手足を鎖で縛られる

和泉奏

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(高校1年生)【記憶】

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***

それから、蒼とは何事もなかったように一緒にいた。

毎日勉強もして、毎日一緒に登校する。
楽しい時には一緒に笑って、昼ご飯も一緒に食べる。
ちょっと気持ちは変わってしまったように思えるけど、前の二人に戻ったような感じでそれだけで嬉しかった。



(やっぱり、)

(本当に、あの時に仲が悪くならなくて良かった)



……そして、月日は流れて、俺達は高校1年生になった。


蒼は成績も常に学年主席で、先生にも強く勧められてた学校があったのに、何故か俺と一緒の高校を選んだ。

別に高校のレベルが低いわけではない。むしろレベル的には中の上でいい方だと自分でも思う。
でも、上の上レベルの高校だって行けたはずの蒼と今、電車に乗っていることがなんか不思議だ。

でも、蒼は嫌々俺に合わせたわけじゃなくて、本当にこの学校に来たかったみたいだから、彼がそれでいいというならそれについてもう何も言うことはできなかった。

高校は隣の市だから、駅を乗り継いで毎日早く起きて通う。

…というか、家まで蒼が迎えに来てくれるので、絶対寝坊しない。
…蒼とは別のクラスになってしまったけど、それでも放課後には会いに行ったり、一緒に昼ご飯を食べたりして、今までとそんなに変化はなかった。


(…少し、…寂しい、けど)


それでも、少し変わったことといえば

俺に新しい友達が出来たことだった。

中学では、蒼と依人とずっと一緒にいたからその他の友達はいなかったといっても等しい。

…ちゃんと、二人以外に友達を作ろうと頑張った時期もあったけど、何故か皆離れていくから。
辛くなって、もう二人がいればいいやと友達をつくるのをやめたのだった。


そして高校でできた新しい友達の名前は、「青木俊介」という。

彼は気さくで、盛り上げるキャラで皆に人気があった。

だけど、一緒に過ごすようになって少し経った頃、俊介はよく俺と蒼の仲は異常だと言っていた。おかしい。変だ、って。

そういわれても、どこがどうおかしいのか俺には全く分からなくて、「そうかな…?」と困ったように笑えば、彼は「そうだって」と力強く頷かれてしまった。…一体、何がおかしいんだ。別に普通だと思うのに。


でも、確かに今蒼と俊介以外の友達が俺にいないのは本当で…、

「そんなんで、もし一之瀬がいなくなったときどうするんだよ」と肩を掴まれてぶんぶん揺さぶられた。
「…ど、どうしよう」とその熱意に押されるように戸惑って返答すると、「俺が真冬を一人でも自立できるようにしてやる」と意気込んで、彼は試行錯誤するようになった。



例えば俺が彼女を作るとか。
合コンに行くとか。
盛り上げ役になろうと努力してみるとか。

そこまでして俺の社交性のなさを改善しようと熱心に協力してくれるのは俊介が初めてで、新鮮で。
俊介のおかげでクラスの人とも仲良くなることができて、楽しいと言えば楽しい毎日だった。

…ただ一つ、蒼の機嫌がどんどん悪くなることを除いては。



「…蒼ー」

「……」

「あおいー」


帰り道、電車の中で手すりにつかまりながら蒼をのぞき込む。

また背の高くなった彼は、歳以上に大人な落ち着きがあり、魅力が増した。

……神々しさというか、気品が更に増し、冷酷な表情は色気さえ滲ませているように感じる。

目が合えば惚れられ、姿を見かけられれば心を奪われ、その格別に整いすぎている容姿によってストーカーが何人も生まれた。
声なんてかけられた日には皆陶酔したように蒼以外のことを考えられなくなる。

…大げさかもしれないけど、それが冗談では済まないと噂になるほどだ。

並外れた美少年から正しく絶世の美青年へと成長した蒼が放っておかれるはずもない。

女性だけでなく、男性も同様の反応を示す場面を数えきれない人数見てきた。なのに、本人はそういうことに全く関心がないみたいで、いつか事件に巻き込まれるんじゃないかと心配になる。

中学の時はあからさまに蒼に態度で示す女子が多かったけど、高校になってからは陰から異常なほどの好意を抱かれている。
こうやって一緒に電車に乗ってるだけでも、そこらへんから女子の熱視線を感じるから怖い。


「なー、蒼ってば」


ずっと無視ばっかりで酷い。

これだけ傍にいれば俺も少しは見られることに慣れてきた。
それでも結構怖いけど、そんなことを言っていては一緒にいられない。

流石に我慢できずにむっと顔を歪めてその腕を掴むと、蒼がふ、と笑みを零す。
前はほとんど一緒だった背が、今は見上げないといけない。

…俺だって、まだまだこれから身長が伸びるはずだ、けど
これでも平均くらいはあるのに、蒼に敵わないから悔しい。


「ごめん。まーくんが怒るのが楽しくて、意地悪した」


そう蕩けるような笑みを零す蒼に、またむっとしてぷいと顔を背けると「ごめん」と謝ってくれる。

…けど、

その声が笑いを堪えているように震えていて、余計に機嫌を損ねた。
よしよしと身長が伸びたせいで殊更俺を子ども扱いするようになった蒼に、眉を寄せながら「今日、また友達ができたんだ」と笑うと、「…そっか」と何故かちょっと寂しそうに頷いて、でも頭を撫でてくれる。

1年以上ずっと一緒にいたからわかる。
蒼がこうやって俺を揶揄う時は、決まって俺に怒ってる時が多い。


「なんで今日も怒ってるの?」

「…怒ってないよ」


視線を逸らして呟かれる言葉に、息を吐いた。

…やっぱり、怒ってるじゃないか。


「…まぁ、いいけど…」


蒼がこうやって理由を言わないときは絶対に何を言っても教えてくれないから諦めた。


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