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本編
第202話 マヨイはすっとぼけたい。
しおりを挟む⚫︎マヨイ
「ならガウは魔術師団に事情を説明してマヨイの邸宅の修繕に当たってくれ」
「はっ!」
僕がウォルターに協力すると宣言すると、ウォルターはすぐに護衛の男性──名前は初めて聞いたがガウと言うらしい──に指示を出した。
「魔術師団?」
「あぁ……エイト領軍の誇る魔術の精鋭部隊だよ。他の領軍に所属している戦闘しか出来ない能無し魔術士共とは格が違う。戦闘以外も一流な奴らが揃ってるんだ」
ウォルターの話によると災害からの復興やインフラの整備だけでなく、生活環境の改善についての研究などもしているらしい。もっともエイトに全員が常駐しているのではなくアルテラやソプラなどに人員を分散させているそうだ。
「あれ、ならなんでソプラのワイバーンには対応出来なかったの?」
「あー、それはな……ソプラ西部の湿地帯でカースド・フロッグが異常発生しててな。スタンピードが起こる前にソプラに常駐していた魔術師団軍を派遣して討伐させていたんだ」
「タイミングが悪かったのか……」
「違う。あれは万が一に備えて戦力をソプラに残さなかった俺の判断ミスだ。死者は何とか蘇生できたが、それでも被害の全てを帳消しに出来たわけじゃない。再発防止のために領軍を再編成しているところさ」
さらっと死者を蘇生したって言ったよね。
僕の知る限りだとNPCは死んだら終わりのはすだ。その道理を捻じ曲げられるウォルターこそ公式チートってやつなんじゃないかな。
「っと……そろそろ干渉力についての話に戻るか。まずはこれに触れてくれ。正常に作動すれば色が変わるはずだ」
「人によって色が違うの?」
「触った当人と最も相性の良い色になるはずだ」
「相性の良い色?」
「その色の装備をしていると少しだけ干渉力が上がるんだよ」
「知らなかった……今後の参考にするよ」
干渉力を意図して上げる手段は限られている。少しでも干渉力が上がるのなら利用しない手はない。僕は少しだけワクワクしながら右手を抵抗球の上に置いた。
まぁ……どうせ灰色か蒼色になるんだろうけど──
「え」
「ほぅ」
「なにこれ?」
上からシーリー、ウォルター、僕の反応だ。
驚くのも仕方ないだろう。僕の右手が触れている抵抗球の色は暗く濁った極彩色に染まっていた。
「たぶんマヨイの適正は虹色なんだろう。マヨイは彩神の加護を授かっているからこうなるのも不思議じゃない。それが黒く濁っているのは何か彩神と同等の力を持った神からの影響を受けているんじゃないだろうか……シーリー、他の抵抗球を持って来てくれ」
「しかし、それではウォルターの護衛が……」
「なら俺が取ってくるからシーリーはマヨイと適当に交流していてくれ」
「……………分かりました」
すっごい嫌そうな顔してるよ。
そんなに僕と関わるのが嫌なのかな。
シーリーの返事を聞いたウォルターは「すまんな。少し待っていてくれ」と言って部屋から出て行った。
「……………………」
「……………………」
気まずいんですけど!?
ウォルターが戻ってくるまでずっとこのまま!?
「……………………」
「……………………おい」
「……何でしょうか」
「私はお前が気に入らない」
知ってるよ。むしろ今までの態度でそうだと気が付かない奴はコミュニケーション能力に問題があるよ。
でもその理由は気になるな。
「何故ですか?」
「────と────からだ」
「すいません、声が小さくて聞こえませんでした」
「──さまと────だからだ」
「もう少し大きな声で」
「だから!叔父様と仲が良さそうだからだと言っている!」
「…………待って。え、どいうこと?」
シーリーの言う叔父様は間違いなくウォルターのことだ。そしてシーリーが僕を気に入らないのは僕と叔父様=ウォルターの仲が良さそうだかららしい。意味は分かるけど文脈としては全く理解できない。
「叔父様は酸いも甘いも噛み分けた豊富な人生経験からくる先見の明と実力でもってエイト領を国内有数の経済圏にまで発展させた偉大な方だ。敵対派閥筆頭格であったアイン家の前当主のクズは叔父様と敵対したという理由だけで同じ派閥の者から暗殺され──「それ、僕が知っていいやつですか?」──え、いや、あ、どうしよう!?」
どうしようは僕のセリフだ。
急にポンコツになるなよ……
「ひ、秘密! 秘密にしろ!」
「何のことでしょう」
ここは聞かなかったフリが一番だ。
そう考えた僕は暗に「何も聞きませんでしたよ」と伝えるつもりですっとぼけた。
「だからアイン家の前の当主夫妻が叔父様と敵対することを恐れた同じ派閥の貴族たちに見限られて、娘を人質に取られたアイン家の分家当主に毒殺されたことよ!」
「ダメだ、この人、早くなんとかしないと……」
なんで更に詳細を説明しちゃうかな。
というか何でそんなに詳しいんだ?
「ダメって何よ!こう見えて私も神の使徒なのよ!?」
「あー、はい。それはいいから少し黙っててくれない?」
領主であるウォルターは大賢者だ。その護衛が並みであるわけがない。シーリーが覚醒を持っていることはもちろん、それが神の使徒──もしくは神の使徒に匹敵する何か──なのは予想がついていた。
「こうなったら実力行使よ。貴方、私と決闘しなさい!」
「秘密にするから、秘密にするから」
「……秘密にする事を条件に如何わしいことを要求するつもりでしょ!?」
「なんでそうなるの!?」
お願いだウォルター。早く戻って来てくれ。
そう思っているとシーリーが癇癪を起こしたかのように手袋を投げつけて来た。そして僕は飛んできた手袋を反射的に受け取った。いや、受け取ってしまった。
「受け取ったわね」
「え、あ、うん……でも子どもの癇癪みたいに物を投げるのはどうかと思うよ?」
「う、うるさい! 投げつけられた手袋を受け取るということは決闘を受けるってことよ! 覚悟しなさい!!」
そんな風習があるのか……
これ知らなかったで済まされないかな?
ウォルターと今の関係を維持したい僕としては彼の姪を殺すのは躊躇われるんだよね。本当にどうしよう。
───────────────
お読みいただきありがとうございます。
シーリーちゃん(15)
テコで代官をしていた父を亡くした後、叔父様に元に預けられ才能を開花させた英才。剣士としては既に領軍でも片手の指に入る実力を持ち、魔術士としても領軍内の若手では頭1つ抜けた実力を持っている。剣の師匠は父、魔術の師匠は叔父様。どちらの師匠も実力主義であるためシーリーもその影響を色濃く受けている。
領軍内での総合的な評価は「稀に大ポカやらかす点と何でも決闘で解決しようとする癖さえ除けば王国最優の騎士」となっていまふ。
欠点が致命的な気がする?気のせいじゃないよ。
ウォルター・エイト
ウォルターは自分の責任で亡くなった人は気軽に死者蘇生しちゃう倫理観の持ち主です。エイト領の兵士は蘇生される前提で危険な訓練を受けています。厄のようなモンスターは基本的に軍が討伐してしまうのでエイト領のモンスターは総じて弱いという設定です。マヨイが介入しなければ厄は軍に討伐されていました(事前の設定通り)
エイト領に比べて練度の低い兵ばかりな他の領地は危険なモンスターが討伐されないまま残っているということです。遠くに行くほどモンスターが強くなる理由づけとして今(12/18/00:10)思いつきました。
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