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【第二章:天災と人災(2028年)】
第24話:資料No.023(避難所からの119番通報音声・書き起こし:静岡県)2028年
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【資料No.023】
資料種別:消防指令センター・119番通報音声記録の書き起こし
記録年:2028年
(以下は、静岡県███消防本部の指令センターに記録されていた、119番通報の音声記録である。 南海トラフ巨大地震の後、同様の、パニック状態に陥った被災者からの通報が殺到しており、この一件も、当初は「災害ストレスによる錯乱状態の人物からの、いたずら電話の可能性が高い」として処理されていた。 しかし、この通話が途絶した直後、通報があった避難所との全ての通信が、復旧の見通しが立たないまま、完全に途絶している)
通報日時: 2028年8月20日 23時12分
通報場所: 静岡県███郡███町立███小学校・体育館(指定避難所)
(録音開始)
指令センター員: はい、119番、消防です。火事ですか、救急ですか。
通報者: (激しく息を切らしながら、パニック状態の声)はっ…はっ…! あ…ああ…! 助けて! 助けてくれ!
指令センター員: 落ち着いてください! どうしましたか!? あなたのお名前と、今いる場所を教えてください!
通報者: ███小学校! 体育館だ! 早く! 早く来てくれ! 死ぬ! みんな死んじまう!
指令センター員: ███小学校の体育館ですね。分かりました。何があったんですか!? 怪我人がいるんですか!?
通報者: (嗚咽混じりに)熊だ! 熊が…! 熊が、体育館の中に…!
指令センター員: 熊!? 落ち着いて、詳しく状況を…
通報者: (遮るように、金切り声で)デカいんだ! 今まで見たこともないような、デカい熊なんだよ! 用務員室のドアを、紙みたいに破って、入ってきたんだ!
(電話の向こう側で、複数の人間の、甲高い悲鳴と、何かが破壊されるような、ガシャン! バリン! という激しい音が聞こえる)
指令センター員: 落ち着いて! 落ち着いて聞いてください! 今、あなたがいるのは体育館の中ですね!? 他に何人くらいいますか!?
通報者: (混乱した様子で)…分からん…! 50人…いや、もっといる! みんな、パニックになって、隅の方に固まってる! 俺は…俺は、ステージの袖に隠れてるんだ!
指令センター員: 分かりました。すぐに、警察と合同で部隊を向かわせます! 熊は、今、何をしていますか!?
通報者: (声が震えている)…人を…! 人を襲ってる! うわああ…! 田中さんが…! やめろ! やめてくれええ!
(ガシャン! という、さらに大きな破壊音。通報者の、引き攣ったような呼吸音)
指令センター員: しっかりしてください! 熊から、なるべく遠くに離れて! 静かに!
通報者: …おかしいんだ…。何かが、おかしい…。
指令センター員: 何がです!? 何がおかしいんですか!?
通報者: (囁くように)…周りが…。周りの連中が、おかしいんだ…。
指令センター員: 周りの人? 他の避難者のことですか!?
通報者: (絶望的な声で)…そうだ…。踊ってるんだ…。あの、気味の悪い踊りを…。
指令センター員: 踊り…?
通報者: ああ…! いつも、夜中に徘徊してる、あの連中だ! 熊が、すぐそこで、人を引き裂いてるのに…! 叫び声も上げず、逃げようともせず…! ただ、虚ろな目でこっちを見てるだけで…!
(電話の向こう側で、低く、唸るような、獣の咆哮が響き渡る。 それは、通常の熊の声とは、明らかに異質な、まるで地獄の底から響いてくるかのような、聞く者の本能的な恐怖を呼び覚ます音だった)
通報者: (恐怖に引き攣った、囁き声で)…違う…。あれは、熊じゃない…。目が…目が、光ってる…。真っ黒な…虚ろな目で…俺を…俺を見てる…。
指令センター員: いいですか、絶対に動かないで! 声を出さずに、静かに隠れていてください! もうすぐ、部隊が到着しますから!
通報者: (突然、何かを悟ったように、絶望的な声で)…ああ…そうか…。餌だ…。あいつ、餌を探しに来たんだ…。
指令センター員: 餌!?
通報者: (途切れ途切れに)…踊ってる連中は…襲わない…。あいつら、仲間だから…。違う…。俺たちだ…。まだ、踊ってない、俺たちが…!
(ゴッ、という鈍い音。通報者が、何かを察知したような、短い息を呑む音)
通報者: …うわあああああああああああああああっ!!
(電話のスピーカーが割れんばかりの、絶叫。 それに重なるように、先ほどよりも、さらに大きく、さらに近くで、あの獣の咆哮のような音が、鼓膜を突き破るように鳴り響く)
(ガリッ、ゴリッ、という、何か硬いものが砕けるような、ウェットで不快な音)
指令センター員: もしもし!? もしもし! しっかりしてください!
