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お世話
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しおりを挟む蒼にもたれ掛かったまま、安心したら段々と重くなってきた瞼を閉じる。
呼吸が、できる。
ゆっくりと息を吐いた。
「…おれは蒼と友達でいたい」
「………うん」
ぽつりとそう零せば、少し間をおいて蒼の声が返ってくる。
その返答に多少安堵して、おれは震える喉をおさえるように息を吸い、言葉を伝えるために口を開いた。
自分の、今の気持ちを。
本心を。
拒まれたらと思うと、怖くて。
もう全部、今日のことすらなかったことにしてしまいたいけど。
今までのように、忘れたふりをしたいけど。
…それだと、もしこれから蒼と一緒にいるなら、何度も心の中で引っかかってしまうから。
今、言えることを言って、それから戻れるなら元の関係に戻りたい。
”こういうこと”を、しない関係に、戻りたい。
蒼に無理矢理されるのが、嫌だった。すごく、嫌だった。
でも、それでも。
「こんなことで、友達をやめたりしたくない」
「…うん」
少し声のトーンが下がった蒼に顔を向ける。
いつか見た迷子の子どものように目を伏せ、苦しそうな顔をしていた。
その頬に手を伸ばす。
彼の頬に手で触れて、その額に自分のそれをくっつける。
額同士が触れあっているから、顔がすごく近くなった。
……でも、どうしても、そうしたい気分になって。
「蒼、おれは…」
一瞬言葉を止めて。
おれの望みを、彼に告げる。
それが、彼の望むものではなくても。
たとえ彼の望みとは異なるものであったとしても。
……それでも、伝えたいと思った。
息を吸う。
「…――おれは、……ずっと蒼と友達でいたいよ」
「……っ、」
だから、もう二度と、こんなことしないでほしい。
祈るように瞼を閉じてそう伝えれば。
蒼は、息を呑んで。
その唾を飲みこむ音だけが、大きく耳にとどく。
「……」
額を離して、蒼を見る。
彼は酷く寂しげで、悲しげな表情を浮かべていた。
「……うん」
ゆっくりと頷いて呟かれるその声は。
小さくて、いつもより力がなくて。
まるで震えているようにも聞こえた。
泣きそうな顔をした蒼に、抱きしめられる。
「それで、まーくんが俺から離れないでいてくれるなら」
その言葉に、ほっと息を吐いて
おれたちは、改めて”友達”になった。
――――――――
ずっと一緒にいたいから、友達でいよう。
それは、きっとずっとおれが望んでいたヤクソク。
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