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七話
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久々のデスペナルティ……と思うほど体感時間が長かった。実際にはそんな経ってない。しかしデスペナルティのほうが慣れてきた気がするな。現実の体に近いからかな。
とりあえずステータスを確認する……うわ、戦闘しただけでレベル上がってる。美味しいなぁあれ。また出てこないかな。
レベルアップに付随してスキルポイントも溜まってきたし、新しいスキルも取らなきゃな。AGI極振りだからスキル使わないと攻撃力も足りないし。
スキル取得欄を見ると知らないスキルが増えていた。ほとんどが知らないスキルなのには間違いがないのだがオネーチャンさんにお勧めされた物や教えてもらった初期スキルとも違うスキルだった。
スキルにフォーカスを合わせるとスキル取得条件・デュアルホーンラビットを一名以下での討伐となっていたのであの二本角ウサギを倒すことで解放されたのだろう。よく見ると二本角が使っていたスキルもちらほらみられる。
この分ではほかにもスキルが開放されているかもしれないと思いワクワクしてスキル欄を流すと明らかに場違いなスキルが並んでいた。
【 Action Skill : 《紫電一閃》 】
取得条件:【紫電纏う至高の二槍】の一槍を破壊する。
前提条件:兎系統-突進
【 Action Skill ≪雷牙咬差≫】
取得条件:【紫電纏う至高の二槍】の一槍を破壊する。
【 Action Skill: 《具足刈 -雷-》 】
取得条件:【紫電纏う至高の二槍】の一槍を破壊する。
前提条件:兎系統-足刈
スキル取得条件があるのも初めてだし前提条件も初めて見た。
これってあの電気ウサギが使ってた、理不尽なやつ。あれプレイヤーも使えるんだ。
一槍を破壊するってことは二本破壊やら討伐でも別のスキルがあるんだろうなぁ。いいなぁ電気ウサギ。またレベリングしてウサギ連続討伐したら出てきてくれるかなあれ。
ウキウキで前提条件がないスキルを取得……はさすがにスキルポイントが足りなかった。
まぁ明らかに適正外だよね。今回は大人しく武器系統のスキルを伸ばしていくことにした。ただ記念だから兎系統?はとろうかな。突進や足刈などあの二本角使っていたスキルが並ぶ中、まだ見ていないかつ取得できそうなスキルがあった。
【 Passive Skill: 《二刀流》 】
取得条件:デュアルホーンラビットの討伐
ふーん。
【コマイヌ】
称号 【駆け出しの冒険者】
BLV:7
CLV:7
H P《Hit Point》 : 500
M P《Magic Point》 : 100
STR《Strength》 : 10 +2
VIT《Vitality》 : 10
DEX《Dexterity》: 10
AGI《Agility》 : 10 +60
INT《Intelligence》: 10
スキル
【剣術:TLV4】
|---片手剣:LV1 ― スラッシュ
|---短剣:LV1 ― ラッシュ
|---短剣:LV2 ― ピアス
|---短剣:LV3 ― 飛燕
【軽装戦士:TLV1】
|---歩方:LV1 ― ステップ
【二刀流:TLV1】
|---二刀流:LV1 ― 二刀流
物珍しさから取得してしまった……
短剣系スキルツリー 《ピアス》
鋭い攻撃で敵の装甲を貫く。一定の防御力を無視して攻撃する。クリティカルが出やすい。
見た感じ便利スキルその一。このスキルを先に取っていれば二本角戦はもう少し楽だった。そんな気持ちから取得してしまった。
ステータスをAGIに振っている分の火力をスキルで補わなければいけないと思っているのでしばらく歩法とかは取れないかな。その点このスキルは助かりそうだ。
短剣系スキルツリー 《飛燕》
素早い動きで切り上げる。
便利スキルその二。このスキル説明だけではスラッシュとほぼ変わらなそうに見えるけど動作が少し特殊なスキルだ。
発動時点で地上でも空中でも少し飛び上がる。空中では発動できないステップ代わりに体勢を変えることもできるので採用した。スキルチェインにも組み込みやすそうだし短剣系は良いね。
二刀流スキルツリー 《二刀流》
武器を複数装備してもペナルティが発生しない。武器ごとにスキルを発動できる用になる。
補正値 (1):武器攻撃力×1.0 (2)武器攻撃力×0.5 (3)武器攻撃力×0.25
格好良かったので取った。スキル説明文を見る限り武器が複数装備できるようになって、電気ウサギみたいに武器ごとにリキャストが変わって、二本目は攻撃力が半分、三本目以降は四分の一になる。
電気ウサギのリキャストが違う再現と二本角があったからこれを取得できるんだろうけど僕武器二本ないし。それに三本装備ってなんだ、口に咥えるのか。手に二本ずつとか四本ずつ持つのか。
取得してから気づいたけど単純に火力が増すだけでなく飛燕とかの立ち回りに使えそうなスキルを連発できるのも助かる。早いとこ二本目の武器探したいな。
冷静に考えてもなんで武器一本しかない初心者装備が二刀流を取得したのか。初心者で二刀流見てないし、僕だけのスキルっぽくてかっこいい~って取ったけど、そりゃ初心者で武器二本持つなら一本強化するよ!盾とか持つよ!
