Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay

文字の大きさ
52 / 76

四十九話

しおりを挟む
「ふむ、私も見たが……相変わらず意味がわからないな」

僕の動画を再生して、上から僕を降らせようとか、いやいや鎖を使ってアメリカのヒーローみたいに木から木へと飛び移らせて出現させようというハナミさんとリーシュ君。それを横から見ていたリーシャさんからも、理解を得られなかった。

「そういえばシャーは前から変だーって言ってたね」

「当然だろう。コマイヌの挙動は明らかに健康で健全な人類のそれではない」

確かに健康な人類ではないのだけれど。それがゲームの操作と関係あるのだろうか。

「僕現実世界だと体弱くて、ほとんど寝たきりみたいなもんだからですかね」

何気なく発すると三人ともこちらを見て沈黙している。あれ、何か変なこと言っただろうか……個人情報とか?まぁ確かにネットリテラシーがなかったかもしれないけどおそらく自分の家、僕の部屋は子煩悩天才の父さんが魔改造している部屋の一つなので、現実世界で存在する個人宅の中でも最高レベルの防衛力を持っているからリア凸は警戒しないでもいいというところがある。それでも不特定多数から家にピザが届きまくったりしたら嫌だけど。

三人は僕から遠ざかるとこそこそと話し始める。どうしたんだろう。

「なんかシャーのせいで地雷ふんじゃったじゃん!どうするの!」

「ウチも体弱いんは聞いてたけどそこまでとは思ってへんかったな。リアルが学徒っぽいんにログイン時間がえぐいからおかしい思っとったけど……」

「正直私も困ってる、ここまであけすけに重い話をされると……なんか申し訳なくなった」

僕に聞こえないように話していた三人はこちらを向くとリーシャさんが頭を下げ僕にごめんとだけ告げた。何が?



何故か少しだけ視線が柔らかくなった、というか明らかに優しくなった三人と共に歩いている。今までハナミさんとミヅキ先輩、ボタンさんとドリさんと、歩いたことはあったけど、よくよく考えたらリーシャさんとリーシュ君が外を歩いているのを見るのは初めてだ。

まぁドリさんもダンジョンへ行くまでは正直クランハウスに住み着く座敷童的存在かと思っていたので、案外プレイヤーは外へ出るということはわかっている。

「他所のクランやと完全引きこもり生産職はおるらしいけどな」

「シャーとか割とそれに近いけどね、市場に出すのも部屋にそれ用の設備つけてるでしょ」

「私の場合はやっているゲームのジャンルが違うと思っているので……今回の討伐も直接的には参加しないので悪しからず」

確かにリーシャさんは一人だけ経済シミュレーターとかやってる気がする。いずれ土地とか投資にまで手が出そうだ、このゲームにそういう要素があるのかは知らないけれど。でもNPCショップに出資みたいなことができるらしいしありそうだなぁ。楽しそう。

楽しそうだけれど僕には無理だな。そこまで頭がよくないし一人で突っ込んでいる方が性に合っている。

街を歩いて数分、今回の僕らの連合の集合場所であるどこかのクランが経営する喫茶店へ来た。すでに僕ら以外のメンバーはだいたい集まっているようで、賑わいを見せている。盛り上がりすぎて喫茶店ってかなんか居酒屋みたいな雰囲気だな。実際に入ったことないけど。

こういう時僕は少し物怖じしてしまうけれどハナミさんとリーシャさんの両名はズカズカと入っていき、その後ろを僕とリーシュ君がついて行く。リーシャさんは代表に挨拶があるらしく、奥の方へ進む。リーシャさんの向かった先に【暴風】さんとオネーチャンさんがいるのを見つける。

そういえばミヅキ先輩とPKクランを討伐した後に来た時のクランの組み合わせか。懐かしいな。その組み合わせなら……と思い店の中を見渡すと、端の方の席に目当てのプレイヤー……僕が洞窟内で通り魔してしまったプレイヤーがいた。

