みんな善いことだと思ってた

月影 朔

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【第一章:予兆の記録(2024年~2027年)】

第3話:資料No.002(フリーペーパー記者の取材メモ)2024年

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【資料No.002】
資料種別:フリーペーパー『週刊ほくかんリビング』記者・工藤██の取材メモ(スキャンデータ)
記録年:2024年

(以下は、フリージャーナリスト工藤██氏が当時使用していた取材用ノートのスキャンデータから、テキスト情報を再構成したものである。殴り書きや略語、個人的な所感が混じるが、記録の信憑性を担保するため、ここでは原文のまま掲載する)

2024/09/10 (火)

件名:匿名のタレコミ(違法土葬?)

15:30 編集部に電話。タレコミ。
相手:匿名希望の女性。40代~50代? 声がヒステリックで早口。かなり怯えている様子。
場所:北関東〇〇市、△△台団地。
内容:
「あの、週刊ほくかんリビングさんですか? 記事にしてほしくて…でも、名前は絶対に出さないでくださいね、お願いですから…!」
「団地の裏にある、市の雑木林…あそこ、夜になると外国人の人たちが集まってるんです」
「歌みたいな…お経みたいなのを歌いながら、何かを…地面に埋めてるんです。間違いありません。この目で何度も見ました」
「最初はゴミの不法投棄かと思ったけど、違う。もっと、こう…儀式みたいな感じで。スコップで穴を掘って、布にくるんだ細長い何かを、すごく大事そうに…」
「警察にも相談したんです。でも、全然まともに取り合ってくれなくて。『証拠はあるんですか』『文化の違いもあるから』って…。でも、おかしいじゃないですか! 日本は火葬の国でしょう? あんなこと、許されていいはずがない!」

所感:
またこの手の話か。外国人コミュニティに対する排外的な感情からくる、思い込みの可能性大。△△台団地は、ここ数年で東南アジア系の技能実習生やその家族の居住者が急増しているエリア。文化摩擦の火種は常にある。
「布にくるんだ細長い何か」→ 人間の遺体と断定するには、あまりに曖昧。動物の死骸、あるいはただの廃棄物の可能性も。

ただし
・声の切迫感は本物だった。本当に恐怖を感じている様子。
・「警察が動かない」という点は気になる。面倒事を避けているのか、それとも本当に相手にしていないのか。
・万が一、万が一これが事実で、「違法な土葬」が行われているとしたら…これはデカいネタになる。フリーペーパーの手に余るかもしれないが、大手週刊誌に売れるレベルのスクープだ。

ToDo:
・明日、ヤマさん(編集長)に報告、相談。
・並行して、△△台団地周辺の基礎情報を洗っておく。外国人コミュニティの規模、出身国、宗教など。
・墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)の条文を再確認。土葬が原則禁止されている根拠を固める。

殴り書きメモ:
(人種差別には加担したくない。あくまで客観的な事実として、社会問題として切り込む。テーマは「文化共生の歪み」か?…いや、まだ何もわからん。決めつけるな)

2024/09/11 (水)

件名:編集長報告、および初期調査

10:00 ヤマさんに昨日のタレコミを報告。

ヤマさんとの会話(要約):
ヤマ:「工藤、また面倒くさそうなネタ拾ってきたな。外国人コミュニティの話はデリケートだぞ。下手に突っつくと、こっちが差別主義者だって燃やされるのがオチだ」
俺:「分かってます。だからこそ、慎重に、まずは外堀から埋めようかと」
ヤマ:「まあ、タレコミ主の言うことが万が一本当なら、うちみたいなフリーペーパーじゃなく、もっとデカい媒体が扱うべき話だ。だが、その“万が一”を掴むのが俺たちの仕事でもある。…いいだろう。少し動いてみろ。ただし、絶対に深入りはするなよ。あくまで行政と、周辺への聞き込みまで。当事者への直撃は、俺の許可なくやるな。いいな?」
俺:「了解です」

