盗賊に誘拐されました。

曼珠沙華

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私はカルム国という小さな国の王女だった。

水も土地も豊かで、周りの国とのいさかいもなく、平和な国だった。

優しい父母、王子である兄に育てられ、なんの不自由もない生活だった。

いや、むしろ父母は過保護すぎるくらいだった。

本来なら将来嫁に出す娘のためにいろいろ国のことなど学ばせるものなのだろうが、父母は一切私に外のことを教えてはくれなかった。




ある時、父母と兄が他国からの手紙を見て、顔を真っ青にした。

大臣たちをも巻き込み、父母と兄は部屋に閉じこもって何かを話し合っていた。


「どうしたの?私も知りたい」


しかし、父母たちは私に話を聞かせようとはしなかった。


「自分の部屋にいなさい」


それだけを言って、私を部屋に閉じ込め、見張りまでつけた。


なによ。
私だってお兄様のように国のことをもっと知りたい。
お兄様のように役には立てなくとも話を聞くくらいいいじゃない。

むすっと頬をふくらませ、ベッドに横になる。


お父様たちはどうして私に外の世界を教えてくれないんだろう。
娘ってそういうものなのかしら。


考えているうちにいつの間にか眠ってしまっていた。


「リン……リン……」


呼ばれて起きると部屋に父母と兄がいた。

三人とも悲しげな表情をしていた。
母にいたっては、顔を覆い泣いているようだ。


「リン、よく聞きなさい。お前は今からこの城を出るんだ」

「え……」


この城から、出る?


「どういうこと」

「あまり時間がない。詳しいことは後ほど話す。お前はとにかく北にある別荘に行くんだ。しばらくはそこで過ごしなさい」

「別荘?」

「王族やごくわずかな者たちしか知らない場所だ」

「どうして……」

「いいから早く!」


いつもは穏やかな父の大きな声にびくりと身体が震えた。


数人のお供を連れて城を出た時には外は暗く、真夜中だった。


訳も分からないまま馬車に揺られ、外の世界を知らない私は不安と恐怖に包まれた。


どうしてお父様は私を別荘に……?
あの手紙と何か関係があるの……?


考えても、知識が乏しい私には見当もつかない。



その時、


「盗賊だぁぁーーー!!」


大きな音とともに、馬車が急に止まった。
荒々しい動きに体制が崩れ、どこかに頭をぶつけてしまう。


なに?盗賊?

物語で読んだことがある。
確か、人から物を盗む人たち。


馬車の扉が開く。

怖い。

「みーつけた」

にやりと顔を歪ませて笑う男。


物語の中では乱暴で、残虐な盗賊たち。

怖い。

男は私の顔を見ると、目を見開き、そしてがしっと肩を掴んできた。


殺される。


「怪我してんじゃねぇか!」


……え?


外の世界を知らない私。
物語の中ではとても怖い盗賊。


けれど、目の前の盗賊はとても優しい人だった。
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