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出会いました
狩人さんに出会いました
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振り向いた時、そこにいたのは一人の青年だった。
緑を基調とした服装に茶色っぽいマントを羽織り、猟銃を持っている。
「こんばんわ、お嬢さん。こんなところでどうしたの?」
「…遠くに住んでいるお祖母様のところへ行く途中なのよ」
「もう暗いけど、大丈夫?」
「ええ。山小屋で一晩明かすから問題ないわ」
「そう、それなら大丈夫だね。ところで、この辺りで僕以外に誰かいなかったかな?」
「?どうして?」
「じつは……」
目の前の青年は語る。
曰く、
隣国の凶悪犯が牢から脱走して、この辺りで目撃情報があったと。
自分は狩人だからこの辺の情報に詳しく気にしていた…と。
「どうかな?」
「んー、怪しい人は見かけなかったわ」
(だって彼は怪我をしていた。牢を出るくらい行きたいと思っているなら、少なくとも傷を手当てするくらいはするはずだから…)
そう結論づけて目の前の青年に言うと、彼は頷いてから念を押すように言う。
「怪しい人には近づかないようにしなさい。何かあってからでは遅いのだから」
「ええ。ありがとう」
笑顔でお礼を言うと満足そうに笑って立ち去った。
(彼は自分を狩人だと行っていたけど…なんだか違和感があったような…)
しばらく立ち去る青年の後ろ姿を見ていたが、その違和感の正体がわからずなんだかモヤモヤした。
視線を落とした時、視界にはいた薬草を見て先にやることを思い出し慌てて山小屋に帰る。
まずは怪我を負っている青年を助けなくてはいけない。
小屋に戻ると青年は静かに眠っていた。
青白い顔はしているが、表情は少し穏やかだ。
薬草を置いて、また川に行って水を汲んでくると準備は整った。
「これと、これで傷薬になり…ああ、きっと熱が出るから熱ざましも必要ですね」
元々の口調が出てしまうが、ここに意識のある人は私しかいない。
咎める人がいないのだからのびのび自分の言葉を使える。
彼かが起きれば元に戻るのだけど…。
無心になって薬を作り、傷の手当てをしてしまう。このままでは化膿をしてもっとひどいことになってしまうからだ。
そして、熱ざましのお茶とスープも作った。
しかし、青年はまだ目を覚まさない。
彼の看病をするなら、きっとおばあさんの家に行くのは遅くなってしまうだろ。
だけど、死にそうな人を放ってはおけない。
目を覚ましていないことを確認してから、彼を観察する。
群青色の髪に精悍な顔立ち。意志の強そうな眉とほどよく日焼けをしている肌。瞳はしっかり閉じられているのでわからないが、手当てした時に見た体は細身ながらもガッチリとしていた。
「う…」
彼からうめき声が上がる。
そっと顔を覗き込んだら……彼の炎のように紅い瞳と目が合ったのだった。
緑を基調とした服装に茶色っぽいマントを羽織り、猟銃を持っている。
「こんばんわ、お嬢さん。こんなところでどうしたの?」
「…遠くに住んでいるお祖母様のところへ行く途中なのよ」
「もう暗いけど、大丈夫?」
「ええ。山小屋で一晩明かすから問題ないわ」
「そう、それなら大丈夫だね。ところで、この辺りで僕以外に誰かいなかったかな?」
「?どうして?」
「じつは……」
目の前の青年は語る。
曰く、
隣国の凶悪犯が牢から脱走して、この辺りで目撃情報があったと。
自分は狩人だからこの辺の情報に詳しく気にしていた…と。
「どうかな?」
「んー、怪しい人は見かけなかったわ」
(だって彼は怪我をしていた。牢を出るくらい行きたいと思っているなら、少なくとも傷を手当てするくらいはするはずだから…)
そう結論づけて目の前の青年に言うと、彼は頷いてから念を押すように言う。
「怪しい人には近づかないようにしなさい。何かあってからでは遅いのだから」
「ええ。ありがとう」
笑顔でお礼を言うと満足そうに笑って立ち去った。
(彼は自分を狩人だと行っていたけど…なんだか違和感があったような…)
しばらく立ち去る青年の後ろ姿を見ていたが、その違和感の正体がわからずなんだかモヤモヤした。
視線を落とした時、視界にはいた薬草を見て先にやることを思い出し慌てて山小屋に帰る。
まずは怪我を負っている青年を助けなくてはいけない。
小屋に戻ると青年は静かに眠っていた。
青白い顔はしているが、表情は少し穏やかだ。
薬草を置いて、また川に行って水を汲んでくると準備は整った。
「これと、これで傷薬になり…ああ、きっと熱が出るから熱ざましも必要ですね」
元々の口調が出てしまうが、ここに意識のある人は私しかいない。
咎める人がいないのだからのびのび自分の言葉を使える。
彼かが起きれば元に戻るのだけど…。
無心になって薬を作り、傷の手当てをしてしまう。このままでは化膿をしてもっとひどいことになってしまうからだ。
そして、熱ざましのお茶とスープも作った。
しかし、青年はまだ目を覚まさない。
彼の看病をするなら、きっとおばあさんの家に行くのは遅くなってしまうだろ。
だけど、死にそうな人を放ってはおけない。
目を覚ましていないことを確認してから、彼を観察する。
群青色の髪に精悍な顔立ち。意志の強そうな眉とほどよく日焼けをしている肌。瞳はしっかり閉じられているのでわからないが、手当てした時に見た体は細身ながらもガッチリとしていた。
「う…」
彼からうめき声が上がる。
そっと顔を覗き込んだら……彼の炎のように紅い瞳と目が合ったのだった。
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