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愛しい君の好きな物 ウィリアム編1 【ローズ】
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「ねぇ、メアリー。どっちがいいと思う?」
とある日、メアリーを自室に招き、私は今、鏡とにらめっこしていた。
鏡台の上には髪を結うためのリボンが二つ。
赤色と青色のリボンだった。
事の始まりは今日のお昼のことだった。
食堂で食事をしていた私とメアリーの元にウィリアム様が来て、おっしゃられた一言がきっかけだった。
「ローズ、明日の休み一緒に街へ出掛けよう」
持っていたフォークを落としそうになった。
そんなお誘いは初めてだった。
ウィリアム様はこの国の王子様で気軽に出掛けたりできる方ではない。
だから婚約者同士といえども、二人で会うのはウィリアム様が私の家に訪ねてくださった時だけだった。
「え、大丈夫なのですか?」
「うん。まぁ護衛はつくと思うけど。父上たちの許可はもらったから、たまにはね」
「まぁ、そうなのですね。予定は空いてますから、私でよろしければ」
「じゃあ明日、迎えに来るね」
嬉しそうに微笑むウィリアム様は本当にかっこいい。
こんな顔されたら、そりゃヒロインのメアリーも好きになっちゃうよ。
ちらりとメアリーを見る。
メアリーはただじっとウィリアム様を見ていた。
見つめている?
これって、メアリーも誘った方がいい……のかな。
ウィリアム様も、メアリーもまだお互いを意識している感じはない。
でも二人の心の内は分からないわけだし。
どちらかはもう好意を抱いているかもしれない。
ここで私がメアリーも誘えば、少なくとも二人の恋路を邪魔する悪役令嬢という印象は回避できるんじゃないだろうか。
「ねぇ、メアリー」
隣のメアリーに声をかける。
だが、続きを言うより先に、
「ローズ。ふ、た、り、で、だからね」
ウィリアム様の言葉によって遮られてしまった。
そういうわけで明日ウィリアム様と街へ出掛けることになった私はそのままメアリーを家へ誘い、今に至る。
前世はほとんどの時間を病院で過ごした私。
男の人と二人で出掛けるなんて、当然したことないわけで。
何を着ていけばいいの?
一応、デート、なんだよね?
まだ婚約者なんだし……。
分からない。
ウィリアム様が去った後、メアリーの両手を握って、恥を捨てて頼んだ。
『お願い、メアリー!今日うちに来て!』
『え、えぇ……もちろんですわ』
あの時の複雑そうなメアリーの顔。
もしかして用事があったのに、付き合わせちゃったのかな。
「どちらでも、ローズ様にはお似合いと思いますわ」
赤か青かのリボンで悩んでいる私にメアリーはそう答えた。
「……」
えっと、なんか……メアリー、機嫌悪い?
無視されたりとかはないけれど、なんだかいつものメアリーの柔らかい雰囲気とは違う気がする。
不穏な空気を感じる。
どうして?
この家に来てからではない。
ウィリアム様とお会いしてからだ。
はっ!
もしかして!
