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第六章:古き神々の涙と因果の病
第百十一話:火神の戒め
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江戸の空は、これまでになく熱気を帯び、見えない火の粉が舞っているかのようだった。
玄庵診療所には、火を扱う生業の者たちが、高熱と火傷に苦しむ姿でひっきりなしに運び込まれる。
彼らの皮膚は赤く爛れ、その呻き声は、まるで燃え盛る薪が弾ける音にも似て、おみつの心を深く締め付けた。
運び込まれた鍛冶師の熱は一向に引かず、意識も朦朧としたままだ。彼の体からは、焦げ付くような「火の匂い」が立ち込め、おみつが触れるたびに、彼女の心に、熱く、そして悲しい「火への冒涜」の意識が押し寄せた。それは、火神の、言葉にならぬほどの嘆きが、この男の身に現れているかのようだった。
「先生……この熱を、どうにかしてあげられませんか……」
おみつは、不安と焦燥に駆られながら、玄庵に訴えた。彼女の浄化の光は、熱をわずかに和らげるものの、根本的な治癒には至らない。
玄庵は、黙って鍛冶師の脈を測り、その表情には深い思索の影が落ちていた。火神の因果。それは、他の因果にも増して、人々の「利便性の追求」に根差している。火は、人々の暮らしを豊かにし、文明を発展させた。しかし、その恩恵を当然のように受け、火への感謝を忘れた結果、この病は生まれた。
その時、診療所の戸が、勢いよく開かれた。現れたのは、竜胆だった。彼の顔には、疲労の色が濃く、その手には、炭で汚れた古い手ぬぐいが握られていた。
「玄庵……おみつ……。この奇妙な熱病は、何なのだ? 俺の知る限り、これほどの高熱が続き、全身が爛れる病など、前例がない」
竜胆の声には、珍しく焦りの色が混じっていた。彼は、風の因果に苦しむ患者のために、風神を祀る廃れた神社を訪ねていたのだ。しかし、その道中で、この新たな病の兆候に触れたのだろう。
玄庵は、静かに竜胆に、火の因果について説明した。火神の嘆きが、火を粗末に扱い、その恵みを当然のように享受した者たちに、病として現れているのだと。
「……そんな、馬鹿な。火神が、人間に病をもたらすなど……。だが、確かに、この熱は、尋常ではない……」
竜胆は、信じられないといった様子で呟きながらも、彼の理性は、玄庵の言葉に、ある種の真実を見出していた。彼の身近にも、この病に苦しむ者が現れ始めているのだろう。
「では、どうすればよい? この火の病を鎮めるには、どうすればいいのだ?」
竜胆は、焦りの色を隠さずに問いかけた。
「火神の悲しみを癒やすには、人々の心を変える必要がある。火を粗末に扱い、その恵みを忘れ去った者たちが、その過ちを悔い改め、火への感謝と畏敬の念を取り戻すことだ」
玄庵の言葉に、竜胆は深く眉をひそめた。
「そんな、絵空事のような話で、この病が治るとでもいうのか? 目に見えぬ神に、人々が突然感謝するなど……」
「しかし、そうしなければ、この病は止まらない。おみつの力は、人々の心に宿る罪悪感を視覚化し、それを認識させることで、悔い改めと感謝の心を芽生えさせる。それが、火神の悲しみを癒やし、因果の病を根本から治す道なのだ」
玄庵の言葉に、おみつは改めて鍛冶師の手に触れた。すると、彼女の心に、鍛冶師が過去に、火の恵みを当たり前のように使い、余った火の種を無造作に捨て、小さな山火事を引き起こしたことへの「無責任」な意識が、鮮明に浮かび上がった。
そして、その光景の奥に、燃え盛る炎の中で、悲しみに顔を歪ませる、火神の姿がぼんやりと見えた。
「見えます……! この方が、火を粗末に扱ったことへの、火神様の悲しみが……」
おみつの言葉は、まるで彼女自身が、その光景を体験しているかのようだった。その光景が、鍛冶師の心に、そしてそれを聞く竜胆の心にも、微かながら伝わっていく。
竜胆は、呆然とした表情でおみつを見つめた。彼は、これまで妖怪を悪と断じ、調伏することのみに生きてきた。だが、このような「目に見えぬ因果」に対し、彼はなすすべもなかった。
「玄庵……ならば、具体的に、何をすれば良いのだ? 風の神社のことのように……」
竜胆の言葉に、玄庵は静かに頷いた。
「火神を祀る場所は、かつては多くの村や集落に存在した。竈の神、鍛冶の神、火伏せの神として、人々の暮らしに深く根付いていたはずだ。だが、今ではその多くが忘れ去られ、祠は荒れ果てている」
