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メアリー伯爵と対面
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メアリー伯爵領の街中を歩く翔とミゾレはやはり人目を引いた。
「あの男の人、すごくかっこいい」
「チョーイケメン」
「あの娘、今まで見たことが無いぐらい美しいぞ」
「う、羨ましい」
翔とミゾレは誰の目にもお似合いの美男美女カップルだった。
二人はどう見ても絶世の美男美女だった。
「む?なんだ?周囲の人間が騒がしいな?俺達が何かしたのか?」
翔はミゾレに聞く。
「た、多分、容姿端麗だからじゃないですか」
ミゾレは翔をチラリと見て控えめに言った。
「、、、、、成程。ミゾレは自信家だな」
翔はどう反応していいのか分からないように言った。
「ち、違います!わたしじゃなくて、まあ、わたしもですけど、翔さんが。。。。」
ミゾレの言葉は段々と小さくなった。
「俺?俺が何だと言うのだ?」
「、、、、しょ、翔さんが、カッコイイから。。。。。」
ミゾレは消え入りそうな声で言った。
「ん?何だ?」
「な、何でもないです!」
ミゾレは顔を真っ赤にして言った。
「早く酒場に行きましょう!!」
「俺もミゾレも未成年だがな」
≪メアリー伯爵領・酒場≫
「へいらっしゃい」
酒場のマスターが言った。
一万年に一人の美少女アイドル、小日向ミゾレを見て、酒場の人間はざわめく。
「お、おい、見ろよあの女」
「スゲェイカス」
「マブいぜ」
柄の悪そうな男たちが立ち上がる。
「へへ、お譲ちゃん、俺等と飲もうぜ」
「そんな小僧よりも良い夜を体験させてやるよ」
「お譲ちゃん可愛いねー。おじさん達と飲もうぜ」
チンピラ達がミゾレを取り囲もうとする。
「やめてください!」
ミゾレは翔の背中に縋りつく。
「おい小僧、痛い目に会いたくなきゃ、その女を寄こせ!」
「殴られたくないだろ?」
「グヘヘ」
チンピラは翔を舐め切っていた。
ただの色男だと油断している。
「十秒くれてやる。迅速に消えろ」
翔は冷たく言い放つ。
「ンだと小僧!」
「この餓鬼ャァ――――――――――!!!」
「ぶっ殺す!!」
チンピラが翔に襲いかかる。
ドガガ!!!
抜刀するまでも無く、翔の手刀と掌底でチンピラ達は返り討ちにされた。
「つ、強ぇえ」
「な、何者だ」
「ま、負けた」
チンピラ達は床に崩れ落ちる。
「ミゾレも面倒な人生を送って来たのだろうな。こうも注目されては、自由が無い」
翔はミゾレに同情した。
「そんなことありません!!翔さんに会えましたし、翔さんだって注目されてますよ!」
そう、そうなのだ!!翔もミゾレと同じかそれ以上に注目を集めて来たのだ。
ただ、翔の放つ圧倒的な戦闘オーラが人々を容易には寄せ付けず、道を阻む者は打倒して来たのだ。それが翔の人生だ。
「やっぱり啓示、当たったなあ」
ミゾレはボソリと呟く。
「ん?なんだ?」
翔はミゾレに問う。
「なんでもありません!」
ミゾレはニッと笑う。
「す、すげえ」
「なんだあの男」
「タダものじゃねえ」
「相当な修羅場を潜ってきたハズだぜ」
「ハンパじゃねえ」
酒場の猛者達は翔の圧倒的実力を目の当たりにして萎縮する。
翔はツカツカとカウンターに歩み寄る。
「俺達は旅をしている。メアリー伯爵領に付いて聞きたい」
翔は酒場のマスターに訊ねる。
「旦那、強いね。メアリー伯爵領は、元々王国の一部だったんだ。でも、王都で暴徒がクーデターを起こして、王都を占領してしまったんだ。
王制は崩壊して、共和制に移行した。
アンダーソン王国は転覆し、オリバー共和国が樹立された。
各地に革命の業火は飛び火して、暴力とリンチが横行した。
各地の領主が次々と殺され、亡命する中で、メアリー伯爵だけは逃げずに立ち向かった。
異世界召喚を行い、スキルと職を授与して、オリバー共和国の兵隊達と戦った。
今もオリバー共和国との戦いは継続中だ」
マスターは誇らしげに語る。
大体は翔の予想通りだった。
「なるほど、大体把握した。しかし、腑に落ちない事が有る。何故、メアリー伯爵はスキルを授与出来たんだ?スキルボックスを持っていたのか?それともスキルボックス以外にもスキルを獲得する方法が有るのか?」