初期調査①:〇〇市役所
11:30 アポなしで市役所へ。生活衛生課と市民協働課(国際交流担当)をハシゴ。

生活衛生課・担当者(サイトウ氏)への取材メモ:
・墓埋法上、指定された墓地以外での埋葬は明確に禁止されている。違反者には罰則も。
・市内での違法土葬の通報は「過去に数件あったと記憶しているが、いずれも事実確認には至らなかった」。
・△△台団地周辺での具体的な通報は「個人情報なので答えられない」。
・外国人居住者への火葬文化の周知は「多言語パンフレットの配布などで、鋭意努力している」。
→ 全体的に、教科書通りの回答。問題は把握しているが、積極的に関与したくない、という空気が見え見え。典型的な役人ムーブ。

市民協働課・担当者(ワタナベ女史)への取材メモ:
・△△台団地の外国人居住者は、主に東南アジアのB国出身者が多い。仏教徒だが、土着のアニミズム的な信仰も根強い地域。
・B国の葬送文化について尋ねるも、「専門外なので…」と口を濁す。
・「文化の違いは、尊重されるべきです。私達も、彼らが地域に溶け込めるよう、様々なサポートを…」
→ こちらは「人道的配慮」という名の思考停止。違法の可能性には一切触れず。役所は、この件を完全に「触れてはいけないもの」として扱っている。これは、逆に何かあるかもしれない。

所感:
役所の及び腰な態度は、タレコミの信憑性を少しだけ上げた。彼らは、面倒な社会問題が起きていることを知っていて、意図的に見て見ぬふりをしている可能性が高い。

2024/09/18 (水)

件名:△△台団地 現地聞き込み

終日、△△台団地周辺で聞き込み。ターゲットを絞らず、複数の住民から話を聞く。

自治会長(タナカ氏・70代男性):
「外国人? ああ、増えたねえ。でも、みんな真面目にやってるよ。ゴミ出しのルールもちゃんと守るし、会えば挨拶もする。夜中に騒いでるなんて話は、少なくとも俺は聞かないねえ」
「雑木林? あそこは市の土地だからね。昔は子供の遊び場だったけど、今は誰も近づかないよ。まあ、気味が悪いからね」
→ 表向きは、問題なし。だが、コミュニティの代表として、波風を立てたくないという意識が強い印象。

パート主婦(スズキさん・40代女性):
「ウチ、雑木林に近い棟なんですけど、たまに聞こえますよ、夜中に。歌、みたいな…。日本の歌じゃないですね。お祭りみたいな、でも、もっと悲しい感じの…。夫は『気のせいだろ』って言うんですけど」
「あと、これは本当にただの噂なんですけど…最近、あの雑木林のあたりで、変な大男を見たっていう話、聞きませんか?」

殴り書きメモ:
(変な大男? 土葬の話とは別件か? ノイズ情報かもしれないが、一応メモ)

コンビニ店員(ワカモノ・20代男性):
「ああ、外人さんたち、夜によく買い物に来ますよ。仕事終わりなんですかね。みんなで集まって、スコップとか、あと、ビニールシートみたいなの、買っていきますね。何に使うんすかね? キャンプでもするのかな」

所感:
確証はない。だが、断片的な情報が、タレコミの内容を補強し始めている。
・夜中に、雑木林の方から、外国の歌のようなものが聞こえる。
・コンビニで、スコップやビニールシートが購入されている。
・そして、「変な大男」の噂。

違法土葬の線は、まだ消えていない。むしろ、黒に近づいている。
だが、それとは別に、この地域に何か別の、不穏な空気が漂い始めているのを感じる。
「変な大男」の噂。これが、なぜか妙に頭に引っかかる。
土葬の件とは無関係な、単なる都市伝説か? それとも…。

ToDo:
・県警の記者クラブにいる同期に、△△台周辺での最近の事件記録をそれとなく聞いてみる。
・念のため、過去の地方新聞のアーカイブで、「大男」「不審者」といったキーワードで事件検索をかけてみる。何か、見落としている点があるかもしれない。

(このメモを最後に、工藤氏の関心は、一時的に「違法土葬」の問題から、周辺で起きている別の「異変」へと移っていくことになる)
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