玄庵の言葉は、この火の因果もまた、人々の「忘れられた信仰」に根差していることを示唆していた。
「その廃れた祠を清め、再び火神への祈りを捧げること。そして、火を扱う者たちが、自らの行いを悔い改め、火への感謝を再認識すること。それが、この病を鎮めるための、具体的な行動となるだろう」
玄庵の言葉に、竜胆の瞳に、新たな決意の光が宿った。彼は、これまでのように妖怪を追うだけでは、この因果の病は解決できないことを、より強く確信したのだ。
その夜、玄庵診療所では、おみつが患者の鍛冶師の手に触れ、その心に、火への感謝と、過ちへの悔い改めを促していた。彼女の浄化の光が、鍛冶師の体を包み込み、高熱が、わずかながらも引いていくのが見て取れた。
竜胆は、その様子を傍らで静かに見守っていた。彼の脳裏には、玄庵の言葉が何度も反芻されていた。
「全く、神様ってのも、人間が勝手に忘れちまうと、こんな形で訴えかけてくるのか……。だが、俺は……俺は、人々を救いたい。それが、たとえ目に見えぬ神の戒めだとしても……」
竜胆は、強く拳を握りしめた。彼は、退魔師として、人々の安全と平穏を守ることに尽力してきた。その信念は、たとえ相手が神であっても、揺らぐことはなかった。
夜の帳が下りた鬼灯横丁には、静かな決意の灯が揺れていた。火の因果は、依然として人々の不安を煽るが、玄庵とおみつ、そして彼らに協力し始めた竜胆の存在が、その不安を打ち破る希望の光となり始めていた。
彼らは、この因果の病を乗り越え、人間と神々、そしてこの世界全体が、真の平穏を取り戻すための、新たな戦いの扉を開こうとしていたのだ。
翌朝、竜胆は、玄庵診療所を後にした。彼の向かう先は、江戸の町外れにある、小さな鍛冶場だった。そこには、かつて火神を祀っていたとされる、朽ちかけた祠があった。
竜胆の胸には、この因果の病を鎮めるため、そして人々を救うためという、確かな使命感が燃え盛っていた。
彼は、退魔師として、人々の負の感情によって生じた穢れを調伏してきた。
だが、今、彼が向き合っているのは、人々の「無関心」と「傲慢さ」が招いた、神々の悲しみだった。
風の因果に苦しむ患者を救うため、風神の祠を清めることを決意した竜胆の背中には、新たな覚悟が宿っていた。
この火の因果もまた、彼の使命の一部となったのだ。彼は、単なる退魔師としてではなく、人々を真に導く者として、生まれ変わろうとしていた。
玄庵診療所には、火を扱う生業の者たちが、高熱と火傷に苦しむ姿でひっきりなしに運び込まれる。
彼らの皮膚は赤く爛れ、その呻き声は、まるで燃え盛る薪が弾ける音にも似て、おみつの心を深く締め付けた。
運び込まれた鍛冶師の熱は一向に引かず、意識も朦朧としたままだ。彼の体からは、焦げ付くような「火の匂い」が立ち込め、おみつが触れるたびに、彼女の心に、熱く、そして悲しい「火への冒涜」の意識が押し寄せた。それは、火神の、言葉にならぬほどの嘆きが、この男の身に現れているかのようだった。
「先生……この熱を、どうにかしてあげられませんか……」
おみつは、不安と焦燥に駆られながら、玄庵に訴えた。彼女の浄化の光は、熱をわずかに和らげるものの、根本的な治癒には至らない。
玄庵は、黙って鍛冶師の脈を測り、その表情には深い思索の影が落ちていた。火神の因果。それは、他の因果にも増して、人々の「利便性の追求」に根差している。火は、人々の暮らしを豊かにし、文明を発展させた。しかし、その恩恵を当然のように受け、火への感謝を忘れた結果、この病は生まれた。
その時、診療所の戸が、勢いよく開かれた。現れたのは、竜胆だった。彼の顔には、疲労の色が濃く、その手には、炭で汚れた古い手ぬぐいが握られていた。
「玄庵……おみつ……。この奇妙な熱病は、何なのだ? 俺の知る限り、これほどの高熱が続き、全身が爛れる病など、前例がない」
竜胆の声には、珍しく焦りの色が混じっていた。彼は、風の因果に苦しむ患者のために、風神を祀る廃れた神社を訪ねていたのだ。しかし、その道中で、この新たな病の兆候に触れたのだろう。
玄庵は、静かに竜胆に、火の因果について説明した。火神の嘆きが、火を粗末に扱い、その恵みを当然のように享受した者たちに、病として現れているのだと。
「……そんな、馬鹿な。火神が、人間に病をもたらすなど……。だが、確かに、この熱は、尋常ではない……」
