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本編
第186話 アイは拒絶した。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
クレアに謝罪もしないまま、彼女を見下して舐めプしたカナデは惨敗というか鎧袖一触にされた。モニターから対戦後の様子を観察していたけれど、カナデは現実が受け入れられないのか呆然とした様子のまま管理棟までトボトボと歩いている。
「合否は?」
クレアが模擬戦中に見せてくれた立ち回りについて話していると、不意にシキがカナデの合否について尋ねて来た。トップバッターのプロゲーマーが中学生に負けたのを見て不安になったのかな。
「実際に対戦したクレアの意見も聞いた上で判断するつもりだよ。ただ僕の期待を裏切ったまま舐めプしたのは許せないね」
クレアと2人きりになれば謝罪の一言くらいはすると思ってたんだよね。それにクレアが圧倒的に有利なルールだったとはいえ、もう少し健闘してくれると思っていた。
「舐めプ?」
「ステータスで自分を上回る相手と模擬戦をしてるのに棒立ちってのが舐めプなのさ。相手の武器が弓だと分かっているのだから開始早々に回避行動を取るだけで少しはマシになったはずさ……とはいえ後からなら何とでも言えるからね。勝敗は気にしなくていいよ」
「そ、そっか……よかった……」
「なら兄さん、どういう基準で合否を判断してるの?」
織姫の時には質問して来なかったのに何で今になってそれを聞いてくるのか疑問に思ったけど、何となく暁の意図を察した僕は素直に答えることにした。
「勝敗よりも僕が気にしているのは本人のモチベーションと伸び代だよ」
「なら覚醒2つ以上って条件は?」
「ある程度の実力が無いと一緒にダンジョンに行くこともできないからだよ」
暁は意外と負けず嫌いだから、僕や藍香に少しでも食らい付いていけるよう努力や工夫をしている。クレアもモチベーションの大元は分からないけど、戦闘や加工に対する熱の入れようはかなりのものだ。織姫に関しては僕に対する恋慕……というか憧れみたいなものが動機みたいだから少し厄介だけど、プレイヤースキルに関して言えば伸び代の塊だと思う。何も現実での面識だけを理由に迷い家への参加を認めたわけじゃない。
「ありがと」
暁はそう言ってシキの方へ視線を向けた。どうやら不安を感じているシキたちをフォローしたつもりのようだ。何やらシキは心ここに在らずといった様子だけど、ショウやルイはそれを聞いてやる気を出したように見える。
ただ暁がドヤ顔しているのは何となくムカつくのでからかってやろうと口を開こうとした瞬間、管理棟の扉が勢いよく開け放たれた。どうやらクレアが戻ってきたらしい。
「お兄さん、勝ちました!」
「見てたよ。プロゲーマー相手に凄いじゃないか」
嬉しそうに報告するクレアが何を思ったのか頭を差し出してきたので反射的に頭を撫でた。藍香からの視線が少し痛いけど、カナデが舐めプをしていたという客観的な事実はあれどクレアは実力で勝ってみせたのだからこれくらいはいいだろ?
「マヨイ」
「おつかれさま。合否の判断は実際に戦ったクレアの意見を聞いた上で僕が判断するよ」
クレアの頭を撫でる僕に声を掛けて来たのは藍香ではなくカナデだった。その顔から甘えのようなものを感じた僕は嫌悪感を滲ませて冷たく突き放した。
「あ、え……え?」
「クレアが全力で戦ったのはカナデが自分の実力を見て貰う立場だって理解しないままだったからだよ。それにさ、なんで流星群のオリオンとして散々迷惑を掛けたクレアたちに一言も謝ってないの?」
「え……だって、マヨイたちに……」
カナデは言い淀んでいるけれど、その端々から何となく言いたいことは分かった。どうやらカナデは僕や藍香と和解したから謝らなくてもいいとでも思ったらしい。
「それにしても予想以上に見栄えのある動画が撮れたよ。タイトルは……"古巣を裏切ったプロゲーマー、アマチュアJCに惨敗する"なんてどうかな?ついでにオリオンが流星群を裏切った証拠も経緯もドキュメンタリー風に演出してあげるよ」
「え…………」
流星群を裏切ったオリオンやレオと交渉したのは僕ではなく藍香だけど、僕はバックアップも兼ねてカナデが藍香に取引を持ちかけた際の動画を貰っている。
藍香は流星群のシブンギとその取り巻きを排除して満足しているけど、僕は流星群の中核メンバーであったカナデやレオにも相応の報いがあっていいと思っている。何より1度でも誰かを裏切った人は次もまた誰かを裏切る。
わだかまりを残したまま迷い家に入ることに全く負い目を感じさせないカナデに対してはいいクスリだろう。
「真宵、それくらいにしてあげたら?カナデに対してコミュニケーション能力を期待するだけ無駄よ」
「だからって迷惑掛けた相手だって認識すらしてないのはダメでしょ」
「それもそうだけど、クレアはカナデのことどう思ってるのかしら?」
「えっと、何か見下されてる感じがして嫌、です」
「なら答えは1つね。花奏、あなたを迷い家に参加させるわけにはいかないわ」
「え、な、なん……」
「この期に及んで状況が把握出来ていないのかしら。貴方が迷い家に参加することに疑問を持ってるメンバーが3人もいるよ。そんなプレイヤーをギルドに参加させるわけがないじゃない」
「こ、ごめ──」
謝罪の言葉を藍香に向けて言おうとしたカナデは僕たちの目の前から消えた。僕が思ってたた以上に藍香はカナデに対してお冠のようだ。
「あまりに見苦しいからギルドホームの管理者権限で退去して貰ったわ。シキ、目の前でゴタゴタしてごめんなさいね」
「色々あるんだね……」
カナデのことはログアウトしたら父さんに一通り事情を説明して任せてしまおう。足手まといを付ければ次のイベントで僕らに干渉してくる余裕もなくなるはずだ。
「知りたければ私と模擬戦した後に説明してあげるわ」
「う、うん……分かったよ」
「行きましょう」
藍香がかなり不機嫌だ。カナデをギルドホームに連れて来たのは僕なのだから、本当なら僕が彼女に迷い家に参加させららないことを伝えなければならなかったはすだ。
それを藍香に言わせてしまったのは良くなかったな。
あとで藍香に謝っておこう。
「当たって、砕けろ」
「ルイ……砕けちゃダメだろ」
こうして管理棟から藍香とシキが2戦目を行うために出て行った。ルールが1戦目と同じな以上は藍香の負けはないけど、覚醒を手に入れたシキがどんな風に戦うかはすごく気になる。
「あ、あの、お兄さん……そ、その……そろそろ頭を撫でるのやめてください……」
「あぁ……ごめん、ごめん」
「……事案?」
ルイ。頼むから怖いこと言わないでくれ。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
そんなわけでカナデは迷い家に参加出来ませんでした。
ダイスの結果だからね、仕方ないね。
ストーリーがほとんど進まない……
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自筆です。
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