俺の可愛いお嬢様を、悪役令嬢にはさせません!

曼珠沙華

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あっ、と思った時には俺の視界は上下逆転していた。

女の子の叫び声が聞こえる。

だが、それも一瞬のことですぐに目の前は真っ暗になった。


*


「お兄ちゃーーん!」

うるっさいなぁ、もう……。

「お兄ちゃんってば!起きてよ!起きろー!」

あぁ、またお前は年頃の男の部屋に勝手に入って……。

「『アイリス国の祝福』届いたよー!」

「同志よ、それを早く言えー!」


*


はっと目が覚めた。

ふかふかのベッド、窓から差し込む日差し、消毒液のツンとした匂い。

「あれ、俺……えっと、なんだっけ……」

考えようとしてうまくいかない。頭が痛い。

とりあえず周囲を確認しようと首を動かす。

すぐ傍に女の子がいた。

えーっと……。

みるみる少女の顔が歪む。

いや、待って待って。

だが、願いは叶わず……。

「うわぁぁぁーーーーん!」

「申し訳ありませんでした、お嬢様ーー!!泣かないでぇぇーーー!!」

俺の名は、オリオン・ハーツ。

さっきのは夢であり、夢ではない。

あれは俺の前世の記憶。

そしてここは前世ではまっていた乙女ゲーム『アイリス国の祝福』の世界。

そしてそして、俺の前で泣きじゃくる可愛らしい少女は公爵令嬢イザベラ・テイラー。


未来の悪役令嬢である。
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