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出会いました
手負いの獣
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「お前、何者だ」
紅い瞳と目が合った瞬間私は数秒固まってしまったが、彼の言葉でハッと我に返り言葉を紡ぐ。
「わ、私はその…」
「俺の命を狙いに来たのか!!」
人の話も聞かず、彼は上体を起こすといきなり殴りかかってくる。
しかし、彼は傷の痛みで力が入らなかったのか勢いはなかった。
「くっ…」
「だ、だめです!!そんなに動いたら傷口が開いちゃいます!」
怒鳴られたのも殴りかかられたのも遠い彼方。
まずは彼の傷が心配だった。
呻く彼をもう一度横にして瞬間的にかいた脂汗を持っていた布で拭いてあげた。
「お前は……」
「私はマイアといいます。これから街に住む祖母の家に行く予定です。少なくともあなたの敵ではないです」
「……俺を知らないのか?」
「?初対面ですよね?」
「……すまない。気が立っていたようだ。俺は ルプス だ」
横になっていたから頭を下げはしなかったけど、申し訳なさそうな顔をして彼いう。
(ルプスさん。なんだか訳ありみたいですね)
殴りかかられた時彼の目に写っていたのは明確な殺意。
その時の瞳は激しく燃え盛る炎のようだった。
紅い瞳と目が合った瞬間私は数秒固まってしまった。
初対面の私にすら警戒をしなければいけない身の上でここまで生きているということは、腕は立つのだろう。
少し考えていると、無意識に見つめていたのか少し居心地悪そうに身をよじらせた。
「何か言いたいことがあるなら言ってくれ」
「あ、いえ。何かわけがありそうだと思っただけです」
「まあな。関わりたくないならすぐに去るといい」
「私がここにいると落ち着かないのかもしれません。しかし……少なくとも、今は夜なのでここから去れません」
夜の森を歩くなんて自殺行為以外の何物でもない。
動物たちは活発に動くし、足元は見えないし、寒さによって体温が奪われると体調も崩す。
危険極まりない行為をする気は無かった。
「そう…か。この手当はお前がやってくれたのか?」
「はい。ちょうど手持ちの薬草があったので。それと、できれば名前で呼んでくれませんか?お前なんて呼ばれなくないです」
「手当に感謝する。呼び名は…マイア嬢でいいのか?」
「ただのマイアでお願いします」
「わかった。俺もルプスで構わない」
まるで手負いの獣が精一杯自分を守るために牙を向くような行動をしたルプス。
気分を害さなかったなんて言ったら嘘になるけど、紅い瞳があまりに美しくてそれに魅入られてしまった。
声に棘は無くなったのはわかる。
けれど、彼の体から緊張は抜けていないのだった。
紅い瞳と目が合った瞬間私は数秒固まってしまったが、彼の言葉でハッと我に返り言葉を紡ぐ。
「わ、私はその…」
「俺の命を狙いに来たのか!!」
人の話も聞かず、彼は上体を起こすといきなり殴りかかってくる。
しかし、彼は傷の痛みで力が入らなかったのか勢いはなかった。
「くっ…」
「だ、だめです!!そんなに動いたら傷口が開いちゃいます!」
怒鳴られたのも殴りかかられたのも遠い彼方。
まずは彼の傷が心配だった。
呻く彼をもう一度横にして瞬間的にかいた脂汗を持っていた布で拭いてあげた。
「お前は……」
「私はマイアといいます。これから街に住む祖母の家に行く予定です。少なくともあなたの敵ではないです」
「……俺を知らないのか?」
「?初対面ですよね?」
「……すまない。気が立っていたようだ。俺は ルプス だ」
横になっていたから頭を下げはしなかったけど、申し訳なさそうな顔をして彼いう。
(ルプスさん。なんだか訳ありみたいですね)
殴りかかられた時彼の目に写っていたのは明確な殺意。
その時の瞳は激しく燃え盛る炎のようだった。
紅い瞳と目が合った瞬間私は数秒固まってしまった。
初対面の私にすら警戒をしなければいけない身の上でここまで生きているということは、腕は立つのだろう。
少し考えていると、無意識に見つめていたのか少し居心地悪そうに身をよじらせた。
「何か言いたいことがあるなら言ってくれ」
「あ、いえ。何かわけがありそうだと思っただけです」
「まあな。関わりたくないならすぐに去るといい」
「私がここにいると落ち着かないのかもしれません。しかし……少なくとも、今は夜なのでここから去れません」
夜の森を歩くなんて自殺行為以外の何物でもない。
動物たちは活発に動くし、足元は見えないし、寒さによって体温が奪われると体調も崩す。
危険極まりない行為をする気は無かった。
「そう…か。この手当はお前がやってくれたのか?」
「はい。ちょうど手持ちの薬草があったので。それと、できれば名前で呼んでくれませんか?お前なんて呼ばれなくないです」
「手当に感謝する。呼び名は…マイア嬢でいいのか?」
「ただのマイアでお願いします」
「わかった。俺もルプスで構わない」
まるで手負いの獣が精一杯自分を守るために牙を向くような行動をしたルプス。
気分を害さなかったなんて言ったら嘘になるけど、紅い瞳があまりに美しくてそれに魅入られてしまった。
声に棘は無くなったのはわかる。
けれど、彼の体から緊張は抜けていないのだった。
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