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しおりを挟む…むかつく。
こんなにくーくんの一言一言で泣きそうになって、胸が苦しくなって、なのに、そんなおれをくーくんはいつも子ども扱いして可愛いっていう。
…おとこだから、可愛いって言われても嬉しくないのに。…それなのにくーくんに言われると、反射的に頬が熱くなってしまうのは何故だ。い、いや、こんなのよくない。
ぐじぐじと袖で涙を拭って、精一杯睨み付けた。
「…そ、そうやって、いつもいつも、うそばっか…っ、」
「可愛いよ。…だって、俺の代わりに服を抱き締めてオナニーしちゃうくらいだし」
「…っ、!!!!!!な、なんで、知って…っ、」
「ほんとのことをいうと、まーくんの様子はずっと見えてたんだ。この部屋隠しカメラあるから。」
「?!?!?!?!?」
脳が、理解レベルを超えて爆発した。
泣いたのと、ただ、カメラなんて予想してなかったものがついてたってことを知らなかったってこともあるけど、頭が、一瞬停止状態になった。
…だけど、やばいことだけはわかる。ぶくぶくと今にでも泡を吐きそうなくらい焦りながら、思い出してみる。普通に日常生活を送っていたならまだしも、何やってたっけ…、おれ、気絶する前、こことトイレで何してたっけ?
そうだ。今、さっき、聞いて、
(”くーくん…っ”って呼んで、オナニー、して、た…)
…ばれ、てた。見られてた…?
全身から血の気が引いた。
…いや、あれは夢かもしれない。夢だと思いたい。
知っているはずなのに、記憶がぐるぐる回転して粘着力をもって記憶障害を起こそうと躍起になっている。最早パニックになりすぎて自分でも何を考えてるのか理解できてない。
いや、でも、
「さ、流石にトイレにはカメラない、よ、ね…?」
「……」
「な、ななんで無言?!!しかも目逸らすんじゃない!!」
動揺しすぎで顔が熱いやら冷たいやらでわけがわからない。
どうなんだ、どれが本当なんだ、なんでこっち向いてくれないんだと、うえええと泣きながらぶんぶん彼の腕を掴んで揺さぶった。それに、
「ぁ、…れ…?」
と違和感に首をかしげた。
「…そういえ、ば…おれ下着…履いてない…」
…すごい股のところがすーすーする。ということに今更、…気づいた。
さっきから好き放題動いているせいで姿を露わにしてしまいそうになっていたアレを、浴衣の裾を掴んで引っ張って隠す。う、うわ、こんな状態でさっきからじたばたしてたのか、おれ。
「前オナニーするところも散々見たんだし、別に隠さなくてもいいのに」
「へ、へへ変態発言だめ!」
動揺しすぎてめっちゃどもった。すごく慌てている。だけど、くーくんの目にお粗末な物を晒すわけにはいかぬ。
がるるとショックと混乱で涙目のまま唸るおれの髪を、よしよしといつも通りに撫でる手。どうしてそうなんだ、と自分にツッコみたくなるぐらい、そうされるとやっぱりへにゃ、と気分が緩んで自然と気分が安らいでくる。
途端に大人しくなって見えないしっぽを揺らしながらその手の感触を感じていると、持て余したようなため息が目の前で零された。
「…もうとっくに気づいてると思ってたのに。もしかして、まーくんって寝てる間なら誰に襲われても気がつかないんじゃないの?」
「…っ、さ、流石に、そのくらいわかる!」
「それに頭撫でられるのも弱いから、すぐに絆されて騙されそうだし」
「……そんなこと、ないもん」
全く信用されてない。
散々な言われようで心がずったずたになってきた。
「しかも本人は見た目と中身が比例してないって気づいてないっていう、あー…もう」
またため息を吐いているのをチラリと見ながら、む、と眉を寄せた。
…でも、でも、いや、気絶したおれをここまで運んでくれたらしいくーくんを疑うつもりはない、けど。
あの時、結局せいえき出せなかったし、汚れてはなかったはず、で、そうなると一体下着はどこに消えたのか。
「あ、の…何か、知って、る…?」
他に知ってそうな人いないし、くーくんが知らなかったら一人で下着が意思をもっててくてくとどこかに散歩を始めてしまったことになってしまう。
なんて考えながらじーっと答えを求めるように見上げると、何故かわざとらしく頬を染めて照れくさそうな顔をしながら口元を手で隠すようにしてそっぽをむいていた。…どうしてそこで可愛い感じを出してくるんだ。
…すると、
「まーくんが寝てる間なら、好き放題悪戯できるかなって思って」
「 」
…脱がしちゃった。と、その後に続けられて耳に届いた言葉に、
開いた口が塞がらなかった。
「…っ、」
あががががはわわわわと意味のわからない言葉だけがぱくぱくと口から出てきそうになる。
ねてる、あいだに…?
脱がしちゃったって、そんな、そんな格好いい顔で爽やかに言われても…!!!!
ぶるぶると震える。全身が、ブルドーザーのように震える。戦いた。
そういわれてみると、なんか、変な感じがするような、
「なに、おれに、なに、し…っ、」
いたずら、って、一体…
しかもくーくんのことだから、悪戯なんて碌なものじゃない気がする。そういう、子どもの可愛い悪戯とは一緒にできない気がする。
…勿論、全然記憶にない。…そ、そりゃあ寝てる時の現実の記憶なんてあるわけないけど、でも、それでも、うぎゃああと熱くなる頬ときっと慌てすぎて波線みたいになっているだろう唇。
「俺が何したか…教えてほしい?」
「…う、うん」
戸惑いながらもこくん、と素直にうなずく。
どうみてもいいことじゃないだろうけど、と若干疑いの目で見上げる
と、…ふわり、と艶やかに微笑む綺麗な顔。
「じゃあ、もういっかいそこに寝て」
「……へ?」
布団を指で指しているのを目で追って、首を傾げた。「…ねる…?」と繰り返してから、…ぐるぐると考えた。今、もう一回寝ることに何の意味があるのかな。
…それにおれがねちゃったらくーくんどうするんだろうまたどっか行っちゃうのかな、そんなの、やだ…と違う意味で勝手に涙が出そうになってきて、眉を寄せる。
わからないまま、だけどどっかいっちゃうって話以外ながら何でもいい、と思いながら「なんで?」とくーくんの裾をくいと引っ張って疑問を投げつけた。
「もう一回寝て、どうするの?」
「さっき俺がしてたこと、気にならない?」
「気になる、けど…でも、なんで、」
「うん。だから、今から実際に再現してみたらまーくんもわかると思うよ」
優しい表情で瞳を細めたくーくんを、キョトンと見上げながらその言葉を頭の中で繰り返して
「…ま、まさか……」
……ようやく、意味を理解した。くーくんが何を言いたいのか、今からやろうとしていることが、わかってしまった。
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