少しだけ顔がにやけてしまう。
「メアリー、もしかしてウィリアム様のこと……」
「ありえませんわ」
まだ全てを言い終えていないのに、食い気味のNOだった。
もしかして照れて……。
「ローズ様が想像されているようなことは一切ございませんわ」
あれー……。
そこでふと気付く。
そうだ、私は一時的とはいえウィリアム様の婚約者だ。
そんな私に本当の気持ちなんて言えるわけない。
メアリーったら、本当の気持ちを隠して私との友情も大切にしてくれているのね。
どこまでいい子なの。
それなら、私はこれ以上追求したら駄目だね。
どちらも似合うと言ってくれたリボン。
私は、青色の方を手に取ろうとした。
すると、手に取るより先にメアリーに青色のリボンを奪われてしまった。
「え?」
「……ローズ様は、赤色の方が似合いますわ」
「そ、そう?」
メアリーは顔を背け、何かを呟いていたが、その言葉が私まで届くことはなかった。
「あぁ、口惜しいですわ。こんな状況でも、より魅力的なローズ様でいてほしいと思ってしまうなんて。ライバルを喜ばせてしまうだけなのに」
とある日、メアリーを自室に招き、私は今、鏡とにらめっこしていた。
鏡台の上には髪を結うためのリボンが二つ。
赤色と青色のリボンだった。
事の始まりは今日のお昼のことだった。
食堂で食事をしていた私とメアリーの元にウィリアム様が来て、おっしゃられた一言がきっかけだった。
「ローズ、明日の休み一緒に街へ出掛けよう」
持っていたフォークを落としそうになった。
そんなお誘いは初めてだった。
ウィリアム様はこの国の王子様で気軽に出掛けたりできる方ではない。
だから婚約者同士といえども、二人で会うのはウィリアム様が私の家に訪ねてくださった時だけだった。
「え、大丈夫なのですか?」
「うん。まぁ護衛はつくと思うけど。父上たちの許可はもらったから、たまにはね」
「まぁ、そうなのですね。予定は空いてますから、私でよろしければ」
「じゃあ明日、迎えに来るね」
嬉しそうに微笑むウィリアム様は本当にかっこいい。
こんな顔されたら、そりゃヒロインのメアリーも好きになっちゃうよ。
ちらりとメアリーを見る。
メアリーはただじっとウィリアム様を見ていた。
見つめている?
これって、メアリーも誘った方がいい……のかな。
ウィリアム様も、メアリーもまだお互いを意識している感じはない。
でも二人の心の内は分からないわけだし。
どちらかはもう好意を抱いているかもしれない。
ここで私がメアリーも誘えば、少なくとも二人の恋路を邪魔する悪役令嬢という印象は回避できるんじゃないだろうか。
「ねぇ、メアリー」
隣のメアリーに声をかける。
だが、続きを言うより先に、
「ローズ。ふ、た、り、で、だからね」
ウィリアム様の言葉によって遮られてしまった。
そういうわけで明日ウィリアム様と街へ出掛けることになった私はそのままメアリーを家へ誘い、今に至る。
前世はほとんどの時間を病院で過ごした私。
男の人と二人で出掛けるなんて、当然したことないわけで。
何を着ていけばいいの?
一応、デート、なんだよね?
まだ婚約者なんだし……。
分からない。
ウィリアム様が去った後、メアリーの両手を握って、恥を捨てて頼んだ。
『お願い、メアリー!今日うちに来て!』
『え、えぇ……もちろんですわ』
あの時の複雑そうなメアリーの顔。
もしかして用事があったのに、付き合わせちゃったのかな。
「どちらでも、ローズ様にはお似合いと思いますわ」
赤か青かのリボンで悩んでいる私にメアリーはそう答えた。
「……」
えっと、なんか……メアリー、機嫌悪い?
無視されたりとかはないけれど、なんだかいつものメアリーの柔らかい雰囲気とは違う気がする。
不穏な空気を感じる。
どうして?
この家に来てからではない。
ウィリアム様とお会いしてからだ。
はっ!
もしかして!
少しだけ顔がにやけてしまう。
「メアリー、もしかしてウィリアム様のこと……」
「ありえませんわ」
まだ全てを言い終えていないのに、食い気味のNOだった。
もしかして照れて……。
「ローズ様が想像されているようなことは一切ございませんわ」
あれー……。
そこでふと気付く。
そうだ、私は一時的とはいえウィリアム様の婚約者だ。
そんな私に本当の気持ちなんて言えるわけない。
メアリーったら、本当の気持ちを隠して私との友情も大切にしてくれているのね。
どこまでいい子なの。
それなら、私はこれ以上追求したら駄目だね。
どちらも似合うと言ってくれたリボン。
私は、青色の方を手に取ろうとした。
すると、手に取るより先にメアリーに青色のリボンを奪われてしまった。
「え?」
「……ローズ様は、赤色の方が似合いますわ」
「そ、そう?」
メアリーは顔を背け、何かを呟いていたが、その言葉が私まで届くことはなかった。
「あぁ、口惜しいですわ。こんな状況でも、より魅力的なローズ様でいてほしいと思ってしまうなんて。ライバルを喜ばせてしまうだけなのに」
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