とりあえず有り合わせというか初心者用の片手剣を持つ。試しになんとなく構えてみるが短剣と片手剣で左右のバランスが微妙に悪い。いや現実の剣道とかは短いのと長いのを持つらしいからこのバランスが適正なのかな。うーむ。
とりあえず少し街の広場から脇にそれてぶんぶんと剣を降ってみるがやっぱりバランスが悪い。武器買ってみようかな。幸いにもウサギの素材ならいっぱいあるしこれでも売って少しはお金の足しにして。
そう思いNPCショップでも利用するかと顔を上げるとどこからともなく、タレを絡め肉を焼いたような良い匂いが漂ってきた。
匂いの元を探すと裏路地とまでも行かないが広場にもギリギリ入らない程度の少し陰った所、筋骨隆々のアバターをしたおじさんが額に手ぬぐいを巻き汗をかきながらも豪快に火を仰ぎ串に刺した肉を焼いていた。
お店の外観はぱっと見他のプレイヤー露店やNPCショップのような風貌だが明らかに
「お祭りの的屋だ……」
僕が小声で呟いた感想は火の勢いに負けなかったようで、おじさんが首を回してこちらを見る。
「へいらっしゃい!肉食うか!」
気さくだ。お祭りになんて参加できたことがないけど世にいる的屋の人たちはみんなこんな感じなのだろうか。いやもう少し優しそうだろうな、なんかおじさんの目ギラギラしてるし。
しかし話しかけてくれて無視をするのも忍びないと感じたのでなるべく朗らかに対応する。
「こんにちはー、何のお店……」
気を抜いていたのだろう。あれだけ動き回った後でかつデスペナルティ中なのだからと。僕は小走りで駆け寄ろうとしたところ、上げたAGIに乗せた躓きにより、露店の裏からおじさんを膝かっくんする形になった。
「ぐあああああああああ」
「お、おじさあああああああん!」
結果的におじさんは炉のような物の中に飛び込んでいった。街中なのでスリップダメージがないことはわかっているがすごい絵面だ。
おじさんは少しもがいたあと、何かテクスチャが引っかかってしまったのか出れないらしく後ろから引っ張るようにジェスチャーしてくる。指示に従い後ろから思いっきり引っ張ろうとするも、どうやら他人には街中で強い衝撃を与えられないらしく、苦肉の策でおじさんが火の中に飛び込んだ状態でフレンド登録を申請した。
「ふぅ……えらい目にあった」
「本当に申し訳ありません……僕の膝が」
「あぁ、坊主の膝もあれだがコンロに関しちゃ運営に報告しないとな。思いっきり飛び込むやつなんていなかっただろうが、意外と再現性も高い」
「伝えときます……」
「…?」
父さんに伝えておこう。コンロの中に後ろから思いっきり飛び込むと、体が大きいアバターの場合抜けだせなくなるよって。どんな顔して言えばいいんだそれ。
「改めて『ローステンの肉屋』へようこそ!」
フレンド欄にローステンという名前が表示されていたのを思い出す。お肉屋さんだったんだ。そう思いつつ露店の品ぞろえを見ると、串に刺さり焼かれた肉が並んでいた。
「串肉屋さん…?」
「今はまだ店を構えるほどの資金がないからな。第一第二辺りのモンスター肉を串焼きして売ってるんだ。夢は街路に店を構えてそこで色んな肉を売ることだな」
なるほど。ウサギ肉がドロップしたけど料理するとこんな美味しそうになるんだな。僕はとりあえずお詫びにウサギ肉の串焼きを1つ買うことにした。
「あ、美味しい」
「そうだろうそうだろう。自慢じゃないが≪料理≫スキルと≪解体≫スキルは育ててあるんだ」
料理スキルはそのまんま料理をうまく作るスキルで、スキルの中には料理のレシピを閃く物、料理の時短に関係するスキルが、解体スキルは敵を倒した際にドロップする量やドロップした物の質がよくなるパッシブスキルなどがあるそうだ。
「へー、解体スキルは普通に便利そうですね」
「最初は微々たる差だがな。それにクラスレベルも最初こそ伸びやすいがどんどん伸びづらくなるからな。解体になど回していると戦闘組はスキルが足らん」
最初の数レベルはベースレベルとクラスレベルが同時にのびてくるが10レベル辺りを境にクラスレベルは伸びづらくなっていき、しかもスキルにポイントを割り振ってもスキルが手に入るわけでもなくなってくるそうだ。