(ブツッ、という音と共に、通話は唐突に途絶した)
(編纂者による注記:この通話記録は、北関東の一地方で起きていた怪異が、南海トラフという巨大災害を触媒として、完全に新たな、そしてより凶暴なフェーズへと変貌を遂げた、その決定的な瞬間を記録している。 これまで別個の事象として扱われてきた「異常行動をとる熊」と「踊り病」。 その二つが、避難所という閉鎖空間で初めて邂逅した時、そこに生まれたのは、もはや人間の理解が及ばない、一方的な「捕食」の光景であった。 この日を境に、全国の被災地から、同様の通報が、断続的に記録されることになる)
資料種別:消防指令センター・119番通報音声記録の書き起こし
記録年:2028年
(以下は、静岡県███消防本部の指令センターに記録されていた、119番通報の音声記録である。 南海トラフ巨大地震の後、同様の、パニック状態に陥った被災者からの通報が殺到しており、この一件も、当初は「災害ストレスによる錯乱状態の人物からの、いたずら電話の可能性が高い」として処理されていた。 しかし、この通話が途絶した直後、通報があった避難所との全ての通信が、復旧の見通しが立たないまま、完全に途絶している)
通報日時: 2028年8月20日 23時12分
通報場所: 静岡県███郡███町立███小学校・体育館(指定避難所)
(録音開始)
指令センター員: はい、119番、消防です。火事ですか、救急ですか。
通報者: (激しく息を切らしながら、パニック状態の声)はっ…はっ…! あ…ああ…! 助けて! 助けてくれ!
指令センター員: 落ち着いてください! どうしましたか!? あなたのお名前と、今いる場所を教えてください!
通報者: ███小学校! 体育館だ! 早く! 早く来てくれ! 死ぬ! みんな死んじまう!
指令センター員: ███小学校の体育館ですね。分かりました。何があったんですか!? 怪我人がいるんですか!?
通報者: (嗚咽混じりに)熊だ! 熊が…! 熊が、体育館の中に…!
指令センター員: 熊!? 落ち着いて、詳しく状況を…
通報者: (遮るように、金切り声で)デカいんだ! 今まで見たこともないような、デカい熊なんだよ! 用務員室のドアを、紙みたいに破って、入ってきたんだ!
(電話の向こう側で、複数の人間の、甲高い悲鳴と、何かが破壊されるような、ガシャン! バリン! という激しい音が聞こえる)
指令センター員: 落ち着いて! 落ち着いて聞いてください! 今、あなたがいるのは体育館の中ですね!? 他に何人くらいいますか!?
通報者: (混乱した様子で)…分からん…! 50人…いや、もっといる! みんな、パニックになって、隅の方に固まってる! 俺は…俺は、ステージの袖に隠れてるんだ!
指令センター員: 分かりました。すぐに、警察と合同で部隊を向かわせます! 熊は、今、何をしていますか!?
通報者: (声が震えている)…人を…! 人を襲ってる! うわああ…! 田中さんが…! やめろ! やめてくれええ!
(ガシャン! という、さらに大きな破壊音。通報者の、引き攣ったような呼吸音)
指令センター員: しっかりしてください! 熊から、なるべく遠くに離れて! 静かに!
通報者: …おかしいんだ…。何かが、おかしい…。
指令センター員: 何がです!? 何がおかしいんですか!?
通報者: (囁くように)…周りが…。周りの連中が、おかしいんだ…。
指令センター員: 周りの人? 他の避難者のことですか!?
通報者: (絶望的な声で)…そうだ…。踊ってるんだ…。あの、気味の悪い踊りを…。
指令センター員: 踊り…?
通報者: ああ…! いつも、夜中に徘徊してる、あの連中だ! 熊が、すぐそこで、人を引き裂いてるのに…! 叫び声も上げず、逃げようともせず…! ただ、虚ろな目でこっちを見てるだけで…!
(電話の向こう側で、低く、唸るような、獣の咆哮が響き渡る。 それは、通常の熊の声とは、明らかに異質な、まるで地獄の底から響いてくるかのような、聞く者の本能的な恐怖を呼び覚ます音だった)
通報者: (恐怖に引き攣った、囁き声で)…違う…。あれは、熊じゃない…。目が…目が、光ってる…。真っ黒な…虚ろな目で…俺を…俺を見てる…。
指令センター員: いいですか、絶対に動かないで! 声を出さずに、静かに隠れていてください! もうすぐ、部隊が到着しますから!
通報者: (突然、何かを悟ったように、絶望的な声で)…ああ…そうか…。餌だ…。あいつ、餌を探しに来たんだ…。
指令センター員: 餌!?
通報者: (途切れ途切れに)…踊ってる連中は…襲わない…。あいつら、仲間だから…。違う…。俺たちだ…。まだ、踊ってない、俺たちが…!
(ゴッ、という鈍い音。通報者が、何かを察知したような、短い息を呑む音)
通報者: …うわあああああああああああああああっ!!
(電話のスピーカーが割れんばかりの、絶叫。 それに重なるように、先ほどよりも、さらに大きく、さらに近くで、あの獣の咆哮のような音が、鼓膜を突き破るように鳴り響く)
(ガリッ、ゴリッ、という、何か硬いものが砕けるような、ウェットで不快な音)
指令センター員: もしもし!? もしもし! しっかりしてください!
(ブツッ、という音と共に、通話は唐突に途絶した)
(編纂者による注記:この通話記録は、北関東の一地方で起きていた怪異が、南海トラフという巨大災害を触媒として、完全に新たな、そしてより凶暴なフェーズへと変貌を遂げた、その決定的な瞬間を記録している。 これまで別個の事象として扱われてきた「異常行動をとる熊」と「踊り病」。 その二つが、避難所という閉鎖空間で初めて邂逅した時、そこに生まれたのは、もはや人間の理解が及ばない、一方的な「捕食」の光景であった。 この日を境に、全国の被災地から、同様の通報が、断続的に記録されることになる)
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