「鋭いね、旦那。メアリー伯爵はスキルボックスを所有していた?何故か?それは、元々、メアリー伯爵家はメアリー王家で、メアリー伯爵領はメアリー王国だったからさ」
「つまり、歴史上のある段階で、アンダーソン王国に併呑されて王から伯爵に格下げされたと言う訳か」
「そうなんだよ。。。。」
マスターや酒場の客達は悲しそうな表情や、悔しそうな表情を浮かべる。
「オリバー共和国から完全に独立を勝ち取れば、王国復活と言う訳か」
翔が言った。
「そうさ!旦那、良い事言うね!」
「うおおおおおおおおお!!!!!」
マスターは喜び、客達は歓声を上げる。
酒場でも人々を魅了する。
これもまた、ショウ・タイム(翔の時間)だった。
「ところで、メアリー伯爵家が嘗ては王家だったと言う事と、スキルボックスを所有している事の関連性は何だ?王家にしかスキルボックスの所有は許されていないのか?
そもそもスキルボックスとは何だ?」
「王家とスキルボックスの関連性か、そいつぁ考えた事もねえやな。ただ、スキルボックスは王家が所有し、宮廷魔術師が異世界召喚を行う。それは確かな事で、どうしてそうなっているのかは分らねえ」
酒場のマスターは申し訳無さそうに言った。
「そうか」
翔は落胆する。
「邪魔したな」
翔とミゾレは酒場を出る。
「スキルボックスの解明が、異世界攻略の重要な鍵になる事は間違い無いのだがな」
翔は誰に言うとも無く言った。
「これからどうしますか?啓示スキルを発動しますか?」
ミゾレが尋ねる。
「いや、直接メアリー伯爵に会う」
「会って貰えますかね?」
「オリバー共和国のダンジョンを攻略した事を証明すれば、召喚者の待遇は獲得出来るだろう」
「な、なるほど」
翔とミゾレはメアリー伯爵の居城を目指す。
≪メアリー伯爵の居城≫
それはギルデンスターン王国に存在した正義の城とは違い、自然と調和した居城だった。
その静謐さは辺りに生い茂る樹木こそ人工物であるかの様な錯覚を抱かせる。
凛と佇み、まるでこの居城こそが何よりも最初にこの場所に有ったかの如く。
「綺麗な城ですね」
ミゾレは城を見て溜息を吐く。
「ミゾレの方が綺麗だよ」
翔は戯れを口にする。
「え?え?え?なななななななんですか?」
ミゾレは顔のみならず手まで真っ赤にして狼狽する。
サウナに入ったかのように汗だくだ。
「いや、何でも無い」
翔としては、城を見て呆けるミゾレを覚醒させる事が出来れば、言葉は何でも良かった。
「ききききき聞こえなかったのでもう一回言ってください!!」
ミゾレはオカワリを求めた。
「何にも言っていないが」
「いーえ!確かに言いました!!」
「良い天気だな、と言った」
「嘘!嘘です!嘘は駄目です!」
「何故嘘だと分かる?」
「分かるから分かるんです!」
「滅茶苦茶だな」
翔は城門に歩み寄る。
ミゾレも慌てて翔の後を追う。
城門には二人の守衛がいた。
「止まれ!」
守衛が翔に長槍を向ける。
「何者だ」
もう片方が問い質しながら長槍を構える。
「オリバー共和国から亡命して来た召喚者だ。オリバー共和国の横暴さに辟易した。賢明なる君主、メアリー伯爵の庇護下に入りたい」
翔は言った。
「なるほど。亡命召喚者か。証拠は?」
守衛が問う。
「召喚者にはスキルが授与される。それが証明になる」
「なるほど、ではスキルを見せてくれ」
当然の反応だ。
そして翔も当然予想した展開。
「俺のスキルは≪超斬撃≫。大体の物なら両断出来る」
勿論それは嘘だった。何でも切り裂けるのは真実だが、それはスキルによるものでは無い。
「そうか、では、この石を切断してくれ」
守衛は近くに有った大きめの石を指す。
「これを切断すれば、メアリー伯爵に御目通しして貰えるのか?」
「少なくとも、我々は君を召喚者として認めてメアリー伯爵に報告する義務が発生する」
「なるほど」
「、、、、、、斬らないのか?」
守衛が翔に訊ねる。
「もう斬った」
翔はあっさりと宣言した。
「な。。。。?」
「何を馬鹿な!」
守衛達は困惑する。
ズ、、、、ズズ、、、、、、ズズズ。。。。。。。
奇妙な音がした。
ズシン。。。。!!!