竜胆は、信じられないといった様子で呟きながらも、彼の理性は、玄庵の言葉に、ある種の真実を見出していた。彼の身近にも、この病に苦しむ者が現れ始めているのだろう。
「では、どうすればよい? この火の病を鎮めるには、どうすればいいのだ?」
竜胆は、焦りの色を隠さずに問いかけた。
「火神の悲しみを癒やすには、人々の心を変える必要がある。火を粗末に扱い、その恵みを忘れ去った者たちが、その過ちを悔い改め、火への感謝と畏敬の念を取り戻すことだ」
玄庵の言葉に、竜胆は深く眉をひそめた。
「そんな、絵空事のような話で、この病が治るとでもいうのか? 目に見えぬ神に、人々が突然感謝するなど……」
「しかし、そうしなければ、この病は止まらない。おみつの力は、人々の心に宿る罪悪感を視覚化し、それを認識させることで、悔い改めと感謝の心を芽生えさせる。それが、火神の悲しみを癒やし、因果の病を根本から治す道なのだ」
玄庵の言葉に、おみつは改めて鍛冶師の手に触れた。すると、彼女の心に、鍛冶師が過去に、火の恵みを当たり前のように使い、余った火の種を無造作に捨て、小さな山火事を引き起こしたことへの「無責任」な意識が、鮮明に浮かび上がった。
そして、その光景の奥に、燃え盛る炎の中で、悲しみに顔を歪ませる、火神の姿がぼんやりと見えた。
「見えます……! この方が、火を粗末に扱ったことへの、火神様の悲しみが……」
おみつの言葉は、まるで彼女自身が、その光景を体験しているかのようだった。その光景が、鍛冶師の心に、そしてそれを聞く竜胆の心にも、微かながら伝わっていく。
竜胆は、呆然とした表情でおみつを見つめた。彼は、これまで妖怪を悪と断じ、調伏することのみに生きてきた。だが、このような「目に見えぬ因果」に対し、彼はなすすべもなかった。
「玄庵……ならば、具体的に、何をすれば良いのだ? 風の神社のことのように……」
竜胆の言葉に、玄庵は静かに頷いた。
「火神を祀る場所は、かつては多くの村や集落に存在した。竈の神、鍛冶の神、火伏せの神として、人々の暮らしに深く根付いていたはずだ。だが、今ではその多くが忘れ去られ、祠は荒れ果てている」
玄庵の言葉は、この火の因果もまた、人々の「忘れられた信仰」に根差していることを示唆していた。
「その廃れた祠を清め、再び火神への祈りを捧げること。そして、火を扱う者たちが、自らの行いを悔い改め、火への感謝を再認識すること。それが、この病を鎮めるための、具体的な行動となるだろう」
玄庵の言葉に、竜胆の瞳に、新たな決意の光が宿った。彼は、これまでのように妖怪を追うだけでは、この因果の病は解決できないことを、より強く確信したのだ。
その夜、玄庵診療所では、おみつが患者の鍛冶師の手に触れ、その心に、火への感謝と、過ちへの悔い改めを促していた。彼女の浄化の光が、鍛冶師の体を包み込み、高熱が、わずかながらも引いていくのが見て取れた。
竜胆は、その様子を傍らで静かに見守っていた。彼の脳裏には、玄庵の言葉が何度も反芻されていた。
「全く、神様ってのも、人間が勝手に忘れちまうと、こんな形で訴えかけてくるのか……。だが、俺は……俺は、人々を救いたい。それが、たとえ目に見えぬ神の戒めだとしても……」
竜胆は、強く拳を握りしめた。彼は、退魔師として、人々の安全と平穏を守ることに尽力してきた。その信念は、たとえ相手が神であっても、揺らぐことはなかった。
夜の帳が下りた鬼灯横丁には、静かな決意の灯が揺れていた。火の因果は、依然として人々の不安を煽るが、玄庵とおみつ、そして彼らに協力し始めた竜胆の存在が、その不安を打ち破る希望の光となり始めていた。
彼らは、この因果の病を乗り越え、人間と神々、そしてこの世界全体が、真の平穏を取り戻すための、新たな戦いの扉を開こうとしていたのだ。
翌朝、竜胆は、玄庵診療所を後にした。彼の向かう先は、江戸の町外れにある、小さな鍛冶場だった。そこには、かつて火神を祀っていたとされる、朽ちかけた祠があった。
竜胆の胸には、この因果の病を鎮めるため、そして人々を救うためという、確かな使命感が燃え盛っていた。
彼は、退魔師として、人々の負の感情によって生じた穢れを調伏してきた。
だが、今、彼が向き合っているのは、人々の「無関心」と「傲慢さ」が招いた、神々の悲しみだった。
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