木漏れ日の中で

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少しだけ気分も晴れた僕は更衣室へ向かう。
あのベンチで寝ている間に実戦の授業は終わっている。
何か言われるだろうかと、少し不安になるが居ても居なくても何か言われるのだからまぁ、いいだろう。
僕のロッカーへ行き扉を開ける。

「・・・え」
制服と言ってもワイシャツだけどびしょびしょに濡れていた。
「服、着替えられないじゃん。」
ポツリと呟き扉を閉める。
少し考えてからこのまま戻ることに決める。
前の時間の僕は立っているだけで汗はそんなにかいていないし、校舎裏で休んでいたからとっくに体も冷えている。

制服は・・あとで回収に来よう。
のんびりと授業が始まっている校舎の中を歩きゆっくりと扉を開ける。
みんなの視線がこちらを向いたがスルー。
一番端の奥の席なので歩いている時間も長い。
「おい、その服はなんだ。」
僕の背中に声をかけられたので席に座って答える。
「僕の制服が濡らされていたので。きっとまだ魔力のコントロールがうまくいかないんですよね。分かってます。さっき見てましたから。だから仕方なくこのまま受けることにしたんです。」
僕が頬杖をつきながら答えると、教員は少しイラついた顔をしてすぐに嫌な笑みを浮かべながら言った。
「ほう。しかし遅刻は遅刻だ。授業から30分も経っている。お前には追加で課題を出す。明後日の授業までにもってこい。」
ヒュンと杖を一振すると、僕の机には束になったプリントが積まれる。軽く内容を見てみると明らかに2日で終わるものではない。
「・・・」
あからさまな嫌がらせに反論する気も起きず黙ってプリントをしまおうとすると、パシッと杖で手を叩かれる。
「返事は?」
「・・・はい」
僕が答えるとこのやり取りを見ていた生徒はクスクスと笑い出す。

今日も徹夜かな。
あとで制服も取りに行かなきゃ。

なんて考えているといつの前にか授業も終わっていて談笑しながら帰りの支度をしている生徒で賑やかだ。
少しだけ、ほんの少しだけ羨ましいと思いながら見つめていた。その時だった。
「アベルいる?」
クラスにはいない声とその声が告げた名前にクラス中が扉の先に注目した。僕もだ。
僕に用がある人なんてやっていない不正を咎めるために来る教員くらいだろう。
でもこの声は違う。
この声は・・・
「せ、セドリック様?」
驚いて呟く僕の声を彼は拾ったらしい。
どれだけ耳がいいのか。
「あ、いたいた。さっきハンカチ落としてたから届けに来たんだよね。ついでに一緒に帰ろうと思って」
にこやかに言いながら手を振る彼。
僕に向けられるクラス中の視線はかなり痛くて怖い。

こんな中で断るなんてきっと非難轟々だろう。あまり人とは関わりたくないが、仕方なく今日の課題と予習復習のために使う適すのを詰め込んで彼の元へ向かう。
「ハンカチ、ありがとうございます。」
「おう。」
「でも、もうやめてください」
「それはなんで?」
勇気を出して言った言葉も理由を問われると詰まってしまう。
またベンチのときみたいに俯く僕の手を、振り返ったセドリックが握る。
「こっち来て。」
連れて行かれたのはあのベンチ。
「はい座って。あのね、理由は別に話さなくてもいいよ。でも俺は君と仲良くしたい。だめ?」
「・・・っ、だめ、、ではないです。でも、あんまり目立ちたくないんです。一緒にいるところをみられたら誤解されちゃう。」
「誤解?」
「う、うん。僕はセドリック様まで悪く言われるのは嫌です。」
するとセドリック様はふと笑い頭を撫でてきた。
「心配してくれてるの?でも、俺は大丈夫。それより、アベルが友達になってくれない方が嫌だな。」
手のぬくもりに始めて安堵する。そして彼の言葉に少し焦る。
友達になってくれない方が嫌。
なんて言われたことがない。
気づけば両腕を掴まれて僕からのリアクションを待っている。
逃げられないと悟った僕は仕方なく返事をした。
「・・・わかり、ました。でも、人前では本当に辞めてください。昼休みにこのベンチに来るので・・・」
言いかけたところで彼は僕を引き寄せ抱きしめる。
「本当?お友達なってくれるんだ。分かった。人前ではなるべく話しかけないよ。昼休みにここに来てくれるんだね。俺、明日から楽しみだな。」
僕は彼から与えられる温もりに離せという気力もなくしてされるがまま撫で回されることにした。
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