守衛の指定した石が音を立てて二つに割れた。
「そ、そんな。。。!!!」
「い、一体何時の間に!!??」
翔の神速の抜刀を守衛達は捕らえる事が出来なかったのだ。
「これで良いだろう?何なら、オリバー共和国に与しても構わないのだが?」
翔は圧倒的なオーラを放ちながら言った。
「ひ、ひいっ」
「す、直ぐに報告します」
守衛は怯え、メアリー伯爵に報告しに行く。
≪メアリー伯爵の居城・伯爵の間(旧、王の間)≫
翔とミゾレはメアリー伯爵に謁見していた。
「初めまして。私はメアリー・ブランディーと申します。この地域の領主を務めています」
メアリーは赤い髪をした美しい女だった。
年の程は二十代半ばと言った所だろうか、しかしその鋭い碧眼は傀儡人形では無い事をこれ以上無く雄弁に物語っている。
「聞けばあなたは大層腕の立つ召喚者だそうですね」
「自負しています」
翔は苦笑しながら答える。
「そこで、折り入った話ですが、双方の利益を鑑みた提案が有ります」
メアリーは翔をジッと見詰める。
「ダンジョン攻略でも、オリバー共和国との戦いでも、労力と難易度に見合うだけの利益を伯爵が提示出来るのであれば、遂行しますよ」
翔は先回りして話す。
「な、何と無礼な!」
メアリー伯爵に仕える大臣は激昂する。
「よい」
メアリーは手を少し上げて大臣を制する。
「具体的には、何を所望しますか?」
「伯爵の提案を遂行する為に我々が求めるべき物資、資金、それらは我々が求めるべき対価では有りません。何故ならば伯爵の提示する任務を放棄すればそもそもそれらは我々にとって必要無いものだからです」
「承知しています。資金、物資、人材の援助、そしてスキルボックスによるスキルの授与は任務遂行の対価では無く任務遂行に際しての自明なる援助だと心得ています」
「そうですか」
「しかし、スキルボックス自体は差し上げる事が出来ません。もっとも、オリバー共和国のスキルボックスを我々の手にもたらして頂けるのであれば、その限りでは有りませんが」
メアリーの言葉に、翔は苦笑する。
「中々図々しい御方ですね。それならば勘定が合いませんよ。オリバー共和国からスキルボックスを奪取すると言う事は、その前段階として共和国の主戦力と接触せずにはいられない。つまり、オリバー共和国からスキルボックスを奪取した時点で、オリバー共和国の主戦力は壊滅状態に陥っている筈です。それならば、オリバー共和国は崩壊したも同然。
即ち、メアリー伯爵は独立を勝ち取り王国を復活させるのみならず、オリバー共和国の全ての領土を併呑するに等しい。それが可能になる。
単純に数に換算しても、これだけで二つの成果ですよ。それに付随してスキルボックスまで所望するとは、いやはや何とも」
翔は大いに笑った。
「無礼者!」
兵士達は翔に襲いかかる。
ズババババ!!!