「坊主……コマイヌは典型的なAGI型の軽装戦士ってところか。しかし先ほどの挙動、まさか極振りか」
「一回だけSTRに振りましたけどそれ以降は」
「随分難儀な道を選んだな。俺もβからやってるがAGI極振りはだいたい人外みたいなやつしかおらん」
「人外……」
まさかの非人類認定。オネーチャンさんはやんわりと危険性を指摘していたがあれはオブラートに包んでくれた上での発言だったのか。
「それに剣二本なんて背負いおって。まさかAGI型に加えて二刀流か」
「なんかノリで取っちゃったんで」
「後先考えないタイプってよく言われるだろう」
人生設計なら割と考えてるんですけどね。よく言われます。なんていうことは口に出さずにあははと苦笑いだけ返しておくとローステンさんも肩を竦めて笑ってくれた。
「二刀流ということはデュアルホーンラビットを倒してるだろう。それまでにウサギ肉はドロップしなかったか」
「あー、わりとあります」
「そうか。NPCの雑貨屋なんかよりは高く買い取るから幾らか売ってくれないか。肉ならいくらでも歓迎してる」
素材を売るというところがこんなところで叶うとは思わなかった。スタックした肉を手のひらに呼び出すと結晶が出る。お肉何個でも結晶は一つなんだな。
「じゃあトレード出すからこれに乗せてくれ」
「了解です」
トレード希望と書かれた半透明なボードに結晶を乗せるとトレードしますかと確認が現れ、了承すると結晶が帰ってくる。中身はお金のようだ。そのままお金を自分のインベントリに仕舞うとおじさんが忠告してくれた。
「まぁ俺は信念に変えても詐欺なんかしないが、この量だと相場も知らんだろう。これから俺以外とも取引をするなら、素材の相場というものは常に把握しておけ」
「商人っぽいこと言いますね、了解です」
俺は肉屋なんだから商人だと豪快に笑われた。僕も釣られて笑顔になるとおじさんのところへお客さんが訪れるらしく、僕はお別れを告げ街の中へ消えていくことにした。とりあえず次は武器屋を探さなきゃな。
◇
「AGI極振りか……人外ばかりと言ったが坊主もそうかもしれんな……」
肉に串を刺しながら一人呟く。ローステンは半ばあて勘でAGI極だと聞いたがまさか本当にそうだとは思ってもみなかった。
彼は確かにAGI極振りを見たことはある。しかしそれはβテストや一キャラ目で純粋にその速度に慣れたプレイヤーのみがやっていたビルドだ。
一キャラ目で極振りにしたプレイヤーも確かにいたが大抵はその後別のステータスに割り振りを行うか、固定のパーティーがいるプレイヤーだったはずだ。迷惑をかけることが前提にある割り振り。それがAGI極だった。
なのにあの少年はデュアルホーンラビット……ソロでの討伐なら推奨レベル10レベル以上のモンスターを倒していた。
「AGI極は人外……笑い話で言ったが本当だったかもしれんな」
手持ちにあった肉を全て串に刺し終え、インベントリからつけダレをオブジェクト化する。タレにつけていくと確かに足音がこちらへ近寄ってくるのをローステンは聞いた。
「らっしゃい、『ローステンの……』」
それは事前に来訪を伝えてきていた、気難しい客であることを察して笑顔を作り直した。
「『ローステンの情報屋』へようこそ。何をお探しか」
「ああ、復讐者を出したAGI振りの少年」
「それなら丁度、新鮮なのが入ったぞ」
とりあえずステータスを確認する……うわ、戦闘しただけでレベル上がってる。美味しいなぁあれ。また出てこないかな。
レベルアップに付随してスキルポイントも溜まってきたし、新しいスキルも取らなきゃな。AGI極振りだからスキル使わないと攻撃力も足りないし。
スキル取得欄を見ると知らないスキルが増えていた。ほとんどが知らないスキルなのには間違いがないのだがオネーチャンさんにお勧めされた物や教えてもらった初期スキルとも違うスキルだった。
スキルにフォーカスを合わせるとスキル取得条件・デュアルホーンラビットを一名以下での討伐となっていたのであの二本角ウサギを倒すことで解放されたのだろう。よく見ると二本角が使っていたスキルもちらほらみられる。
