ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。

曼珠沙華

文字の大きさ
20 / 22

愛しい君の好きな物 ウィリアム編1 【ローズ】

しおりを挟む
「ねぇ、メアリー。どっちがいいと思う?」

とある日、メアリーを自室に招き、私は今、鏡とにらめっこしていた。

鏡台の上には髪を結うためのリボンが二つ。
赤色と青色のリボンだった。




事の始まりは今日のお昼のことだった。
食堂で食事をしていた私とメアリーの元にウィリアム様が来て、おっしゃられた一言がきっかけだった。

「ローズ、明日の休み一緒に街へ出掛けよう」

持っていたフォークを落としそうになった。

そんなお誘いは初めてだった。

ウィリアム様はこの国の王子様で気軽に出掛けたりできる方ではない。
だから婚約者同士といえども、二人で会うのはウィリアム様が私の家に訪ねてくださった時だけだった。

「え、大丈夫なのですか?」

「うん。まぁ護衛はつくと思うけど。父上たちの許可はもらったから、たまにはね」

「まぁ、そうなのですね。予定は空いてますから、私でよろしければ」

「じゃあ明日、迎えに来るね」

嬉しそうに微笑むウィリアム様は本当にかっこいい。

こんな顔されたら、そりゃヒロインのメアリーも好きになっちゃうよ。

ちらりとメアリーを見る。
メアリーはただじっとウィリアム様を見ていた。
見つめている?
これって、メアリーも誘った方がいい……のかな。

ウィリアム様も、メアリーもまだお互いを意識している感じはない。

でも二人の心の内は分からないわけだし。

どちらかはもう好意を抱いているかもしれない。

ここで私がメアリーも誘えば、少なくとも二人の恋路を邪魔する悪役令嬢という印象は回避できるんじゃないだろうか。

「ねぇ、メアリー」

隣のメアリーに声をかける。

だが、続きを言うより先に、

「ローズ。ふ、た、り、で、だからね」

ウィリアム様の言葉によって遮られてしまった。





そういうわけで明日ウィリアム様と街へ出掛けることになった私はそのままメアリーを家へ誘い、今に至る。

前世はほとんどの時間を病院で過ごした私。
男の人と二人で出掛けるなんて、当然したことないわけで。

何を着ていけばいいの?
一応、デート、なんだよね?
まだ婚約者なんだし……。

分からない。

ウィリアム様が去った後、メアリーの両手を握って、恥を捨てて頼んだ。

『お願い、メアリー!今日うちに来て!』

『え、えぇ……もちろんですわ』

あの時の複雑そうなメアリーの顔。
もしかして用事があったのに、付き合わせちゃったのかな。

「どちらでも、ローズ様にはお似合いと思いますわ」

赤か青かのリボンで悩んでいる私にメアリーはそう答えた。

「……」

えっと、なんか……メアリー、機嫌悪い?

無視されたりとかはないけれど、なんだかいつものメアリーの柔らかい雰囲気とは違う気がする。
不穏な空気を感じる。

どうして?

この家に来てからではない。
ウィリアム様とお会いしてからだ。

はっ!
もしかして!

少しだけ顔がにやけてしまう。

「メアリー、もしかしてウィリアム様のこと……」

「ありえませんわ」

まだ全てを言い終えていないのに、食い気味のNOだった。

もしかして照れて……。

「ローズ様が想像されているようなことは一切ございませんわ」

あれー……。

そこでふと気付く。
そうだ、私は一時的とはいえウィリアム様の婚約者だ。
そんな私に本当の気持ちなんて言えるわけない。

メアリーったら、本当の気持ちを隠して私との友情も大切にしてくれているのね。
どこまでいい子なの。

それなら、私はこれ以上追求したら駄目だね。

どちらも似合うと言ってくれたリボン。
私は、青色の方を手に取ろうとした。

すると、手に取るより先にメアリーに青色のリボンを奪われてしまった。

「え?」

「……ローズ様は、赤色の方が似合いますわ」

「そ、そう?」

メアリーは顔を背け、何かを呟いていたが、その言葉が私まで届くことはなかった。











「あぁ、口惜しいですわ。こんな状況でも、より魅力的なローズ様でいてほしいと思ってしまうなんて。ライバルを喜ばせてしまうだけなのに」
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

最高魔導師の重すぎる愛の結末

甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。 いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。 呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。 このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。 銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。 ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。 でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする…… その感は残念ならが当たることになる。 何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!

158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・ 2話完結を目指してます!

ヤンデレ彼氏の扱い方

小梅
恋愛
ヤンデレ彼氏高橋くんと男前彼女真木さんの話。

処理中です...