翔は抜刀し、襲い来る兵士達を一人残らず刀の錆にした。
「こいつ等はスキルを発動しようとしなかった。つまりこいつ等は召喚者では無い。召喚者はダンジョン攻略にでも出払っているのだろう。プランを変更するかな。メアリー伯爵領の強奪に」
「なっ?」
翔の言葉に大臣は狼狽する。
「何なら増援でも呼んでみるか?そいつ等が到着する前に、お前等を皆殺しに出来るが」
翔は剣をゆっくりと振り上げる。
「お待ちください!」
メアリー伯爵はそう言い、翔の前に跪く。
ショウ・タイム(翔の時間)は加速する。
「あの男の人、すごくかっこいい」
「チョーイケメン」
「あの娘、今まで見たことが無いぐらい美しいぞ」
「う、羨ましい」
翔とミゾレは誰の目にもお似合いの美男美女カップルだった。
二人はどう見ても絶世の美男美女だった。
「む?なんだ?周囲の人間が騒がしいな?俺達が何かしたのか?」
翔はミゾレに聞く。
「た、多分、容姿端麗だからじゃないですか」
ミゾレは翔をチラリと見て控えめに言った。
「、、、、、成程。ミゾレは自信家だな」
翔はどう反応していいのか分からないように言った。
「ち、違います!わたしじゃなくて、まあ、わたしもですけど、翔さんが。。。。」
ミゾレの言葉は段々と小さくなった。
「俺?俺が何だと言うのだ?」
「、、、、しょ、翔さんが、カッコイイから。。。。。」
ミゾレは消え入りそうな声で言った。
「ん?何だ?」
「な、何でもないです!」
ミゾレは顔を真っ赤にして言った。
「早く酒場に行きましょう!!」
「俺もミゾレも未成年だがな」
≪メアリー伯爵領・酒場≫
「へいらっしゃい」
酒場のマスターが言った。
一万年に一人の美少女アイドル、小日向ミゾレを見て、酒場の人間はざわめく。
「お、おい、見ろよあの女」
「スゲェイカス」
「マブいぜ」
柄の悪そうな男たちが立ち上がる。
「へへ、お譲ちゃん、俺等と飲もうぜ」
「そんな小僧よりも良い夜を体験させてやるよ」
「お譲ちゃん可愛いねー。おじさん達と飲もうぜ」
チンピラ達がミゾレを取り囲もうとする。
「やめてください!」
ミゾレは翔の背中に縋りつく。
「おい小僧、痛い目に会いたくなきゃ、その女を寄こせ!」
「殴られたくないだろ?」
「グヘヘ」
チンピラは翔を舐め切っていた。
ただの色男だと油断している。
「十秒くれてやる。迅速に消えろ」
翔は冷たく言い放つ。
「ンだと小僧!」
「この餓鬼ャァ――――――――――!!!」
「ぶっ殺す!!」
チンピラが翔に襲いかかる。
ドガガ!!!
抜刀するまでも無く、翔の手刀と掌底でチンピラ達は返り討ちにされた。
「つ、強ぇえ」
「な、何者だ」
「ま、負けた」
チンピラ達は床に崩れ落ちる。
「ミゾレも面倒な人生を送って来たのだろうな。こうも注目されては、自由が無い」
翔はミゾレに同情した。
「そんなことありません!!翔さんに会えましたし、翔さんだって注目されてますよ!」
そう、そうなのだ!!翔もミゾレと同じかそれ以上に注目を集めて来たのだ。
ただ、翔の放つ圧倒的な戦闘オーラが人々を容易には寄せ付けず、道を阻む者は打倒して来たのだ。それが翔の人生だ。
「やっぱり啓示、当たったなあ」
ミゾレはボソリと呟く。
「ん?なんだ?」
翔はミゾレに問う。
「なんでもありません!」
ミゾレはニッと笑う。
「す、すげえ」
「なんだあの男」
「タダものじゃねえ」
「相当な修羅場を潜ってきたハズだぜ」
「ハンパじゃねえ」
酒場の猛者達は翔の圧倒的実力を目の当たりにして萎縮する。
翔はツカツカとカウンターに歩み寄る。
「俺達は旅をしている。メアリー伯爵領に付いて聞きたい」
翔は酒場のマスターに訊ねる。