この分ではほかにもスキルが開放されているかもしれないと思いワクワクしてスキル欄を流すと明らかに場違いなスキルが並んでいた。
【 Action Skill : 《紫電一閃》 】
取得条件:【紫電纏う至高の二槍】の一槍を破壊する。
前提条件:兎系統-突進
【 Action Skill ≪雷牙咬差≫】
取得条件:【紫電纏う至高の二槍】の一槍を破壊する。
【 Action Skill: 《具足刈 -雷-》 】
取得条件:【紫電纏う至高の二槍】の一槍を破壊する。
前提条件:兎系統-足刈
スキル取得条件があるのも初めてだし前提条件も初めて見た。
これってあの電気ウサギが使ってた、理不尽なやつ。あれプレイヤーも使えるんだ。
一槍を破壊するってことは二本破壊やら討伐でも別のスキルがあるんだろうなぁ。いいなぁ電気ウサギ。またレベリングしてウサギ連続討伐したら出てきてくれるかなあれ。
ウキウキで前提条件がないスキルを取得……はさすがにスキルポイントが足りなかった。
まぁ明らかに適正外だよね。今回は大人しく武器系統のスキルを伸ばしていくことにした。ただ記念だから兎系統?はとろうかな。突進や足刈などあの二本角使っていたスキルが並ぶ中、まだ見ていないかつ取得できそうなスキルがあった。
【 Passive Skill: 《二刀流》 】
取得条件:デュアルホーンラビットの討伐
ふーん。
【コマイヌ】
称号 【駆け出しの冒険者】
BLV:7
CLV:7
H P《Hit Point》 : 500
M P《Magic Point》 : 100
STR《Strength》 : 10 +2
VIT《Vitality》 : 10
DEX《Dexterity》: 10
AGI《Agility》 : 10 +60
INT《Intelligence》: 10
スキル
【剣術:TLV4】
|---片手剣:LV1 ― スラッシュ
|---短剣:LV1 ― ラッシュ
|---短剣:LV2 ― ピアス
|---短剣:LV3 ― 飛燕
【軽装戦士:TLV1】
|---歩方:LV1 ― ステップ
【二刀流:TLV1】
|---二刀流:LV1 ― 二刀流
物珍しさから取得してしまった……
短剣系スキルツリー 《ピアス》
鋭い攻撃で敵の装甲を貫く。一定の防御力を無視して攻撃する。クリティカルが出やすい。
見た感じ便利スキルその一。このスキルを先に取っていれば二本角戦はもう少し楽だった。そんな気持ちから取得してしまった。
ステータスをAGIに振っている分の火力をスキルで補わなければいけないと思っているのでしばらく歩法とかは取れないかな。その点このスキルは助かりそうだ。
短剣系スキルツリー 《飛燕》
素早い動きで切り上げる。
便利スキルその二。このスキル説明だけではスラッシュとほぼ変わらなそうに見えるけど動作が少し特殊なスキルだ。
発動時点で地上でも空中でも少し飛び上がる。空中では発動できないステップ代わりに体勢を変えることもできるので採用した。スキルチェインにも組み込みやすそうだし短剣系は良いね。
二刀流スキルツリー 《二刀流》
武器を複数装備してもペナルティが発生しない。武器ごとにスキルを発動できる用になる。
補正値 (1):武器攻撃力×1.0 (2)武器攻撃力×0.5 (3)武器攻撃力×0.25
格好良かったので取った。スキル説明文を見る限り武器が複数装備できるようになって、電気ウサギみたいに武器ごとにリキャストが変わって、二本目は攻撃力が半分、三本目以降は四分の一になる。
電気ウサギのリキャストが違う再現と二本角があったからこれを取得できるんだろうけど僕武器二本ないし。それに三本装備ってなんだ、口に咥えるのか。手に二本ずつとか四本ずつ持つのか。
取得してから気づいたけど単純に火力が増すだけでなく飛燕とかの立ち回りに使えそうなスキルを連発できるのも助かる。早いとこ二本目の武器探したいな。
冷静に考えてもなんで武器一本しかない初心者装備が二刀流を取得したのか。初心者で二刀流見てないし、僕だけのスキルっぽくてかっこいい~って取ったけど、そりゃ初心者で武器二本持つなら一本強化するよ!盾とか持つよ!
とりあえず有り合わせというか初心者用の片手剣を持つ。試しになんとなく構えてみるが短剣と片手剣で左右のバランスが微妙に悪い。いや現実の剣道とかは短いのと長いのを持つらしいからこのバランスが適正なのかな。うーむ。
とりあえず少し街の広場から脇にそれてぶんぶんと剣を降ってみるがやっぱりバランスが悪い。武器買ってみようかな。幸いにもウサギの素材ならいっぱいあるしこれでも売って少しはお金の足しにして。
そう思いNPCショップでも利用するかと顔を上げるとどこからともなく、タレを絡め肉を焼いたような良い匂いが漂ってきた。
匂いの元を探すと裏路地とまでも行かないが広場にもギリギリ入らない程度の少し陰った所、筋骨隆々のアバターをしたおじさんが額に手ぬぐいを巻き汗をかきながらも豪快に火を仰ぎ串に刺した肉を焼いていた。
お店の外観はぱっと見他のプレイヤー露店やNPCショップのような風貌だが明らかに
「お祭りの的屋だ……」
僕が小声で呟いた感想は火の勢いに負けなかったようで、おじさんが首を回してこちらを見る。
「へいらっしゃい!肉食うか!」
気さくだ。お祭りになんて参加できたことがないけど世にいる的屋の人たちはみんなこんな感じなのだろうか。いやもう少し優しそうだろうな、なんかおじさんの目ギラギラしてるし。
しかし話しかけてくれて無視をするのも忍びないと感じたのでなるべく朗らかに対応する。
「こんにちはー、何のお店……」
気を抜いていたのだろう。あれだけ動き回った後でかつデスペナルティ中なのだからと。僕は小走りで駆け寄ろうとしたところ、上げたAGIに乗せた躓きにより、露店の裏からおじさんを膝かっくんする形になった。
「ぐあああああああああ」
「お、おじさあああああああん!」
結果的におじさんは炉のような物の中に飛び込んでいった。街中なのでスリップダメージがないことはわかっているがすごい絵面だ。
おじさんは少しもがいたあと、何かテクスチャが引っかかってしまったのか出れないらしく後ろから引っ張るようにジェスチャーしてくる。指示に従い後ろから思いっきり引っ張ろうとするも、どうやら他人には街中で強い衝撃を与えられないらしく、苦肉の策でおじさんが火の中に飛び込んだ状態でフレンド登録を申請した。
「ふぅ……えらい目にあった」
「本当に申し訳ありません……僕の膝が」
「あぁ、坊主の膝もあれだがコンロに関しちゃ運営に報告しないとな。思いっきり飛び込むやつなんていなかっただろうが、意外と再現性も高い」
「伝えときます……」
「…?」
父さんに伝えておこう。コンロの中に後ろから思いっきり飛び込むと、体が大きいアバターの場合抜けだせなくなるよって。どんな顔して言えばいいんだそれ。
「改めて『ローステンの肉屋』へようこそ!」
フレンド欄にローステンという名前が表示されていたのを思い出す。お肉屋さんだったんだ。そう思いつつ露店の品ぞろえを見ると、串に刺さり焼かれた肉が並んでいた。
「串肉屋さん…?」
「今はまだ店を構えるほどの資金がないからな。第一第二辺りのモンスター肉を串焼きして売ってるんだ。夢は街路に店を構えてそこで色んな肉を売ることだな」
なるほど。ウサギ肉がドロップしたけど料理するとこんな美味しそうになるんだな。僕はとりあえずお詫びにウサギ肉の串焼きを1つ買うことにした。
「あ、美味しい」
「そうだろうそうだろう。自慢じゃないが≪料理≫スキルと≪解体≫スキルは育ててあるんだ」
料理スキルはそのまんま料理をうまく作るスキルで、スキルの中には料理のレシピを閃く物、料理の時短に関係するスキルが、解体スキルは敵を倒した際にドロップする量やドロップした物の質がよくなるパッシブスキルなどがあるそうだ。
「へー、解体スキルは普通に便利そうですね」
「最初は微々たる差だがな。それにクラスレベルも最初こそ伸びやすいがどんどん伸びづらくなるからな。解体になど回していると戦闘組はスキルが足らん」
最初の数レベルはベースレベルとクラスレベルが同時にのびてくるが10レベル辺りを境にクラスレベルは伸びづらくなっていき、しかもスキルにポイントを割り振ってもスキルが手に入るわけでもなくなってくるそうだ。
「坊主……コマイヌは典型的なAGI型の軽装戦士ってところか。しかし先ほどの挙動、まさか極振りか」
「一回だけSTRに振りましたけどそれ以降は」
「随分難儀な道を選んだな。俺もβからやってるがAGI極振りはだいたい人外みたいなやつしかおらん」
「人外……」
まさかの非人類認定。オネーチャンさんはやんわりと危険性を指摘していたがあれはオブラートに包んでくれた上での発言だったのか。
「それに剣二本なんて背負いおって。まさかAGI型に加えて二刀流か」
「なんかノリで取っちゃったんで」
「後先考えないタイプってよく言われるだろう」
人生設計なら割と考えてるんですけどね。よく言われます。なんていうことは口に出さずにあははと苦笑いだけ返しておくとローステンさんも肩を竦めて笑ってくれた。
「二刀流ということはデュアルホーンラビットを倒してるだろう。それまでにウサギ肉はドロップしなかったか」
「あー、わりとあります」
「そうか。NPCの雑貨屋なんかよりは高く買い取るから幾らか売ってくれないか。肉ならいくらでも歓迎してる」
素材を売るというところがこんなところで叶うとは思わなかった。スタックした肉を手のひらに呼び出すと結晶が出る。お肉何個でも結晶は一つなんだな。
「じゃあトレード出すからこれに乗せてくれ」
「了解です」
トレード希望と書かれた半透明なボードに結晶を乗せるとトレードしますかと確認が現れ、了承すると結晶が帰ってくる。中身はお金のようだ。そのままお金を自分のインベントリに仕舞うとおじさんが忠告してくれた。
「まぁ俺は信念に変えても詐欺なんかしないが、この量だと相場も知らんだろう。これから俺以外とも取引をするなら、素材の相場というものは常に把握しておけ」
「商人っぽいこと言いますね、了解です」
俺は肉屋なんだから商人だと豪快に笑われた。僕も釣られて笑顔になるとおじさんのところへお客さんが訪れるらしく、僕はお別れを告げ街の中へ消えていくことにした。とりあえず次は武器屋を探さなきゃな。
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「AGI極振りか……人外ばかりと言ったが坊主もそうかもしれんな……」
肉に串を刺しながら一人呟く。ローステンは半ばあて勘でAGI極だと聞いたがまさか本当にそうだとは思ってもみなかった。
彼は確かにAGI極振りを見たことはある。しかしそれはβテストや一キャラ目で純粋にその速度に慣れたプレイヤーのみがやっていたビルドだ。
一キャラ目で極振りにしたプレイヤーも確かにいたが大抵はその後別のステータスに割り振りを行うか、固定のパーティーがいるプレイヤーだったはずだ。迷惑をかけることが前提にある割り振り。それがAGI極だった。
なのにあの少年はデュアルホーンラビット……ソロでの討伐なら推奨レベル10レベル以上のモンスターを倒していた。
「AGI極は人外……笑い話で言ったが本当だったかもしれんな」
手持ちにあった肉を全て串に刺し終え、インベントリからつけダレをオブジェクト化する。タレにつけていくと確かに足音がこちらへ近寄ってくるのをローステンは聞いた。
「らっしゃい、『ローステンの……』」
それは事前に来訪を伝えてきていた、気難しい客であることを察して笑顔を作り直した。
「『ローステンの情報屋』へようこそ。何をお探しか」
「ああ、復讐者を出したAGI振りの少年」
「それなら丁度、新鮮なのが入ったぞ」
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