軽く頭を下げるとあちらもこちらに気づき、何故か怯えたような仕草で頭を下げ返してくれた。なぜ怯えられているんだ。

顔見知りだし挨拶しないのもな、と僕も【暴風】さんがいる席へ向かう。ハナミさんとリーシュ君は適当な席に着くとさっそく酒盛りを始め、それにつられた酒飲みプレイヤーたちが集まってきた。
もっとリーシュ君はワイワイ騒ぐタイプかと思っていたけれど体を小さくしながらうつむいていた。大人数は緊張するタイプなのか。

「よぉ!コマイヌの坊主!」

「なんか混ざってます……まぁいいですけど」

「呼び方が定まんねぇんだ!んなこたぁいい。まずはダンジョン制覇おめでとう!」

「ああ、ありがとうございます」

おめでとうと言いながらこちらに歩み寄り、僕の肩をバンバンと叩く。だから強いんですって、街中じゃなかったら確実にダメージエフェクト出てますからね。

「そういえばお二人はお知り合いでしたね。クラン『十二支』で生産職をさせていただいているリーシャです。噂はかねがね」

「おう、今回は無理言ったってのに了承してくれて感謝してるぜ!」

無理言ったんだ。いや求心のペンダント数個とかそりゃ無理ゲーだけど。いくら何でも市場や露店にほとんど出回ってないか超高額で出てるやつばっかりだろうに。

「コマイヌの坊主たちのおかげでめでたくダンジョンが解放されて、しかもクエストがコンテンツ解放のカギになってるってことまでわかった。これに関しちゃぁwikiんとこも予想立ててたみたいだけどな」

「先を越されちゃいましたね~」

そう言って後ろからすっと現れお茶を僕たちへ渡してくれるオネーチャンさん。この人たぶんクラン内で結構偉い立場なのにいつもお茶出してるな。

「まぁ重要NPCやらメインクエストに関わってるだろうって予測は立てれたからそこら辺を重点的にwikiの奴らが洗い出してるとこだけどな」

「興味深いですね、私もコマイヌが王族NPCと偶発的に知り合うまで見たことも聞いたこともないほどでしたが、第一の街か第三の街で重要NPCでも発見できましたか?」

「第三はまだだな。あそこはドワーフたちの街だから少しばかりめんどくせぇ。第一の街は一応騎士団のクエスト関係から派生するってのがわかった段階だ」

「第一の街は人間種だからか通常NPCも多くてサブクエストは多いんですけどね~、人間模様の設定がどろどろしすぎて私たちのシミュレーションゲーム勢も困ってる感じですよ~」

いや、エルフたちも結構どろどろしてたみたいですよ?あの偉そうなエルフ、豪エル。なんかこの国の貴族っぽくて女王制度を撤廃しようとしてたとかなんとか聞きましたし。
やはり最初に運、そして最後には暴力がすべてを解決してくれる。

「今回のレイドバトルはそれをやっているときに見つかったものなのですか」

「そうだな。まず一般NPCのお使いクエストからそのNPCの家族の下級騎士の大量発生したモンスターの討伐をお手伝い、んで次にそれらを複数こなすと団長とお会いしての少しばかり強いクエストボスを討伐。で、最後にボロボロになった騎士団長と貴族様からの依頼で今回のレイドバトルだ」

「第一の街の騎士団長は~、結構顔がカッコよかったから人気出そうだったんですけどね~」

うわめんどくさい。よく見つけたなそんな条件。僕の場合ほとんど運が絡んで見つけられたダンジョンだったのに探す人はよくやるな。

「んじゃ、そろそろ時間だな。オネーチャン、説明よろしく頼む」

「いやいや~、有名プレイヤーと言えば【暴風】さんですよ~。お願いします~。あ、リーシャさんでもいいですよ~」

「まさか。私は参加させていただいた側の人間ですから。お二人に任せますよ」

何故か笑顔で牽制を始める代表者三人。いや、誰でもいいのでは……?と思いながら貰ったお茶を飲む。あ、これ美味しい。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

処理中です...