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本編

第213話 マヨイはショックを受ける。

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⚫︎マヨイ

「そろそろ話を卵に戻しましょうか」

 藍香がそう告げた途端、空気が変わったのが分かった。
 シキたち新規参入組は高みの見物とばかりにニヤニヤしているけれど、なんていうか恋バナを執拗に聞いてきた中学時代の女子クラスメイトを彷彿とさせる圧力を感じる。

「マヨイ、子ども、早く作って」

「言い方ぁ!?」

 ルイの場合は普段から言葉足りずなせいもあって、別の意味でも捉えられそうなセリフになっている。
 ほら、シキなんて顔が真っ赤になってるじゃないか。

「真宵、諦めが肝心よ。どう分配するかは決まってるのだから、あとは真宵と私たちで魔力を充填させればいいだけじゃない」

「そうだけどさ、アカトキが変なこと言い出すから……」

「え、私のせい!?」

「「「「うん」」」」

「満場一致!?」

「アカトキが変なことを言い出さなければ僕も変に意識することはなかったし、そもそもお前は実の兄と子どもを作りたいのか?」

 暁に八つ当たりの質問を飛ばすと、暁は自分の発言を反芻はんすうしたのか顔を真っ赤にした。やっぱり無意識の発言だったらしい。

「え、いや、それはそれ、これはこれじゃん?」

「先輩! 私は作りたいです!」

「織姫は少し自重しなさい」

「え」

「え」

「私もお兄さんの赤ちゃんが欲しいです!」

「「「え」」」

「───中学生組。ちょっとこっちに来なさい、別室で話をするわよ」

 話が進まず、暴走し始めた中学生に対して藍香が遂にキレた。
 冷や水でも掛けられたかのように騒ぐのを止めた3人を見ることなく、藍香が部屋を出て行くと3人もそれに続いて出て行った。暁だけは死刑台に送られる死刑囚のような雰囲気を出していたけど自業自得だ。存分に説教されてこい。

「あっちゃぁ……からかいすぎたか」

「……もしかして、アイ、怒った?」

「マヨイ、ごめんね」

「いいよ、中学生組のブレーキが壊れてたのが悪い」

 というか半分以上は暁のせいだ。
 あとは自分の欲求を隠せてない織姫とクレアが悪い。

「まさに、ハーレム、だった」
 
「クレアの場合は恋愛感情って感じじゃなさそうだったけどね。あの子は単にテイムモンスターが欲しいだけなんじゃないかな?」

 クレアはククルのことを気に入ってるから、自分のテイムモンスターが早く欲しいだけだろう。脳筋と言っても過言ではないくらいにステータスが偏っているせいで魔力の最大値が低い、つまり1人で孵化させるには時間がかかるというのもあるはずだ。

「……鈍感」

「思い切り恋愛感情だろ、あれ」

「親戚のお兄さんに初恋したって感じじゃない?」

「家族愛と友情と異性愛で1:1:5くらいだと思う」

「無自覚だよな」

 やっぱり女子は恋バナが好きなのか、僕が会話に入る間もないくらいシキたちの(他人の)恋バナに夢中になっていった。
 はっきり言おう。めちゃくちゃ気まずい。
 もうここはククルを撫で回して癒されるしかない。

パパみゃぁ!」

「…………」

「パパ?」

「いや、なんでもないよ」

 そう。なんでもない、なんでもないんだ。
 身体が全体的にひと回り大きくなっていたから驚いただけなんだよ。決して副音声で聴こえてくる声が以前よりも女の子っぽくなったとか、ことに驚いているわけじゃない。僕は疲れているんだ。

「パパのなでなできもちいい!」

「…………」

 無心でククルを撫でる。
 現実逃避だってのは分かっているけど、今は何も考えたくない。


名前:ククル
種族:原竜
性別:女
分類:仔竜
位階:99
説明:純白の毛に覆われた竜の幼体。
   幼体といえど竜は竜である。
   環境や経験による影響を強く受けて成長する。
   ⚫︎テイマーに対する好感度が上限に達した。
   ⚫︎精霊の素材を体内に取り込んだ。
   ⚫︎格上との戦闘経験を積んだ。
   ⚫︎被好感度を獲得した。
   ⚫︎獲得魔力1000万ポイント
状態:進化待機状態


 『⚫︎』の横にあるのが達成した実績なんだろう。
 タップすると更に詳しい情報が確認できるようだ。


実績:テイマーに対する好感度が上限に達した
影響:性別の変化・基礎ステータスの上昇
   ※性別の変化は不可逆

実績:精霊の素材を体内に取り込んだ
影響:特殊な進化ルートのアンロック

実績:格上との戦闘経験を積んだ
影響:基礎ステータスの上昇

実績:被好感度を獲得した
影響:人化技能が習得可能になる

実績:獲得魔力1000ポイント
影響:成長速度増加(小)
   基礎ステータスの上昇


 ククルが進化できるようになっていたことにも驚いたけれど、それよりもククルの性別が変わっていることの方が僕には衝撃的だった。ハーレムギルドと揶揄されても「ククルもオスだしハーレムじゃない」と内心で反論していたのに、もうそれが通用しないのだ。追撃トドメとばかりに『性別の変化は不可逆』という注釈まで付いている。

「ルイ。テイムモンスターの進化ってどうすればいいの?」

「ククル?」

「うん、進化待機状態になってるんだよね」

「メニューからテイムモンスターの一覧を開いて許可するだけ。進化先はテイムモンスターが決めるから選べない」

「進化先は選べないんだ?」

「うん」

「ならアイたちが戻って来たら進化させようかな」

 見てないところでククルを進化させたら絶対に藍香とクレアは拗ねるだろうからね。
 それにしても藍香は何で部屋の外で話してるんだ?

───────────────
お読みいただきありがとうございます。
更新が遅れて申し訳ありません。

テイムモンスター(ククル)の好感度稼ぎに関して
・隙あらば撫で回す
・ひたすら撫で回す
・わがままは大抵叶える
・揺り籠のプレゼント
などが影響しています。ちなみに体内に取り込んだ精霊の素材は真宵の髪の毛です。頭に常駐している間に誤って口の中に入ってしまいました(ご都合主義万歳)

体調不良につき明日の更新はお休みします。
申し訳ありません。
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