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第1章:凍てつく心
第2話:町の冷たさと、小さな温もり
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部屋に戻ると、外の寒さとは違う、底冷えするような孤独が宗次を待っていた。
そこへ、赤子の、先ほどよりも強くなった泣き声が響く。静寂に慣れきっていた耳には、拷問のように響いた。宗次は、自分がとんでもないものを拾ってきてしまったのだと、改めて突きつけられた。
布団の上に寝かせた赤子は、手足をばたつかせ、顔を真っ赤にして泣いている。飢えているのだろうか。濡れているのだろうか。どうすれば、この泣き声が止むのか、皆目見当もつかない。
かつて、妻子がいた頃。幼い娘が泣けば、妻が手際よく世話をしていた。自分はただ、遠巻きに見ているだけだった。武士としての修練に明け暮れ、家庭のことなど妻に任せきりだった。その妻も娘も、もういない。
自分の手を見る。
この手は、刀を握り、人を斬るために鍛えられた手だ。その冷たく、節くれだった指先で、こんなにも柔らかく、か弱い生命にどう触れれば良いのか分からない。
おそるおそる、赤子の頬に触れてみる。熱があるのだろうか。それとも、ただ体温が高いだけか。判断もつかない。過去の自分が、どれほど無知で無力であったかを、こんな形で思い知らされるとは。
失敗への恐れが、冷たい汗となって背中を伝った。また、失うことになるのではないか。自分のせいで、この小さな命を──。
このままではいけない。誰かに聞かねば。そう思い立っても、誰に、どう聞けば良いのか。寺の住職は、関わらないと言った。それは、江戸の多くの人々の本音だろう。困っている者を見ても、皆、見て見ぬふりをするのが処世術だ。自分もそうしてきた。
だからこそ、今、自分が助けを求める側になって、その冷たさが身に染みた。
それでも、赤子の泣き声は止まない。腹の底から絞り出すようなその声を聞いていると、どうしようもなく胸が締め付けられた。
かつて、娘が病で苦しんだ時。あの時も、自分は何もできなかった。ただ、妻の顔色を窺い、医者の言葉に狼狽えるだけだった。あの時の無力感が、今、目の前の赤子を通して、生々しく蘇る。
意を決して、再び外へ出た。赤子をしっかりと包み直し、懐に抱く。外の寒さが、赤子の体温を奪っていくように感じて、思わず力を込めて抱きしめた。
向かったのは、寺の近くにある小さな商店が並ぶ通りだ。人の出入りがある場所なら、何か知っている者、あるいは世話の仕方を知っている者がいるかもしれない。
八百屋の店先に立つ、気の強そうな女将に声をかけてみた。事情を話すと、一瞬同情の色を見せたが、すぐに顔色が変わる。
「へえ。赤子かい。あんたさん、どこの誰かも分からねえ、訳ありの赤子を抱えて、この通りで何を聞こうってんだい? あんたさん自身が怪しいじゃねえか。うちは商売してんだ。厄介事に関わってる暇はねえんだよ。役所にでも連れて行っておくれ」
吐き捨てるような言葉。
宗次は、喉の奥がひりつくのを感じた。分かっていた。分かっていたはずだ。人々は自分たちの平和を乱されることを何より嫌う。見慣れない浪人が、出自不明の赤子を抱えているなど、それだけで警戒の対象だ。善意など、この街では贅沢品なのだ。
別の店、煎餅屋の婆さんに声をかけてみた。婆さんは、宗次の顔を見て少し怯んだが、赤子を見ると「おお、可哀想に」と呟いた。しかし、それ以上近づこうとはしない。
「世話の仕方…? ああ、わしにはもう遠い昔のことでねぇ。それに、わしも年寄りだから、人の子を預かるなんて無理だよ。いい人に見つけてもらうんだよ…」
申し訳なさそうな顔で、しかしはっきりと断られた。優しさはあるのかもしれない。だが、それは他人事としての優しさだ。自分たちの生活の範囲外にある不幸には、深く関わろうとしない。当然だ。それが、この江戸という街で生き抜く知恵なのだから。
宗次は、再び深い孤独の中に沈んでいくのを感じた。どこへ行っても、自分は一人だ。この子と、二人きりだ。
心臓のあたりが、鉛のように重くなる。やはり、無理なのだ。自分には、この子を救うことなどできはしない。自分自身さえ、どうすることもできないというのに。
赤子の泣き声が、先ほどから少しずつ弱くなっていることに気づく。力尽きているのだろうか。このまま、自分の腕の中で、静かに息を引き取ってしまうのだろうか。あの時と同じように。あの、何もできなかった時と──。
凍てつくような絶望が、再び宗次を支配しようとした、その時だった。
通りを歩いていた若い女が、宗次の傍で立ち止まった。地味な身なりで、川で洗い物でもしてきたのか、大きな包みを抱えている。彼女は宗次を見た後、その懐に抱かれた赤子に目を留めた。何か言いたげに、しかし躊躇っている様子だった。宗次は警戒した。また、冷たい言葉を浴びせられるのだろうか。
