手足を鎖で縛られる

和泉奏

文字の大きさ
325 / 842
捕らわれた籠の鳥

3

しおりを挟む




次に目を開いたとき。
最初に見えたものは、視界一面に広がる紺色だった。


「おはよう、まーくん」


抱きしめられている。
誰にそうされているかすぐにわからなかったせいで、怖くて、一瞬心臓ドクンと嫌な音をたてた気がした。
でも、身体に伝わる体温から、その紺色のモノが浴衣だと分かった。
声で蒼だと気づいて、恐怖は消える。


…でも、

もう何度目だろう。このやりとり。
起きるたびに繰り返される蒼との挨拶。
それから相変わらずうまく動かない自分の身体。

……まるで自分が人形にでもなったような気分だった。

いつも一緒に寝てくれてた時にしてたように、その身体を抱きしめ返すことも。
嫌だと突き放すこともできない。

あの日から、蒼は何も教えてくれなかった。
少し動けるようになったと思うたびに、何かを考えようとするたびに。
あの甘い匂いが漂ってきて、眠りに誘われてしまう。


「…ごめん」


優しく抱きしめられたまま、ぽつりと申し訳なさそうに頭上で呟かれる声音。
何を謝っているのか、今の俺にはわからない。


「もう少しだけ、そのままでいて。もうちょっとだから。」


何がもうちょっと…?

意味の分からない言葉に、ぼんやりとそんなことを心の中で問いながら、頭を撫でられてなすがままになっていた。
はだけた浴衣の隙間から、彼の透き通るような綺麗な白い肌がのぞく。


「もう少しで、全部終わるから」


何が、終わる…?

問う言葉もないまま、背中に回った腕に強く抱きしめられる。
いっそどうにもできないなら、と今度は自分で瞼をおろした。

――――

彼のその言葉の意味がわかったのは、次の目覚め。

しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

幼馴染みが屈折している

サトー
BL
「どの女もみんな最低だったよ。俺がちょっと優しくしただけで、全員簡単に俺なんかと寝てさ」 大学生の早川 ルイは、幼馴染みのヒカルに何をやっても勝てないといつも劣等感を感じていた。 勉強やスポーツはもちろんヒカルの方ができる、合コンはヒカルのオマケで呼ばれるし、好みの女子がいても皆ヒカルの方にとられてしまう。 コンプレックスを拗らせる日々だったが、ある日ヒカルの恋愛事情に口を挟んだことから急速に二人の関係は変化していく。 ※レオとルイが結ばれるIFエピソードについては「IF ROOT」という作品で独立させました。今後レオとのエピソードはそちらに投稿します。 ※この作品はムーンライトノベルズにも投稿しています。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

処理中です...