貴方は俺を愛せない

和泉奏

文字の大きさ
249 / 356
猫と少年のお遊戯

5

しおりを挟む



…違う。


こんな言葉では足りない。

もっと、もっともっと、すごいんだ。

実際に見た人にしか伝わらないだろう。

どんな言葉で表現しても足りない。
どう言葉にすれば、あの凄さを、目の当たりにして抱いた感情をわかってもらえるんだろう。


さっくんが紙人形を扱う様は…いつにも増して畏敬さえ感じさせる美しさは、神秘的で儚くて、神々しい。

いつもと違う空気、雰囲気。

集中して瞼を軽く伏せた真剣な表情も、
作るときの願いを込める仕草も、
風が撫でたように微かに揺れる艶やかな黒髪も、

嘘じゃなくて、本当に全部キラキラして見えるんだ。

……その姿を美しいと、いつも思う。

他のどれとも比べられないぐらいあまりにも美しいから、この世のものじゃないんじゃないかと錯覚しながらも陶酔し、心を奪われて毎回見惚れてしまうほどだ。

それなのに、


「この紙も、…俺も、そう仰っていただけるような綺麗なモノではありません」


オレの必死の反抗を遮る、…感情を押し殺した少し低めの声色。
硬くなった音が、迷いなく断定し、否定する。


「……モノ…、」

「夏空様が必要としてくださるまでは、卑俗な人間が悦ぶような…穢れた遊び道具の一つにすぎなかったんですよ」

(……遊び道具…?)


そういえば、最初の頃もよく言われていた。
『俺のことは都合の良い道具だとお考えください』と。


「……どういう、意味…?その遊び道具っていうのは、……”俺も”って、」


わからない。

耳に届く言葉の意味がわからない。
どう飲み込めばいいのか、何を言えばいいか戸惑って、口を噤む。

……なんとなく、続きを音にしたくなかった。

多分、その声色と言葉の使い方から…良い連想はできない。


「知りたいですか?」

「……う、…ん…っ?」


返事が終わる前に、腕の拘束が緩み、背中から体温が遠ざかる。

振り返れば、手首を掴まれた。


「………え、…?、わ…っ、」


反射的に身体を引こうとして、体勢を崩される。

視界がぐらりと揺れ、ぎゅっと目を瞑った。
床に押し倒され、頭と背中全部に固い木の感触が触れる。


「…え、…な、…なに、さっく、」


さっくんがオレを見下ろしていた。
……整った顔にいつものやわらかい微笑みはなく、意図的に消しているのか何の感情も読み取れない。


(…う、……、怖い…)


真顔になると、なんでこうも怖いんだろう。
……それなのに、するりと指を絡められて手を握られると、少しだけほっとして、安心できるから好きだ。

オレの緊張が僅かに和らいだのを見て目を細めるさっくんに、やはりすべて見透かされているんだと思うと拗ねたくなる。

べつにこの状況自体に違和感はないし嫌でもないし、今更驚くことでもないんだけど、

……今のさっくんの表情と空気感は、…ちょっと、普通じゃない気がして…なんだか違う雰囲気が怖くて、心臓がどきどきしてくる。

見上げていられなくて、顔を背けようとすれば低い体温の手が頬を包むようにゆっくりと触れてきた。


「以前、俺が過去にどういう生活をしていたか教えてほしいと仰っていたでしょう」


まるでペットを愛でるように肌を撫でられて、その気持ちいいのか不思議な感覚に「…っ、ん、ん…」と変な声が漏れる。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...