しかし、女は何も言わず、ただ宗次に歩み寄った。そして、宗次の赤子の抱き方が危ういことに気づいたようで、そっと、しかし確かな手つきで宗次の腕の位置を直した。
「もっと、しっかりこう…脇の下を支えてあげて」
小さな声だった。
指示に従って抱き直すと、なるほど、赤子が少し落ち着いたように感じた。女は、抱えていた洗い物の包みから、まだ乾ききっていない、しかし清潔な布きれを一枚取り出した。
「これ…おくるみにでもしてあげて」
そう言って、布を宗次に差し出した。見返りを求めるでもなく、詮索するでもない、ただ純粋な施しだった。宗次は、呆然とその布を受け取った。
「あ…ありがとう、ございます…」
声が、掠れた。女は微笑みもせず、ただ静かに頷くと、そのまま立ち去ろうとする。
「あの…」
思わず呼び止めた。
「お、お名前は…?」
女は振り返り、宗次と、そして赤子を交互に見た。そして、ほんの僅か、寂しげな笑みを浮かべた。
「名は…お春と申します。困った時は…また誰かに聞くといい。きっと、誰かが…」
最後まで言わず、お春は去っていった。後に残されたのは、宗次と、赤子、そしてお春がくれた布きれだった。
お春のくれた布は、まだかすかに温かさが残っていた。それは、この街の冷たさの中にあって、あまりにも小さな、しかし確かな温もりだった。宗次は部屋に戻り、赤子をその布で包んでやった。赤子は、安心したのか、静かに寝息を立て始めた。
眠る赤子の顔を見つめる。そして、その傍らに置かれた迷子札を再び手に取った。
あの女将や婆さん。そして、お春。同じ街に生きる人間なのに、これほどまでに違うのか。絶望と無関心の中で、なぜお春はあの小さな温もりをくれたのだろう。
この子をこのままにしておいてはならない。
それは理屈ではなく、お春のくれた温もりと、腕の中に眠る命の重さが、宗次の心に刻みつけた真実だった。役所でもない。誰かに任せるのでもない。この迷子札に隠された謎を解き、この子が何者なのか、なぜここにいるのかを、「見届ける」のは、自分しかいないのだ。
迷子札の裏に描かれた絵図を再び見つめる。
これが、この子と、そして宗次自身の物語の始まりなのだ。行く手には、どんな困難が待ち受けているか分からない。江戸という街の冷たさも、身に染みた。
だが、お春の小さな温もりが、凍てつきかけた宗次の心に、探求の火を灯した。
この小さな手掛かりを頼りに、進むしかない。あの時守れなかった命のためにも、そして、今、目の前にあるこの小さな命のために。
そこへ、赤子の、先ほどよりも強くなった泣き声が響く。静寂に慣れきっていた耳には、拷問のように響いた。宗次は、自分がとんでもないものを拾ってきてしまったのだと、改めて突きつけられた。
布団の上に寝かせた赤子は、手足をばたつかせ、顔を真っ赤にして泣いている。飢えているのだろうか。濡れているのだろうか。どうすれば、この泣き声が止むのか、皆目見当もつかない。
かつて、妻子がいた頃。幼い娘が泣けば、妻が手際よく世話をしていた。自分はただ、遠巻きに見ているだけだった。武士としての修練に明け暮れ、家庭のことなど妻に任せきりだった。その妻も娘も、もういない。
自分の手を見る。
この手は、刀を握り、人を斬るために鍛えられた手だ。その冷たく、節くれだった指先で、こんなにも柔らかく、か弱い生命にどう触れれば良いのか分からない。
おそるおそる、赤子の頬に触れてみる。熱があるのだろうか。それとも、ただ体温が高いだけか。判断もつかない。過去の自分が、どれほど無知で無力であったかを、こんな形で思い知らされるとは。
失敗への恐れが、冷たい汗となって背中を伝った。また、失うことになるのではないか。自分のせいで、この小さな命を──。
このままではいけない。誰かに聞かねば。そう思い立っても、誰に、どう聞けば良いのか。寺の住職は、関わらないと言った。それは、江戸の多くの人々の本音だろう。困っている者を見ても、皆、見て見ぬふりをするのが処世術だ。自分もそうしてきた。
だからこそ、今、自分が助けを求める側になって、その冷たさが身に染みた。
それでも、赤子の泣き声は止まない。腹の底から絞り出すようなその声を聞いていると、どうしようもなく胸が締め付けられた。
かつて、娘が病で苦しんだ時。あの時も、自分は何もできなかった。ただ、妻の顔色を窺い、医者の言葉に狼狽えるだけだった。あの時の無力感が、今、目の前の赤子を通して、生々しく蘇る。
意を決して、再び外へ出た。赤子をしっかりと包み直し、懐に抱く。外の寒さが、赤子の体温を奪っていくように感じて、思わず力を込めて抱きしめた。
向かったのは、寺の近くにある小さな商店が並ぶ通りだ。人の出入りがある場所なら、何か知っている者、あるいは世話の仕方を知っている者がいるかもしれない。