「旦那、強いね。メアリー伯爵領は、元々王国の一部だったんだ。でも、王都で暴徒がクーデターを起こして、王都を占領してしまったんだ。
王制は崩壊して、共和制に移行した。
アンダーソン王国は転覆し、オリバー共和国が樹立された。
各地に革命の業火は飛び火して、暴力とリンチが横行した。
各地の領主が次々と殺され、亡命する中で、メアリー伯爵だけは逃げずに立ち向かった。
異世界召喚を行い、スキルと職を授与して、オリバー共和国の兵隊達と戦った。
今もオリバー共和国との戦いは継続中だ」
マスターは誇らしげに語る。
大体は翔の予想通りだった。
「なるほど、大体把握した。しかし、腑に落ちない事が有る。何故、メアリー伯爵はスキルを授与出来たんだ?スキルボックスを持っていたのか?それともスキルボックス以外にもスキルを獲得する方法が有るのか?」
「鋭いね、旦那。メアリー伯爵はスキルボックスを所有していた?何故か?それは、元々、メアリー伯爵家はメアリー王家で、メアリー伯爵領はメアリー王国だったからさ」
「つまり、歴史上のある段階で、アンダーソン王国に併呑されて王から伯爵に格下げされたと言う訳か」
「そうなんだよ。。。。」
マスターや酒場の客達は悲しそうな表情や、悔しそうな表情を浮かべる。
「オリバー共和国から完全に独立を勝ち取れば、王国復活と言う訳か」
翔が言った。
「そうさ!旦那、良い事言うね!」
「うおおおおおおおおお!!!!!」
マスターは喜び、客達は歓声を上げる。
酒場でも人々を魅了する。
これもまた、ショウ・タイム(翔の時間)だった。
「ところで、メアリー伯爵家が嘗ては王家だったと言う事と、スキルボックスを所有している事の関連性は何だ?王家にしかスキルボックスの所有は許されていないのか?
そもそもスキルボックスとは何だ?」
「王家とスキルボックスの関連性か、そいつぁ考えた事もねえやな。ただ、スキルボックスは王家が所有し、宮廷魔術師が異世界召喚を行う。それは確かな事で、どうしてそうなっているのかは分らねえ」
酒場のマスターは申し訳無さそうに言った。
「そうか」
翔は落胆する。
「邪魔したな」
翔とミゾレは酒場を出る。
「スキルボックスの解明が、異世界攻略の重要な鍵になる事は間違い無いのだがな」
翔は誰に言うとも無く言った。
「これからどうしますか?啓示スキルを発動しますか?」
ミゾレが尋ねる。
「いや、直接メアリー伯爵に会う」
「会って貰えますかね?」
「オリバー共和国のダンジョンを攻略した事を証明すれば、召喚者の待遇は獲得出来るだろう」
「な、なるほど」
翔とミゾレはメアリー伯爵の居城を目指す。
≪メアリー伯爵の居城≫
それはギルデンスターン王国に存在した正義の城とは違い、自然と調和した居城だった。
その静謐さは辺りに生い茂る樹木こそ人工物であるかの様な錯覚を抱かせる。
凛と佇み、まるでこの居城こそが何よりも最初にこの場所に有ったかの如く。
「綺麗な城ですね」
ミゾレは城を見て溜息を吐く。
「ミゾレの方が綺麗だよ」
翔は戯れを口にする。
「え?え?え?なななななななんですか?」
ミゾレは顔のみならず手まで真っ赤にして狼狽する。
サウナに入ったかのように汗だくだ。
「いや、何でも無い」
翔としては、城を見て呆けるミゾレを覚醒させる事が出来れば、言葉は何でも良かった。
「ききききき聞こえなかったのでもう一回言ってください!!」
ミゾレはオカワリを求めた。
「何にも言っていないが」
「いーえ!確かに言いました!!」
「良い天気だな、と言った」
「嘘!嘘です!嘘は駄目です!」
「何故嘘だと分かる?」
「分かるから分かるんです!」
「滅茶苦茶だな」
翔は城門に歩み寄る。
ミゾレも慌てて翔の後を追う。
城門には二人の守衛がいた。
「止まれ!」
守衛が翔に長槍を向ける。
