慢出来なかったのよ……」
拗ねてる真宵の目がいつもよりも5割増しで厳しい。特に今回、真宵は普段から気にしている容姿や性別について誹謗中傷を受けた。もし現実だったら間違いなく彼らは──精神病棟か一般病棟かは分からないけれど──病院のお世話になっていたはずだ。
「ま、ありがと。でも大丈夫?」
「大丈夫よ。ちょっとログアウトして手を回してくるけど4人はどうする?」
タクヤたちに関しては私が生徒会長だった頃に集めていたもの──主に人脈やOHANASIするのための情報──が使えるはずだ。問題は彼らの親と私の今の立場だけど、前者はともかく後者はなんとかなる。明日は暁たちの登校日だし早めに処理してしまいましょう。
「さっき決めた通り織姫と模擬戦するよ」
「いいんですか……?」
織姫は当初の勢いは影を潜めてしまっているけど、自分が原因で好きな人に迷惑が掛かれば当然よね。
「僕と接近戦で勝負して僕にダメージを与えたら合格ってことで」
「え、それだけですか?」
織姫は真宵が出した条件が簡単だと思っているようだけど、私たちは合格条件の厳しさに眉を顰めた。ステータス差を考慮しなくても真宵が飛行技能で高高度まで逃げれば織姫が合格出来る目はなくなる。そもそも普通にやっても無理難題であることは間違いないけれど。
「真宵、それだと織姫が可哀想よ?」
「そうだよ、兄さんは技能禁止でちょうどいいって!」
「あぁ……確かに。それじゃ僕は技能禁止にしよっか」
「え、それだと簡単になりすぎちゃうんじゃ……」
私たちが配信者をしていたことを織姫が知ったのは昨日だ。
例え好きな人の情報だとしても昨日は色々とあったし見る暇もなかったと思う。正直、技能の使用を禁止しても真宵に関する前情報なしでは難易度が高い。
さっきはクレアの暴走を止めてくれていたし、私としてはギルドに参加して欲しい。それに純粋に真宵のことが好きみたいだから恋バナとかしてみたいのよね。でも真宵のことだから1度でも不合格にしたら再試験は余程のことがなければ認めない。
「真宵、試験は延期にしてくれないかしら」
「え、なんで?」
「今のままじゃ絶対に合格できないからよ」
「だ、大丈夫です!」
「織姫、悪いことは言わないから今日はログアウトして私たちの配信を見なさい」
「え」
「そうじゃん!兄さん、織姫は兄さんが配信者をしてたの知らなかったんだよ。だから少し予習させてよ、ね?」
「先輩ってそんなに凄いの?」
「プロゲーマー相手にして勝ち越せるくらい強いって言えば分かる?」
「プロゲーマー?……え、プロ!?」
その後、暁とクレアによる私たちに関する説明会が開始された。本人の目の前で「化物」とか「怪物」とか言ってくれちゃってまぁ……あとで沙織さんに言いつけてあげようかしら。
「それじゃ私はログアウトするわね。真宵、あとよろしく」
「はぁ……分かったよ」
こうして私は一旦ログアウトした。
タクヤたちに関しては今日中に終わらせてしまいましょう。
⚫︎マヨイ
確かに僕は負けず嫌いだ。それでも僕は妹の友達との模擬戦でムキになるような分別のない人間じゃない。それなのに暁たちが余計な事を教えたせいで織姫は完全に及び腰になってしまった。藍香は織姫をギルドに入れたいみたいだし、どうしたものかね。
「先輩、えっと、模擬戦は……」
「するよ。延期はなしね」
「兄さん!」
「もし逃げるようならそれまでだよ。例え藍香が許可しても僕が認めない」
ハンデありとはいえ格上のプレイヤーと模擬戦をする機会なんて中々ない。その機会を利用して今よりも上のステージに立とうとするハングリー精神は上達するのに必要不可欠だというのが僕の持論だ。例え藍香に気に入られていても今の状況で尻込みするようなプレイヤーは僕らのギルドには要らない。
「……わかり、ました。胸をお借りします」
そして"迷い家"に参加したい織姫に断るという選択肢はない。
これが後々"人類卒業試験"と呼ばれることになる迷い家の参加試験の大元になるのだと、この時は誰も想像してはいなかった。
…………………………………
……………………………
………………………
そして僕は今、テコの組合裏にある訓練場で暁と相対している。それというのも道中、暁とクレアちゃんから『織姫と同じ内容の試験を受けさせて欲しい』と頼まれたからだ。どうやら2人とも思うところがあったらしい。
「ルールを確認するぞ。制限時間は5分、その間に僕にダメージを与えたらアカトキの勝ち。そして僕はハンデとして技能の使用禁止、アカトキも広範囲攻撃の使用禁止、いいね?」
「勝者のお願いを何でも1つ聞くってのも忘れないでよ?」
「常識的な範疇のお願いだけだぞ」
「……分かってるって」
普段なら自分の要求をストレートに伝えてくる暁にしては珍しい提案だ。いったいどんなお願いなんだか。案外「織姫の参加を認めてあげて欲しい」とかそんなところかもしれない。
「がんあってぇー!」
「お兄さん頑張って!アカちゃんも!」
暁は現時点でプレイヤー全体で10本の指に入るくらいには強いだろう。正直、これまでステータスのゴリ押しだけで倒せてきたプレイヤーたちとはステータス面だけを見ても文字通り格が違う。それに何か隠しているようだし、お手並み拝見といこう。
「何をお願いしたいのか知らないけど、飽きたら殺すから」
「……………………」
こうして予定外の形で僕と暁の決闘が始まった。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
面接官がマヨイって人選ミスじゃないかな?
唐突な宵vs暁ですいません。
暁の狙いなどについては次話で。
それにしても藍香ほんと腹g……おっと、誰か来たようだ。
応援ありがとうございます!
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