八百屋の店先に立つ、気の強そうな女将に声をかけてみた。事情を話すと、一瞬同情の色を見せたが、すぐに顔色が変わる。
「へえ。赤子かい。あんたさん、どこの誰かも分からねえ、訳ありの赤子を抱えて、この通りで何を聞こうってんだい? あんたさん自身が怪しいじゃねえか。うちは商売してんだ。厄介事に関わってる暇はねえんだよ。役所にでも連れて行っておくれ」
吐き捨てるような言葉。
宗次は、喉の奥がひりつくのを感じた。分かっていた。分かっていたはずだ。人々は自分たちの平和を乱されることを何より嫌う。見慣れない浪人が、出自不明の赤子を抱えているなど、それだけで警戒の対象だ。善意など、この街では贅沢品なのだ。
別の店、煎餅屋の婆さんに声をかけてみた。婆さんは、宗次の顔を見て少し怯んだが、赤子を見ると「おお、可哀想に」と呟いた。しかし、それ以上近づこうとはしない。
「世話の仕方…? ああ、わしにはもう遠い昔のことでねぇ。それに、わしも年寄りだから、人の子を預かるなんて無理だよ。いい人に見つけてもらうんだよ…」
申し訳なさそうな顔で、しかしはっきりと断られた。優しさはあるのかもしれない。だが、それは他人事としての優しさだ。自分たちの生活の範囲外にある不幸には、深く関わろうとしない。当然だ。それが、この江戸という街で生き抜く知恵なのだから。
宗次は、再び深い孤独の中に沈んでいくのを感じた。どこへ行っても、自分は一人だ。この子と、二人きりだ。
心臓のあたりが、鉛のように重くなる。やはり、無理なのだ。自分には、この子を救うことなどできはしない。自分自身さえ、どうすることもできないというのに。
赤子の泣き声が、先ほどから少しずつ弱くなっていることに気づく。力尽きているのだろうか。このまま、自分の腕の中で、静かに息を引き取ってしまうのだろうか。あの時と同じように。あの、何もできなかった時と──。
凍てつくような絶望が、再び宗次を支配しようとした、その時だった。
通りを歩いていた若い女が、宗次の傍で立ち止まった。地味な身なりで、川で洗い物でもしてきたのか、大きな包みを抱えている。彼女は宗次を見た後、その懐に抱かれた赤子に目を留めた。何か言いたげに、しかし躊躇っている様子だった。宗次は警戒した。また、冷たい言葉を浴びせられるのだろうか。
しかし、女は何も言わず、ただ宗次に歩み寄った。そして、宗次の赤子の抱き方が危ういことに気づいたようで、そっと、しかし確かな手つきで宗次の腕の位置を直した。
「もっと、しっかりこう…脇の下を支えてあげて」
小さな声だった。
指示に従って抱き直すと、なるほど、赤子が少し落ち着いたように感じた。女は、抱えていた洗い物の包みから、まだ乾ききっていない、しかし清潔な布きれを一枚取り出した。
「これ…おくるみにでもしてあげて」
そう言って、布を宗次に差し出した。見返りを求めるでもなく、詮索するでもない、ただ純粋な施しだった。宗次は、呆然とその布を受け取った。
「あ…ありがとう、ございます…」
声が、掠れた。女は微笑みもせず、ただ静かに頷くと、そのまま立ち去ろうとする。
「あの…」
思わず呼び止めた。
「お、お名前は…?」
女は振り返り、宗次と、そして赤子を交互に見た。そして、ほんの僅か、寂しげな笑みを浮かべた。
「名は…お春と申します。困った時は…また誰かに聞くといい。きっと、誰かが…」
最後まで言わず、お春は去っていった。後に残されたのは、宗次と、赤子、そしてお春がくれた布きれだった。
お春のくれた布は、まだかすかに温かさが残っていた。それは、この街の冷たさの中にあって、あまりにも小さな、しかし確かな温もりだった。宗次は部屋に戻り、赤子をその布で包んでやった。赤子は、安心したのか、静かに寝息を立て始めた。
眠る赤子の顔を見つめる。そして、その傍らに置かれた迷子札を再び手に取った。
あの女将や婆さん。そして、お春。同じ街に生きる人間なのに、これほどまでに違うのか。絶望と無関心の中で、なぜお春はあの小さな温もりをくれたのだろう。
この子をこのままにしておいてはならない。
それは理屈ではなく、お春のくれた温もりと、腕の中に眠る命の重さが、宗次の心に刻みつけた真実だった。役所でもない。誰かに任せるのでもない。この迷子札に隠された謎を解き、この子が何者なのか、なぜここにいるのかを、「見届ける」のは、自分しかいないのだ。
迷子札の裏に描かれた絵図を再び見つめる。
これが、この子と、そして宗次自身の物語の始まりなのだ。行く手には、どんな困難が待ち受けているか分からない。江戸という街の冷たさも、身に染みた。
だが、お春の小さな温もりが、凍てつきかけた宗次の心に、探求の火を灯した。
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