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蒼のいない朝
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しおりを挟む…というか、俺ってどんな雰囲気に思われてるんだろう…。
「うん。なんだか、見てるこっちが助けなきゃって気分にさせられる」
「……、」
寂しそうに微笑む彼方さんは、俺に蒼の影を重ねているから、
似てると思ってるから、こんなに優しくしてくれるのだろうか。
「そのぬいぐるみもね、小さいころ蒼が寝るときに使ってたものなんだ」
「え…!そうなんですか」
「うん。蒼が”教育”を受けるって決まったとき、蒼がそれまで使ってたものは全部父に没収されちゃったみたいで、ゴミ箱に捨てられたぬいぐるみを部下の人たちが、蒼と俺が大切にしてたぬいぐるみって知ってて…だから俺のとこに持ってきてくれたんだ」
だからこんなにぼろぼろなのか。
多少縫い合わした後もあるけど、それでもぼろぼろで古い感じがするのは、結構昔のものだからだったのか。
蒼が、これを…大事にして、使ってた。
そう思うと、とても大切なものに思えてきて、感情のままにぎゅっと強くぬいぐるみを抱きしめる。
「蒼は、今の真冬くんみたいに真っ暗な場所で寝るのを怖がってた。夜になると、震えてベッドの中に入るのも嫌がってたくらいなんだ」
「…………」
「…電気を消した日には、本人もどうしたらいいかわからないくらい震えが止まらなくなってて…、そのせいで何日も眠れないこともあったみたいだったから、そういう時にそのうさぎを抱きしめてたんだ。そうすることで安心できたみたいだった」
覚えてないけど、俺だって多分夜が怖くなったのには理由があって。
…蒼にも”何か”あったから、そんな風に夜に眠ることができなくなったのかな。
今思えば、確かに蒼が夜にうなされてる日は特に汗びっしょりになってて、何かを怖がっているようだった。
蒼は自分の感情を隠すのもうまいから、普段は全然そんな様子なかったけど。
そんなにたくさん嫌な思い出のある場所にずっといたのに、あの時だって怖くなかったわけがないんだ。
「”教育”の後、夜に蒼の部屋の前を通ったとき、一回も電気が消えてたのを見たことがない。ちゃんと眠ってたのかも怪しかった。確かに、布団を被って横になるなんて行為、すごく無防備だから、…そんな格好で安心して寝られるわけないんだけどね」
「………」
「だから、君が蒼の傍にいてくれてよかった。ありがとう」
感謝するように、微笑んでお礼を言ってくる彼方さんから、目をそらす。
そんな風に言われてしまうと、すごい申し訳なくなる。
…俺は、蒼のために何もできなかった。
「…俺は、何も…それに蒼は、…俺といた時だって、眠れないこともあったみたいだし…」
「でも、蒼が自分から傍にいたいと思って、監禁までしちゃう人なんか見たことないよ。余程、真冬くんと一緒にいたくて、君の傍が一番安心できたんじゃないかな」
「、ぅ…」
監禁。
なんか他の人からその言葉を聞くと変な感じだな。
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