みんな善いことだと思ってた

【第一章：予兆の記録（2024年～2027年）】

第6話：資料No.005（全国ニュースサイトのアーカイブ）2025年

【資料No.005】
資料種別：全国ニュースサイト「NNN Japan News Web」記事アーカイブ
記録年：2025年

(以下は、2025年秋に配信された、全国規模のニュースサイトの記事アーカイブである。この記事自体は、工藤氏が直接リアルタイムで閲覧したものではなく、後日、彼が自身の調査メモ（資料No.004）に記した「ToDo」に基づき、関連情報を検索する過程で発見したものである。この記事の存在が、彼の調査をさらに加速させる一因となった)

URL: hxxps://www.nnn-news.xx.jp/articles/20251028-1145.html
(※注：2030年にサイトがアクセス不能に。以下はインターネットアーカイブからの復元データ)

記事タイトル：【特集】市街地に出没するクマ 過去最悪の被害 なぜ相次ぐ？ 専門家「複合的な要因が…」
配信日時： 2025年10月28日 19:00

(リード文)
今年の秋、全国各地でクマによる被害が過去最悪のペースで発生している。人里に下りてきたクマが、人身に危害を加える事件が相次ぎ、住民の不安は高まるばかりだ。専門家は、異常気象による餌不足などが原因だと指摘するが、今年はこれまでの常識では考えられない、異常な行動をとる個体の目撃情報も報告されている。住民の安全を守るために、今、何が必要なのか。緊迫する現場を取材した。

(本文)
■過去最悪の被害件数

環境省のまとめによると、今年4月から9月末までに報告されたクマによる人身被害は、全国で180件に上り、統計を取り始めてから過去最多だった2023年度の同期を既に上回る、異常なペースとなっている。死者も既に5人に達しており、政府は関係省庁による緊急対策会議を発足させた。

特に被害が深刻なのは、東北地方や北陸、そして北関東の山間部だ。先月25日には、群馬県の山中でキノコ採りをしていた70代の男性がクマに襲われ死亡。今月12日には、新潟県で農作業中の女性が腕や顔をひっかかれ重傷を負うなど、痛ましい事件が後を絶たない。

なぜ、今年はこれほどまでに被害が拡大しているのか。長年、ツキノワグマの生態を研究している、東京農工大学の██名誉教授は、複数の要因が複雑に絡み合っていると指摘する。

「まず第一に、今年の夏の記録的な猛暑と少雨の影響で、クマの主食であるブナやミズナラといった木の実が、山間部で壊滅的な不作となっています。冬眠を前にして、十分な食料を確保できないクマたちが、生きるために必死で人里まで下りてきている。これが、最も大きな原因と言えるでしょう」

さらに██名誉教授は、耕作放棄地の増加による、山と人里の境界線の曖昧さも、クマの出没を後押ししていると語る。

「かつては人の手が入っていた里山が、高齢化によって荒廃し、藪や雑木林となって山と一体化してしまっている。クマにとって、人里への心理的、物理的なハードルが、極端に低くなっているのです」

■専門家も首を捻る「前代未聞の行動」

異常気象による餌不足と、里山の荒廃。専門家が指摘する原因は、いずれも説得力がある。しかし、今年のクマの出没には、それだけでは説明のつかない、不可解な点がいくつも報告されている。

「今年のクマは、何かがおかしい」

そう語るのは、長野県で30年にわたって活動するベテラン猟友会のA氏だ。

「俺たちが見てきた今までのクマは、もっと臆病だった。人の気配を感じれば、まず自分から逃げる。人を襲うのは、子連れの母グマか、不意に出くわしてパニックになった時くらいだ。だが、今年の奴らは違う。明らかに、人間を恐れていない。むしろ、餌を求めて、積極的に人を襲いに来ているような、そんな殺気を感じる」

その異常性を象徴するのが、先月、北関東の〇〇市で発生した、前代未聞の事件だ。

九月三十日の深夜、一頭のツキノワグマが、市街地にある24時間営業のスーパーマーケットの自動ドアを破壊して侵入。店内にいた数人の客と店員が逃げ惑う中、クマは鮮魚コーナーや精肉コーナーには目もくれず、一直線に、店の一番奥にある惣菜コーナーのバックヤードへと向かったという。

そして、驚くべきことに、クマはそこに廃棄予定で置かれていた大量の残飯を漁り始め、通報を受けて駆けつけた警察官や猟友会が取り囲む中、三時間以上にわたって、その場に居座り続けたのだ。最終的には、麻酔銃によって捕獲されたが、専門家もこの異常な行動には首を捻る。

「スーパーに侵入する、というだけでも極めて稀ですが、これほど長時間、多くの人間に囲まれている状況で、逃げ出す素振りも見せずに食事を続けるというのは、通常のクマの行動パターンからは、到底考えられません。極度の飢餓状態にあったことは間違いないでしょうが、それにしても、人間への警戒心が完全に欠如している。まるで、そこが安全な餌場だと、あらかじめ知っていたかのようです」（前出・██名誉教授）

■対策に追われる行政、住民との間に生まれる溝

相次ぐ被害と、クマの異常な行動。行政も、対策に追われている。各自治体では、防災無線や広報車による注意喚起、箱罠の設置、そして専門家を招いた住民説明会などを実施しているが、抜本的な解決には至っていないのが現状だ。

「我々も、パトロールの強化や、追い払い用の花火の配布など、やれることは全てやっています。しかし、相手は野生動物。全ての出没を事前に察知し、防ぐことは、現実的に不可能です」と、〇〇市の担当者は、疲れた表情で語った。

こうした状況は、住民の間に、深刻な分断も生み出している。特にSNS上では、クマの駆除を巡って、都市部の住民と、被害が深刻な地域の住民との間で、激しい論争が巻き起こっている。（※この点については、別記事で詳述する）

専門家は、冬眠の時期を迎えれば、クマの活動は一旦落ち着くだろうと予測する。しかし、来年以降も同様の異常気象が続けば、被害がさらに拡大する可能性も否定できない。自然との共存という、長年の課題。私たちは今、その最も厳しい局面に、立たされているのかもしれない。

(編纂者による注記：工藤氏の取材メモには、この記事のURLと共に、以下の走り書きが残されている)
「スーパーの残飯…？ 飢えた熊なら、まず生肉や魚に食いつくはずだ。なぜ、調理済みの惣菜の残飯に？ まるで、人間の食い物に餌付けされているみたいじゃないか…」
「『安全な餌場だと知っていたかのよう』…」

「まさか。まさか、あの違法土葬と、関係が…？ あの雑木林で、熊が何かを掘り起こしていたという噂。あれは、ただの噂じゃなかったとしたら…？」