150 / 228
本編
第136話 マヨイは挑ませる。
しおりを挟む⚫︎アイ
タクヤたちを強制ログアウトに追い込んだ後、色々とやることが出来た私は1度ログアウトするためことを真宵に伝えようとした所で自分がやらかしたことに気がついた。
「次は譲ってくれるって言ったじゃん」
「ご、ごめんなさい、我慢出来なかったのよ……」
拗ねてる真宵の目がいつもよりも5割増しで厳しい。特に今回、真宵は普段から気にしている容姿や性別について誹謗中傷を受けた。もし現実だったら間違いなく彼らは──精神病棟か一般病棟かは分からないけれど──病院のお世話になっていたはずだ。
「ま、ありがと。でも大丈夫?」
「大丈夫よ。ちょっとログアウトして手を回してくるけど4人はどうする?」
タクヤたちに関しては私が生徒会長だった頃に集めていたもの──主に人脈やOHANASIするのための情報──が使えるはずだ。問題は彼らの親と私の今の立場だけど、前者はともかく後者はなんとかなる。明日は暁たちの登校日だし早めに処理してしまいましょう。
「さっき決めた通り織姫と模擬戦するよ」
「いいんですか……?」
織姫は当初の勢いは影を潜めてしまっているけど、自分が原因で好きな人に迷惑が掛かれば当然よね。
「僕と接近戦で勝負して僕にダメージを与えたら合格ってことで」
「え、それだけですか?」
織姫は真宵が出した条件が簡単だと思っているようだけど、私たちは合格条件の厳しさに眉を顰めた。ステータス差を考慮しなくても真宵が飛行技能で高高度まで逃げれば織姫が合格出来る目はなくなる。そもそも普通にやっても無理難題であることは間違いないけれど。
「真宵、それだと織姫が可哀想よ?」
「そうだよ、兄さんは技能禁止でちょうどいいって!」
「あぁ……確かに。それじゃ僕は技能禁止にしよっか」
「え、それだと簡単になりすぎちゃうんじゃ……」
私たちが配信者をしていたことを織姫が知ったのは昨日だ。
例え好きな人の情報だとしても昨日は色々とあったし見る暇もなかったと思う。正直、技能の使用を禁止しても真宵に関する前情報なしでは難易度が高い。
さっきはクレアの暴走を止めてくれていたし、私としてはギルドに参加して欲しい。それに純粋に真宵のことが好きみたいだから恋バナとかしてみたいのよね。でも真宵のことだから1度でも不合格にしたら再試験は余程のことがなければ認めない。
「真宵、試験は延期にしてくれないかしら」
「え、なんで?」
「今のままじゃ絶対に合格できないからよ」
「だ、大丈夫です!」
「織姫、悪いことは言わないから今日はログアウトして私たちの配信を見なさい」
「え」
「そうじゃん!兄さん、織姫は兄さんが配信者をしてたの知らなかったんだよ。だから少し予習させてよ、ね?」
「先輩ってそんなに凄いの?」
「プロゲーマー相手にして勝ち越せるくらい強いって言えば分かる?」
「プロゲーマー?……え、プロ!?」
その後、暁とクレアによる私たちに関する説明会が開始された。本人の目の前で「化物」とか「怪物」とか言ってくれちゃってまぁ……あとで沙織さんに言いつけてあげようかしら。
「それじゃ私はログアウトするわね。真宵、あとよろしく」
「はぁ……分かったよ」
こうして私は一旦ログアウトした。
タクヤたちに関しては今日中に終わらせてしまいましょう。
⚫︎マヨイ
確かに僕は負けず嫌いだ。それでも僕は妹の友達との模擬戦でムキになるような分別のない人間じゃない。それなのに暁たちが余計な事を教えたせいで織姫は完全に及び腰になってしまった。藍香は織姫をギルドに入れたいみたいだし、どうしたものかね。
「先輩、えっと、模擬戦は……」
「するよ。延期はなしね」
「兄さん!」
「もし逃げるようならそれまでだよ。例え藍香が許可しても僕が認めない」
ハンデありとはいえ格上のプレイヤーと模擬戦をする機会なんて中々ない。その機会を利用して今よりも上のステージに立とうとするハングリー精神は上達するのに必要不可欠だというのが僕の持論だ。例え藍香に気に入られていても今の状況で尻込みするようなプレイヤーは僕らのギルドには要らない。
「……わかり、ました。胸をお借りします」
そして"迷い家"に参加したい織姫に断るという選択肢はない。
これが後々"人類卒業試験"と呼ばれることになる迷い家の参加試験の大元になるのだと、この時は誰も想像してはいなかった。
…………………………………
……………………………
………………………
そして僕は今、テコの組合裏にある訓練場で暁と相対している。それというのも道中、暁とクレアちゃんから『織姫と同じ内容の試験を受けさせて欲しい』と頼まれたからだ。どうやら2人とも思うところがあったらしい。
「ルールを確認するぞ。制限時間は5分、その間に僕にダメージを与えたらアカトキの勝ち。そして僕はハンデとして技能の使用禁止、アカトキも広範囲攻撃の使用禁止、いいね?」
「勝者のお願いを何でも1つ聞くってのも忘れないでよ?」
「常識的な範疇のお願いだけだぞ」
「……分かってるって」
普段なら自分の要求をストレートに伝えてくる暁にしては珍しい提案だ。いったいどんなお願いなんだか。案外「織姫の参加を認めてあげて欲しい」とかそんなところかもしれない。
「がんあってぇー!」
「お兄さん頑張って!アカちゃんも!」
暁は現時点でプレイヤー全体で10本の指に入るくらいには強いだろう。正直、これまでステータスのゴリ押しだけで倒せてきたプレイヤーたちとはステータス面だけを見ても文字通り格が違う。それに何か隠しているようだし、お手並み拝見といこう。
「何をお願いしたいのか知らないけど、飽きたら殺すから」
「……………………」
こうして予定外の形で僕と暁の決闘が始まった。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
面接官がマヨイって人選ミスじゃないかな?
唐突な宵vs暁ですいません。
暁の狙いなどについては次話で。
それにしても藍香ほんと腹g……おっと、誰か来たようだ。
41
あなたにおすすめの小説
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる