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第三部:過去との対峙と陰謀の露見
第二十九話:水底の再突入
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夜は深く、川面は漆黒の闇に沈んでいた。数日前に発見した、「影」の水路拠点へと続く隠し扉の前で、甚兵衛とお絹は息を殺していた。手には、この日のために精魂込めて作り上げた「反からくり」が握られている。迫る「期日」。後はない。
小舟を隠し扉の前に寄せ、甚兵衛は水面に探り棒を差し入れた。以前使ったものとは違う。より精密に、そして音を立てずに水面下の機構を探るため、新たに作った反からくりだ。氷雨のことだ。一度入り口を見破られたと知れば、必ず警備を強化しているはずだ。
水圧に抗いながら、指先の感覚を頼りに機構を探る。以前は気づかなかった、新たな罠の存在も警戒する。水面下の石垣に、微かな圧力センサーが仕掛けられているかもしれない。甚兵衛は、事前に予測した新たな警備の可能性を考慮しながら、反からくりを操作する。
ギー…カチリ…という、微かな、しかし確かな手応え。新たな警備機構を回避し、隠し扉の本来の作動箇所に触れた音だ。甚兵衛は慎重に力を込める。
以前よりも重い軋み音を立てながら、水面下の石垣が内側へ沈み込む。開いた穴からは、以前にも増して冷たく湿った空気が流れ出してきた。成功だ。
「入るぞ。警戒を怠るな」
甚兵衛が言うと、お絹は無言で頷いた。恐怖は消えない。しかし、それ以上に、目の前の敵に立ち向かう決意が固まっている。二人は、小舟を固定し、用意した水中移動用のからくり(呼吸用の細い管や、音を立てない特殊な足ひれなど)を身につけ、水面下の穴へと滑り込んだ。
通路は暗く、狭い。水の音だけが響く。水中集音器で、周囲の音を探る。微かなモーター音のようなものや、人の話し声が、以前よりも近くから聞こえる。基地の活動が活発になっている証拠だ。
通路を進み、陸地に上がる階段を上る。以前偵察した場所だ。しかし、階段の途中には、新たなからくり罠が仕掛けられているかもしれない。甚兵衛は、足元に圧力センサーがないか、壁に細い糸が張られていないか、探索からくりを使いながら慎重に進む。
階段を上りきった。そこは、以前見えた地下空間の入り口だ。明かりが漏れている。そして、以前よりも人の気配が濃い。
物陰に隠れ、覗きからくりで空間の様子を窺う。以前は技術者らしき者たちだけだったが、今回は複数の「影」の者たちが警備についている。手に得物を持ち、警戒している。彼らは、入口付近への不審な動きに備えているのだ。
「警備が増えている…」甚兵衛が低い声で呟いた。予測通りだ。
このまま正面から突破するのは難しい。甚兵衛は、空間の構造を再確認する。以前見た、奥の工房へと続く通路、そして、天井の梁や、壁の死角。
彼は、新たな反からくりを取り出した。それは、特定の場所へ正確に粘着性の弾を射出する小型のからくりだ。そして、別の小型からくりからは、刺激性のない、しかし視界を遮る煙幕が発生する。捕らえるためではない。警備の隙を作り、その場を突破するためだ。
「行くぞ。煙幕が晴れる前に、奥へ」
甚兵衛は合図し、煙幕からくりを起動させた。プシュー! という微かな音と共に、白い煙が空間に広がる。同時に、粘着弾からくりで、警備の足元を狙う。
警備の「影」たちが、突然の煙幕に戸惑い、咳き込む。視界が奪われる。その一瞬の混乱を突き、甚兵衛とお絹は物陰から飛び出した。
彼らは、煙幕の中を、あらかじめ記憶した経路で音もなく駆け抜ける。足元に粘着弾が着弾し、焦る声が聞こえる。警備の怒鳴り声や、動く気配が背後で聞こえるが、振り返る暇はない。
目標は、奥の工房へと続く通路だ。そこへたどり着ければ、この広間を抜けることができる。
煙幕が晴れ始めた。甚兵衛とお絹は、通路の入り口へ飛び込んだ。背後から、追跡の気配が迫る。警備の「影」たちが、煙幕を振り払い、二人を追いかけてくる。
地下空間への再突入は、危険極まりないものとなった。しかし、甚兵衛の周到な計画と反からくり、そして二人の連携で、警備の隙間を縫って内部への突破に成功した。彼らは、ついに「影」の本拠地の、さらに奥へと足を踏み入れたのだ。
