手足を鎖で縛られる

和泉奏

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蒼のいない朝

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でも、そうさらっと言われると何も言えなくなる。
確かに、俺の傍にいると安心するって蒼に言われたことが何度かあった。

…でも、俺なんかと一緒にいて安心するわけないって、あの時は思ってたけど。


「でも…懐かしいな。離れる前は、蒼ともよくこうして一緒に寝てた」

「わ、」


背中に回ってきた腕に引き寄せられる。
抱きしめられて、うさぎのぬいぐるみが俺と彼方さんの間でつぶれた。
頭の上に彼方さんの顎がのせられて、優しく抱きしめられる。



「こうしてると、本当に真冬くんと兄弟になったみたいで嬉しい」



本当に心からそう思っているようにふわりと笑う彼方さんに、そんな風に言ってもらえることが嬉しすぎて頬が緩む。


「…あ、嫌だったらごめんね」

「嫌なわけ、ないです」


ハッとして慌てたようにそう言って離れようとする彼方さんに首を横に振って、背中に腕を回す。
間でもっとうさぎぬいぐるみがつぶれた。


ごめん、うさぎ。


彼方さんを抱きしめれば、その身体から鼓動が伝わってくる。

蒼と、一緒。

生きてる人の体温はあったかいんだ。


「…俺も、彼方さんが家族だったらすごく幸せだっただろうな…」


あたたかい。
体温だけじゃなくて、なんだか、雰囲気があたたかい。

…本当に、彼方さんみたいな人がお兄さんだったらよかったのに。


「…っ、」

「彼方さん…?」


小さくその身体から振動が伝わってきて、顔を上げる。


「…、」


何故かまた彼方さんがすごくおかしそうに口元をおさえて笑っていた。


「…今度はなんなんですか」


むっと睨みあげれば、彼は小さい子をあやすみたいに俺の頭をよしよしと撫でた。


「いや、俺が真冬くんのこと好きだったら、今のはかなりの殺し文句だったなーって思って。もしかして真冬くんって、天性の小悪魔だったりする?それとも、本当にわかってなくて言ってるの?」

「へ?」

「…っ、はは…っ、蒼が苦労するのもわかるなぁ。ちょっと…いや結構…面白いかも」


お腹を押さえて爆笑する彼方さんを混乱して見つめる。

なんか変なこと言ったか、俺…?

さすがに彼方さんの笑い上戸にも慣れてきて、その笑っている様子を茫然と見ていると次第に眠くなってきた。
まだ少し笑いの余韻を残している彼方さんが、うつらうつらと瞼を閉じる俺を見て笑って。
もう一度抱きしめて囁いた。


「もうそろそろ寝よっか」

「…はい」

「今日は色々あって、疲れたよね。お疲れさま。…おやすみ」

「……あの、かなたさん…」

「…何?」

「…やっぱり、なんでもないです…。おやすみ、なさい…」

「…うん…おやすみ」


その優しい子守唄のような声音を聞いて、ゆっくりと眠りに落ちた。  








――――――――――――――――

………

……………


隣で眠る真冬くんに、…懐かしさにも似た感情を味わう。


「……覚えてない、か」


小さく呟きながら薄く微笑み、静かに眠る彼の頭を抱き寄せた。


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