手足を鎖で縛られる

和泉奏

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蒼のいない朝

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大切に思っている双子の兄弟に「誰?」なんて言われたら、どれだけ辛いだろう。

想像するだけで耐えられない。
蒼のあの冷たい目で、声で、そんなことを言われたら、きっと…気がくるってしまう。

…どうして、蒼は跡を継ごうと思ってるんだろう。

(もしかして、どうやっても逃げられない状況にさせられてる…?)

不意に思いついた思考に、ぶるっと寒気で身体が震えた。

ふいに彼方さんが悲しげな表情を和らげて緩く微笑んだ。


「…だから、真冬くんを遠ざけるためには本家から一番遠い場所に住んでて、監視の目もない俺のいる場所が一番マシだったんだと思う」

「遠ざける…、」


呟いてから、ハッとする。

蒼の父からの”教育”っていうのが、その小学四年生のときに終えたとは限らない。

もしかして、まだそれが続いている…なんてことがあるのか。


「…(だったら、)」


…だとしたら、理由はわからないけど、蒼が俺を今、その父から遠ざけたいと思ってるなら。

……そもそもどうして俺を屋敷に連れて行ったりしたんだろう。

どうして、俺を閉じ込めようとしたんだろう。

…時々、蒼の様子がおかしかったのもそれが何か関係してるのかな。

今思い出してみても、蒼は滅多に服を脱がなかった。

俺と…その、スるときでも、浴衣はいつも着たままのことが多かったし、もしかして…それが原因だったりしたのだろうか。

…今更ながら、俺は蒼のことを何も見ていなかったんだと気づいて居たたまれなくなる。

自分のことばっかり考えてた、俺。

様子がおかしいとき、いくら俺が聞いても蒼はその理由を教えてくれなくて、明らかに風邪とは違う感じで苦しんでいて、教えてくれないならと俺は途中から聞くことを諦めてしまった。


「…蒼は、もう俺と会う気はないんでしょうか…」


なんで、もっとちゃんと聞いておかなかったんだろう。

無理にでも聞いておけば、良かった。

俺にできることなんてないかもしれないけど、教えて欲しかった。
ぐ、と唇をかみしめて俯く俺に、彼方さんはゆるゆると首を横に振った。


「ごめんね。蒼ってば何も教えてくれずに、ただ俺に伝言と真冬くんを渡してすぐにいなくなっちゃったんだ」

「…そう、ですか」


苦々しく微笑む彼方さんに、蒼らしいなと少し笑ってしまった。

蒼が誰かに何かを頼んだりする姿を今まで見たことがない。

こうして今実際に色々してくれている状況を考えると、やっぱり彼方さんは信頼されているんだろう。



「…今も、…蒼のいる場所は、酷い場所だから」

「ひどい、場所?」


不意に声のトーンが低くなった彼方さんに、首を傾げると彼は頷いた。


「うん。逃げても逃げても、底なし沼みたいに、逃がすものを許さない。でも、不必要になったら容赦なく排除する。厄介な人ばっかりなんだよ、蒼の周りは」


暗い表情で、冗談っぽくそう言って、「俺の話はこんな感じかな」と空気を変えるように明るく笑った彼方さんに、緊張していた身体から力を抜く。

すごい話ばっかりでまだ思考が追いついてないけど、蒼のことをたくさん知った。
それに、まだまだわからないこともたくさんある。


(…蒼が、教えてくれたら良かったのに)


そんなに、俺が信用できなかったのか。

そんなに、俺じゃ頼りなかったのか。

眉を寄せながら…確かに頼りないよなぁと思う。

情けない。

……時々浮かべる寂しげな表情も、暗く悲しい瞳も、胸が鷲掴まれるような泣きそうな顔も、今日聞いたことが原因になっているのかな。

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