通路を進む先には、あの巨大なからくり工房が待っている。そして、そこにいるであろう氷雨が。物語は、いよいよ「影」の心臓部へ迫る。
小舟を隠し扉の前に寄せ、甚兵衛は水面に探り棒を差し入れた。以前使ったものとは違う。より精密に、そして音を立てずに水面下の機構を探るため、新たに作った反からくりだ。氷雨のことだ。一度入り口を見破られたと知れば、必ず警備を強化しているはずだ。
水圧に抗いながら、指先の感覚を頼りに機構を探る。以前は気づかなかった、新たな罠の存在も警戒する。水面下の石垣に、微かな圧力センサーが仕掛けられているかもしれない。甚兵衛は、事前に予測した新たな警備の可能性を考慮しながら、反からくりを操作する。
ギー…カチリ…という、微かな、しかし確かな手応え。新たな警備機構を回避し、隠し扉の本来の作動箇所に触れた音だ。甚兵衛は慎重に力を込める。
以前よりも重い軋み音を立てながら、水面下の石垣が内側へ沈み込む。開いた穴からは、以前にも増して冷たく湿った空気が流れ出してきた。成功だ。
「入るぞ。警戒を怠るな」
甚兵衛が言うと、お絹は無言で頷いた。恐怖は消えない。しかし、それ以上に、目の前の敵に立ち向かう決意が固まっている。二人は、小舟を固定し、用意した水中移動用のからくり(呼吸用の細い管や、音を立てない特殊な足ひれなど)を身につけ、水面下の穴へと滑り込んだ。
通路は暗く、狭い。水の音だけが響く。水中集音器で、周囲の音を探る。微かなモーター音のようなものや、人の話し声が、以前よりも近くから聞こえる。基地の活動が活発になっている証拠だ。
通路を進み、陸地に上がる階段を上る。以前偵察した場所だ。しかし、階段の途中には、新たなからくり罠が仕掛けられているかもしれない。甚兵衛は、足元に圧力センサーがないか、壁に細い糸が張られていないか、探索からくりを使いながら慎重に進む。
階段を上りきった。そこは、以前見えた地下空間の入り口だ。明かりが漏れている。そして、以前よりも人の気配が濃い。
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「警備が増えている…」甚兵衛が低い声で呟いた。予測通りだ。
このまま正面から突破するのは難しい。甚兵衛は、空間の構造を再確認する。以前見た、奥の工房へと続く通路、そして、天井の梁や、壁の死角。
彼は、新たな反からくりを取り出した。それは、特定の場所へ正確に粘着性の弾を射出する小型のからくりだ。そして、別の小型からくりからは、刺激性のない、しかし視界を遮る煙幕が発生する。捕らえるためではない。警備の隙を作り、その場を突破するためだ。
「行くぞ。煙幕が晴れる前に、奥へ」
甚兵衛は合図し、煙幕からくりを起動させた。プシュー! という微かな音と共に、白い煙が空間に広がる。同時に、粘着弾からくりで、警備の足元を狙う。
警備の「影」たちが、突然の煙幕に戸惑い、咳き込む。視界が奪われる。その一瞬の混乱を突き、甚兵衛とお絹は物陰から飛び出した。
彼らは、煙幕の中を、あらかじめ記憶した経路で音もなく駆け抜ける。足元に粘着弾が着弾し、焦る声が聞こえる。警備の怒鳴り声や、動く気配が背後で聞こえるが、振り返る暇はない。
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煙幕が晴れ始めた。甚兵衛とお絹は、通路の入り口へ飛び込んだ。背後から、追跡の気配が迫る。警備の「影」たちが、煙幕を振り払い、二人を追いかけてくる。
地下空間への再突入は、危険極まりないものとなった。しかし、甚兵衛の周到な計画と反からくり、そして二人の連携で、警備の隙間を縫って内部への突破に成功した。彼らは、ついに「影」の本拠地の、さらに奥へと足を踏み入れたのだ。
通路を進む先には、あの巨大なからくり工房が待っている。そして、そこにいるであろう氷雨が。物語は、いよいよ「影」の心臓部へ迫る。
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