356 / 842
蒼のいない朝
19
しおりを挟む「あ、う…」
反射的に何か答えないとと思ったら変な声が出た。
少しだけ、迷う。
一応今日初めて会った人だし…ここまでしてもらうのもなんか変だし…でも多分一人で寝るより彼方さんと一緒に寝た方が安心できるんだろうし、だけど、でも…なんてぐるぐると思考の渦に飲み込まれる。
でも結局。
「あ、りがとう、ございます…」
たどたどしくお礼を言いながら、のそのそと彼方さんの方の布団に入らせてもらう。
それと同時に、「あ、そうだ」と声を上げて起き上がる様子を見上げて、彼は棚の上に置いてあったものを俺にポイと投げた。
「これあげる。絶対真冬くんに似合う」
「…?」
「…俺がずっと持ってても仕方ないし、どうしようかと思って悩んでたんだよね。丁度良かった」
「…こ、れ…って」
受け取った物をじっと見る。
顔の部分をぐーっと両方に引っ張ると変な形になった。
70センチくらいある、ピンクの、やわらかい
「うさぎのぬいぐるみ…」
でも、なんかところどころ布が切れて、ぼろぼろになってる…。
結構昔のものなのかな…?
ぐにぐにと顔を左右に引っ張って、そのへんてこな顔と見つめ合う。
なんか、解脱したような、何かから解き放たれたような顔のうさぎ。
見てて癒される。
可愛い。確かに可愛い。
可愛い…んだ、けど、
「…明らかに小さい子用ですよね」
「うん」
「俺、高校2年生なんですけど…」
学校行ってたら、だけど。
高校2年生にぬいぐるみって。
しかも男子高校生にぬいぐるみってどうなんだ。
ちょっと不機嫌そうに眉を寄せて、隣に横たわる彼方さんを困惑して見上げれば、彼はまた俺にそのぬいぐるみを押し付けてきた。
「ほら、ぎゅってしてみて」
「…?」
「うん、可愛い。似合ってる」
言われるままに首を傾げながら、とりあえずぬいぐるみを抱きしめる。
そうすれば、すごく嬉しそうに微笑んで、そんなことを言う彼方さんに一瞬硬直した。
(な…っ、なな…っ)
さらりとなんかすごく居たたまれない言葉を吐かれて、ギョッとする。
「い、いきなりなんですか…っ、」
「あはは、ごめんね。蒼が君を可愛がってた気持ちがすごい良く分かるなって思って。うん、可愛い」
「……ぐ、」
なんだこの爽やかな言い方は。
反論しても彼方さんが相手だとすぐにやりこめられそうで、余計になんか恥ずかしくなりそうで。
やるせない気持ちを抱きながらも、何も言わないことにした。
(…確かに、ぬいぐるみがいるだけでも結構違うものなんだな)
何もないよりはぬいぐるみがあったほうが、安心できるかもしれない。
「…あのさ、真冬くん」
「…はい…?」
うさぎを彼方さんとの間に挟みながら、眠ろうと目を閉じていると聞こえた声。
「蒼は…夜、ちゃんと眠れてた…?」
目を開ければ、隣に寝ている彼方さんが窓の外を見上げていた。
暗い空に浮かぶ沢山の星。
「…悪夢を見たと言って、夜に何度か起きてたことはありました…けど…でも大体は、ちゃんと眠れてたと、思います…」
どうしてそんなことを聞くのかと不思議に思っていると、彼方さんは窓の外を見上げたまま、ほっとしたように息を吐いた。
「…そっか。君の傍では安心して眠れてたんだね。…よかった」
「どういうことですか…?」
不意にこっちを向いた彼方さんと視線が合ってどきりとする。
ゆっくりと頭を撫でられた。
「…君と蒼は、とてもよく似てる気がする…」
「…似てる?」
「なんだろう…?雰囲気、かな」
「……ふんいき…似てますか?」
考えてみても、蒼と似てるって思ったことないし、やっぱり自分ではよくわからない。
28
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
幼馴染みが屈折している
サトー
BL
「どの女もみんな最低だったよ。俺がちょっと優しくしただけで、全員簡単に俺なんかと寝てさ」
大学生の早川 ルイは、幼馴染みのヒカルに何をやっても勝てないといつも劣等感を感じていた。
勉強やスポーツはもちろんヒカルの方ができる、合コンはヒカルのオマケで呼ばれるし、好みの女子がいても皆ヒカルの方にとられてしまう。
コンプレックスを拗らせる日々だったが、ある日ヒカルの恋愛事情に口を挟んだことから急速に二人の関係は変化していく。
※レオとルイが結ばれるIFエピソードについては「IF ROOT」という作品で独立させました。今後レオとのエピソードはそちらに投稿します。
※この作品はムーンライトノベルズにも投稿しています。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる