Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay

文字の大きさ
42 / 76

三十九話

しおりを挟む
わー、楽しー。って感じで走り回っていたら探すこと自体を忘れていた。反省。
全体を走り回って気づいたことはドーム型の空間で、中央から草原が広がっており、壁に沿うように低木や茂みがあり、ぱっと見壁の根元が見えないようになっている。まぁだからと言って壁際に何かがあるわけでもなく、見に行ってみたがただの木の幹のような壁だった。

試しに壁に向かって攻撃を行ってみるも街中の建物などのようにキィンと高い金属音がするだけで別に素材が取れるというわけでもなかった。そういえば木の地下というか、根っこの部分なのかな。だとしたらもし壊せたら木が折れるかもしれないわけだし、そりゃ切れないわ。

しかしこういうのって何しても切れないのかな……ゲームなら切れないだろうけどこれはVRMMOだしなぁ。

【 Action Skill : 《クロスカット》】

一応今現在で一番ダメージがでる攻撃をしてみた。と言っても僕自身のSTRが低いしそんな威力があるものでもないけど、と思っていると先ほどとは変化がある、木の皮がめくれて、下から樹液のようなものがにじみ出ている。おおー、まさか壁に攻撃するのが正解だとは……正解なのかな?

雫になるほどにたまってきた樹液に触れると結晶化し、インベントリにしまわれる。えーっと、【世界樹の涙】?何泣いてるんだ、相談乗るよ。
効果説明はっと、『ダンジョンアイテム:星の力を吸い上げる世界樹の樹液』か。ダンジョンアイテムってことはここでしか使わないアイテムなんだよね?それならこの階層の攻略に使うものだろうけど。

よし、収穫があったことだしボタンさんたちの元に帰るか。と顔をあげると先ほどまでより上の日差しが遮られ、陰になっていることに気づく。ダンジョン内なのに雲まであるのかな、と上を見る。

【カラミツタ】【メガプラント】【イーヴィルアイヴィ】【ブルプラント】

わーお。



「ドリちゃん、そろそろコマ君帰ってくるよ」

「うう……絶好の昼寝ポイントですよー、寝ないほうがおかしいですよこんなのー」

「まぁいい天気だし、モンスターも襲ってこないし、ピクニックとかしたくなる気分なのはわかるけど、一応ダンジョンの中だから、ね?」

「わかりましたよー」

和やかな会話しているところ失礼しまーす。

「うわー、コマ君相変わらず足はっや」

「そんなに慌ててどうしたんですかー?何か見つけましたー?」

「見つけたには見つけたんですけどー、ちなみにモンスタートレインってご存知ですか?」

「まぁ知ってますけどー……まさか」

モンスターから逃げようとしているときに別のモンスターからヘイトを買ってしまい、後ろに塊となってしまうのがトレイン。
モンスターのヘイトを買う行動を行い、自分にターゲットが向かってくる状態にし、攻撃が当たらないように回避しながら別のモンスターに同じ行動をする。
それを繰り返すことにより自分を狙うモンスターの集団を作り上げ、狙っている相手にそのヘイトを擦り付ければMPK,モンスタープレイヤーキルとなる。

とまぁ、今現在僕のヘイトは距離では切れないようになっているらしく。

「ドリちゃん、迎撃用意ー!」

「これでコマイヌ君が攻略に必要ない情報だったら怒るですよー!」

おそらく十匹は超えるモンスターたちを引き連れ中央まで戻ってきてしまったのだ。頑張るんで!頑張るんで許してください!

【 Action Skill : 《羊が一匹》】
【 Action Skill : 《泥沼《マッドプール》》】

「眠らせてる敵は攻撃しなければ効果時間いっぱいまで動かないのでー、なるべく一体ずつ撃破でー、モンスター同士の攻撃でも起きちゃうので距離に気を付けてくださいー」

「私もちょっと準備に時間かかるけど火力出る攻撃するから!コマ君その間回復できないから気を付けてね!」

「全部僕の責任なんで任せてください!」

ただなんとかできるなら任せますけど。とにかく今は目の前にいるモンスターの処理だ。眠っている敵はなるべく触れないように放置、起きていて暴れそうな奴をこちらへおびき寄せるんだよね。

と先ほどから明らかに僕にヘイトが来るので意識しないでも呼び寄せるのは簡単だ。ちょっと目の前に出てひらひら動いて見せるだけで勝手にこちらへ襲い掛かってくる。

「コマイヌ君何しちゃったんですかー?」

「僕自身は何もしてないはずなんですけどね、【世界樹の涙】ってアイテム取ってからアクティブになるようになっちゃって」

「泣いてるんですかねー」

「泣いちゃったんでしょうね」

僕とワンダードリームさんだといまいち会話に危機感とか焦燥感みたいなものが出ないけど、結構ピンチなはずなんだよね。
ただ僕と話しながらワンダードリームさんは次々とスキルを駆使しモンスターたちを分断、眠りにつかせている。僕は分断された端っこ、まだ寝ていなくて元気な個体を切り刻んでいる。

特に一階でも二階でも見なかった【イーヴィルアイビー】、こいつは蔦巨人のように蔦を駆使する植物モンスター。胴体にあたる茎は細く葉も茂っていないのだが、花びらがとても大きく、本来おしべやめしべがあるであろう場所に舌のような部位が、中央に向かって細かく牙が生えている。見た目だけで言うと食虫植物だろうか。攻撃方法は花を使った噛みつき、ひょこひょこと足に見立てた茎で歩いてきてまっすぐ噛みついてくる。
これは別に問題ない。ただ厄介なのがもう一つの蔦を伸ばして拘束して、一息に飲み込もうとしてくる攻撃だ。僕は別に伸びてきた蔦を全部叩き切ればいいけどワンダードリームさんやボタンさんに飛んで行ったらまずいので積極的にヘイトを取り、眠らせられる奴は眠りにつかせてもらう。

ただこのダンジョン虫すら見ていないけど何を食べているんだろうか。同じ植物?
明らかに茎が弱点なのだが近づくと噛みつかれるし、意外と胴体部分は硬い。何回も≪スラッシュ≫や≪クロスカット≫を一点にぶつけることでやっと切り離すことができる。切り離してしまえばクリティカルではなく【致命】攻撃となり、勝手に枯れ果てて倒れていく。まぁ普通に撃破だ。

すると集団での突撃が横から飛んでくる。これは【ブルプラント】
二階にいた【メガプラント】が豚にならこっちはもっと巨大な闘牛に寄生した植物とでも言うべきモンスターだろうか。メガプラントが蔦を使った小型のモンスターとするならこちらは蔦に加えて突進力や機動力も備えた戦車だ。

突進に加えて横に避けても蔦ではたかれる、正直言って苦手なタイプなのでひとまとめにして逃げ回っている。幸い僕に追いつけるほどの速さはないし、横に避けるさいもオーバーに飛び退けば躱すことができる。

しかしスタミナを回復する時間がないのが厳しい。いくらAGIに振ってスタミナが増えているとはいえずっと動きっぱなしのようなものだし、少しでもワンダードリームさんにヘイトが向かえば今の戦線すら崩壊してしまうかもしれない。
そういえば先ほどからボタンさんは何をしているのだろうか。

【 Action Skill : 《猪突猛進》】

ボタンさんの方を向くとスキルを使用したのだろう、スキルログが流れてくる。おおー、猪スキル。

【 Action Skill : 《猪突猛進》】【 Action Skill : 《猪突猛進》】【 Action Skill : 《猪突猛進》】……

と思っているととんでもない勢いでスキルログが流れていく。僕のスラッシュ連打より流れたけど、何十回発動したのだろうか。

【 Action Skill-chain : 《火球《ファイアーボール》》】

最後に魔法の詠唱を終え、ぽつん、と火の玉が現れる。あれ?火力があると言っていた気がするのだけれど、それに攻撃魔法はあまり使えないって言っていなかっただろうか。失礼ながら拍子抜けしていると火の玉がぶぶぶ…と輪郭をぶれさせる。そちらに視線を向けると火が炎へ、炎は火炎となっていく。終いには太陽を思わせるほど巨大な火球が天へ浮かび、地表を焦がし始めた。

ボタンさんがすっと指を上から下へ振ると火球はひとまとめになった植物モンスターへ落ちていき、そこら一帯を焦がしつくした。炎が広がり、熱に巻かれた風が吹きすさんだ。炎が消えた時には全てのモンスターが炎上し、体力を残していたモンスターたちも炎に巻かれ燃え尽きていった。
ボタンさんは何かしら代償があるのか、単純に気が抜けたのか肩で息をするように揺らしていた。

ええ……何ですかそのスキル。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

処理中です...