VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重

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本編

第187話 アイは迫られる。

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⚫︎アイ

「あのカナデって子とは友達なんだよね?」

「そうよ」

「本当によかったの?」

「……よかったのよ」

 そうシキからカナデに対する扱いについて問われた私は、改めて自分の中での気持ちを確認してはっきりと肯定した。
 当初は私たちに匹敵するゲームセンスを持っているカナデを迷い家に参加させるのは半ば既定路線だった。しかし、今の迷い家には暁やクレア、織姫といった磨けば光りそうな子達がいる。それもあってカナデを迷い家に参加させる理由は薄れていた。そして何よりも問題だったのがカナデが流星群に所属していたという事実だ。
 流星群はクレアを含めた加工系プレイヤーたちに迷惑を掛けただけでなく、暁に対して──未遂ではあるものの──詐欺行為を働こうとした。本人の責任の有無はともかくクレアには謝罪をして最低限のケジメは付けて欲しいという真宵の考えには私も賛成だった。

「カナデを迷い家に入れることはもうないの?」

「どうかしらね……その時の状況によると思うわ」

「意外。そういうところはクレバーなんだね」

「もう知り合ってから3年近く経つ友達だもの。この程度の瑕疵で絶交するほど私は短慮じゃないわ。……それと話は変わるけど、模擬戦のスタート位置はシキが決めていいわよ」

「いいの?」

「お互い近接系だから離れすぎていても意味ないもの」

 事前にシキに遠距離攻撃手段がないことは聞いている。そんな彼女と50mも離れていては遠距離の攻撃手段を持っている私が有利過ぎる。
 そういえばショウも遠距離攻撃手段は持っていないようだけどクレアとはどう戦うのかしら。

「なら5mくらいでいいかな」

「分かったわ。よろしくね」

「こちらこそ。胸を借りるつもりで行くよ」



⚫︎シキ

 管理棟のモニターで1戦目を見ていたし、マヨイから具体的な広さも聞いてはいたけれど、迷い家のギルドホームにある訓練場は私が思っていた以上に広かった。
 そんな訓練場の中心で私とアイは対峙している。
 アイの武器は槍だ。柄に彫られた紋様が淡く発光していいてとても綺麗だ。店売りの武器では見たことがない。
 私の武器はテコの武器屋で買った両手剣だ。前は盾を持っていたけれど、ルイがタンクとヒーラーを兼任してくれるようになったので純粋なアタッカーに転向したのだ。


[20秒後に決闘を開始します]


 正直、私に勝ち目はない。
 ルイが教えてくれたアイのステータスは私の約20倍。
 もし攻撃がまともに当たってもダメージはほとんど期待できないような差がある。


[10秒後に決闘を開始します]


 勝敗はともかくマヨイの言っていた合格条件を満たしていると証明するくらいには善戦したい。


[決闘開始]


 試験開始早々に私はアイに向かって駆け出しながら技能を発動させる。

「巨大化!」

 巨大化は文字通り対象を巨大化するだけの技能だ。これによって約2倍の大きさになった大剣をアイに向かって振り下ろすけど、こんな短調で大振りな攻撃が当たるわけもない。アイが回避した先に縮地で回り込んで攻撃を命中させるつもりだ。


──ガシッ


 しかし、アイに槍を手放して大剣を受け止められてしまった。アイの頭上にある体力バーが僅かに削られる。基本的に第3者に触れた状態では縮地は使えない。

「受け止められるのは想定外だったのかしら?」

「~~~ッ」

 アイに大剣がビクともしない。

「あっ……」

 何とか状況を打開しようと押し付けるように力を込めるとアイはあっさり大剣を手放した。それによって私の身体は前のめり気味にバランスを崩す。
 しかし、アイは槍を手放している。
 すぐに体勢を整えれば──

「ごめんなさいね、私は素手の方が得意なのよ」

 気がつけば私の胸にアイの腕が突き刺さっていた。
 こうして私とアイの初対戦はあっさりと幕を閉じた。


…………………………………


……………………………


………………………



「受け止められるなんて思ってなかったよ……」

「回避先に回り込んで攻撃を当てるつもりだったのよね?」

「え、なんでっ!?」

 あっさりと負けてトボトボと管理棟に戻る途中、アイに愚痴をこぼすと私の狙いが最初からバレていたことを知らされた。

「如何にも何か企んでそうな雰囲気だったもの」

「え、それだけ?」

「それと大剣を受け止めればシキの意表を突けるというのもあったわ」

「え、だってダメージを受けるんだよ?」

「どんなにダメージを受けても勝てばいいのよ」

「それはそうかもしれないけど……」

 確かにそうかもしれないけれど、私はそう簡単に割り切ることは出来ない。私はタンクをしていたけれど敵の攻撃は盾で受け止めるか回避するようにしていた。わざわざ攻撃を受けに行くなんてしたことはない。

「もしかして対人戦は慣れてないのかしら?」

「慣れてないどころか初めてだよ」

「……そう。初めての対人戦で不完全ではあったにせよ相手に択を迫れたのは凄いわね」

「たく?」

「選択の択よ。さっきのシキの攻撃は私に対してカウンターを狙う・攻撃を受け止める・回避するの3択を迫っていたとも言えるわ」

「アイは"攻撃を受け止める"を選択したわけだね」

「あのタイミングでカウンターを狙うのは少し無理があったし、槍で大剣を受け止めるわけにもいかなかない。だから普通は回避するの一択になるわね。かなりいい線行ってたと思うわよ」

 上から目線だけど褒められて悪い気はしないね。

「それにしても素手の方が強いって何さ……」

「槍は練習中なのよ」

 なら最後まで槍で戦って欲しかったよ。


───────────────
お読みいただきありがとうございます。
結果は順当にアイの勝利です。
ステータス差が20倍とシキは言ってますけど筋力値は32倍ですね。もはや誤差か。
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