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自分が望まれて生まれた子ではないと知ったのは、母が死んでからだった。
鞭を振るう義母がよく私の出生の理由を教えてくれた。
当時王子だった国王が気まぐれで手を出しただけの女。それがお前の母親だ、とか。
愛し合ってできた子ではないお前なんて母親から憎まれていたに決まっている、とか。
お前を憎んで死んでいったんだ、とか。
母が私を愛していない理由を並び立てられ、私は自分が生まれた理由を知った。
でも母の愛に対する義母の言葉は、全て嘘だと分かっていた。
死ぬ間際まで母がどれだけ私を愛してくれていたか義母は知らない。
義母の言葉だけで母を疑うなど、母の大きな愛の前では不可能なことだった。
確かに望んで生んだ子ではなかったかもしれない。
でも母は私にいろんなことを教えてくれた。
踊り子として世界中を回り、どんな景色を見てきたか。
どんな人たちと出会ってきたか。
私がいつでもお嫁にいけるようにと挨拶や食事のマナーも教えてくれた。
「オリビアはとても綺麗に食事するね」
ロゼ様が優しく微笑む。
ロゼ様と朝食を共にし、もったいないような言葉を頂き、改めて母に感謝した。
母のおかげで今この場で恥ずかしい思いをせずに済んでいる。
母を妾と呼ぼうと、私が妾の娘と呼ばれようと、母は私の誇りだった。
「母が教えてくれたんです。いつか必要になるからと」
「そう。お母さんは知っていたのかもね。オリビアがいつかお妃様になるって」
「そ、そこまでは……」
お妃様。
それはつまりロゼ様と結婚するということで……。
もちろんその予定でここにいるわけだけど、改めて口に出されると複雑な気持ちだった。
嬉しい。
けれど、叶わない未来。
私なんかが妃なんて大層なものになれるわけないけど。
ただロゼ様と結婚する未来を純粋に喜べたらよかったのに。
「オリビアのお母さん、素敵な人だもんね」
「え……」
母を知ってるような口ぶり。
どういうことか聞き返そうとするより先に、ロゼ様が話題を変えた。
「さて、今日は街にでも行ってみる?」
「街、ですか?」
「うん。オリビアにこの街を見てほしくてね。どうかな」
街なんて、エメラルド国でも行ったことがなかった。
出国する時に馬車の窓から見ただけで、当然降りることはなかった。
けれど窓から見た景色は、いろんな建物が建ち並び、全てが初めて見るものだった。
大国であるサファイア国の街はきっともっとすごいものがあるに違いない。
母が教えてくれた景色の一部がきっとそこにある。
オリビアに迷う時間は必要なかった。
「見てみたいです!」
「よかった。じゃあ昼から出発するとしよう」
ロゼ様がラビンスを呼ぶ。
「街を歩くから軽装がいいね。ラビンス、頼んだよ」
「かしこまりました」
「あんまり可愛くしすぎないでね」
「善処します」
「可愛い」の言葉にまた顔が熱くなってしまう。
言われ慣れない言葉は胸の奥で熱を募らせ、どう処理していいのか分からない。
今だけ。
何度も心の中で唱えた。
今だけ、今だけこの幸せを嚙みしめていたい、と。
鞭を振るう義母がよく私の出生の理由を教えてくれた。
当時王子だった国王が気まぐれで手を出しただけの女。それがお前の母親だ、とか。
愛し合ってできた子ではないお前なんて母親から憎まれていたに決まっている、とか。
お前を憎んで死んでいったんだ、とか。
母が私を愛していない理由を並び立てられ、私は自分が生まれた理由を知った。
でも母の愛に対する義母の言葉は、全て嘘だと分かっていた。
死ぬ間際まで母がどれだけ私を愛してくれていたか義母は知らない。
義母の言葉だけで母を疑うなど、母の大きな愛の前では不可能なことだった。
確かに望んで生んだ子ではなかったかもしれない。
でも母は私にいろんなことを教えてくれた。
踊り子として世界中を回り、どんな景色を見てきたか。
どんな人たちと出会ってきたか。
私がいつでもお嫁にいけるようにと挨拶や食事のマナーも教えてくれた。
「オリビアはとても綺麗に食事するね」
ロゼ様が優しく微笑む。
ロゼ様と朝食を共にし、もったいないような言葉を頂き、改めて母に感謝した。
母のおかげで今この場で恥ずかしい思いをせずに済んでいる。
母を妾と呼ぼうと、私が妾の娘と呼ばれようと、母は私の誇りだった。
「母が教えてくれたんです。いつか必要になるからと」
「そう。お母さんは知っていたのかもね。オリビアがいつかお妃様になるって」
「そ、そこまでは……」
お妃様。
それはつまりロゼ様と結婚するということで……。
もちろんその予定でここにいるわけだけど、改めて口に出されると複雑な気持ちだった。
嬉しい。
けれど、叶わない未来。
私なんかが妃なんて大層なものになれるわけないけど。
ただロゼ様と結婚する未来を純粋に喜べたらよかったのに。
「オリビアのお母さん、素敵な人だもんね」
「え……」
母を知ってるような口ぶり。
どういうことか聞き返そうとするより先に、ロゼ様が話題を変えた。
「さて、今日は街にでも行ってみる?」
「街、ですか?」
「うん。オリビアにこの街を見てほしくてね。どうかな」
街なんて、エメラルド国でも行ったことがなかった。
出国する時に馬車の窓から見ただけで、当然降りることはなかった。
けれど窓から見た景色は、いろんな建物が建ち並び、全てが初めて見るものだった。
大国であるサファイア国の街はきっともっとすごいものがあるに違いない。
母が教えてくれた景色の一部がきっとそこにある。
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「見てみたいです!」
「よかった。じゃあ昼から出発するとしよう」
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「街を歩くから軽装がいいね。ラビンス、頼んだよ」
「かしこまりました」
「あんまり可愛くしすぎないでね」
「善処します」
「可愛い」の言葉にまた顔が熱くなってしまう。
言われ慣れない言葉は胸の奥で熱を募らせ、どう処理していいのか分からない。
今だけ。
何度も心の中で唱えた。
今だけ、今だけこの幸せを嚙みしめていたい、と。
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