「何者だ」
もう片方が問い質しながら長槍を構える。
「オリバー共和国から亡命して来た召喚者だ。オリバー共和国の横暴さに辟易した。賢明なる君主、メアリー伯爵の庇護下に入りたい」
翔は言った。
「なるほど。亡命召喚者か。証拠は?」
守衛が問う。
「召喚者にはスキルが授与される。それが証明になる」
「なるほど、ではスキルを見せてくれ」
当然の反応だ。
そして翔も当然予想した展開。
「俺のスキルは≪超斬撃≫。大体の物なら両断出来る」
勿論それは嘘だった。何でも切り裂けるのは真実だが、それはスキルによるものでは無い。
「そうか、では、この石を切断してくれ」
守衛は近くに有った大きめの石を指す。
「これを切断すれば、メアリー伯爵に御目通しして貰えるのか?」
「少なくとも、我々は君を召喚者として認めてメアリー伯爵に報告する義務が発生する」
「なるほど」
「、、、、、、斬らないのか?」
守衛が翔に訊ねる。
「もう斬った」
翔はあっさりと宣言した。
「な。。。。?」
「何を馬鹿な!」
守衛達は困惑する。
ズ、、、、ズズ、、、、、、ズズズ。。。。。。。
奇妙な音がした。
ズシン。。。。!!!
守衛の指定した石が音を立てて二つに割れた。
「そ、そんな。。。!!!」
「い、一体何時の間に!!??」
翔の神速の抜刀を守衛達は捕らえる事が出来なかったのだ。
「これで良いだろう?何なら、オリバー共和国に与しても構わないのだが?」
翔は圧倒的なオーラを放ちながら言った。
「ひ、ひいっ」
「す、直ぐに報告します」
守衛は怯え、メアリー伯爵に報告しに行く。
≪メアリー伯爵の居城・伯爵の間(旧、王の間)≫
翔とミゾレはメアリー伯爵に謁見していた。
「初めまして。私はメアリー・ブランディーと申します。この地域の領主を務めています」
メアリーは赤い髪をした美しい女だった。
年の程は二十代半ばと言った所だろうか、しかしその鋭い碧眼は傀儡人形では無い事をこれ以上無く雄弁に物語っている。
「聞けばあなたは大層腕の立つ召喚者だそうですね」
「自負しています」
翔は苦笑しながら答える。
「そこで、折り入った話ですが、双方の利益を鑑みた提案が有ります」
メアリーは翔をジッと見詰める。
「ダンジョン攻略でも、オリバー共和国との戦いでも、労力と難易度に見合うだけの利益を伯爵が提示出来るのであれば、遂行しますよ」
翔は先回りして話す。
「な、何と無礼な!」
メアリー伯爵に仕える大臣は激昂する。
「よい」
メアリーは手を少し上げて大臣を制する。
「具体的には、何を所望しますか?」
「伯爵の提案を遂行する為に我々が求めるべき物資、資金、それらは我々が求めるべき対価では有りません。何故ならば伯爵の提示する任務を放棄すればそもそもそれらは我々にとって必要無いものだからです」
「承知しています。資金、物資、人材の援助、そしてスキルボックスによるスキルの授与は任務遂行の対価では無く任務遂行に際しての自明なる援助だと心得ています」
「そうですか」
「しかし、スキルボックス自体は差し上げる事が出来ません。もっとも、オリバー共和国のスキルボックスを我々の手にもたらして頂けるのであれば、その限りでは有りませんが」
メアリーの言葉に、翔は苦笑する。
「中々図々しい御方ですね。それならば勘定が合いませんよ。オリバー共和国からスキルボックスを奪取すると言う事は、その前段階として共和国の主戦力と接触せずにはいられない。つまり、オリバー共和国からスキルボックスを奪取した時点で、オリバー共和国の主戦力は壊滅状態に陥っている筈です。それならば、オリバー共和国は崩壊したも同然。
即ち、メアリー伯爵は独立を勝ち取り王国を復活させるのみならず、オリバー共和国の全ての領土を併呑するに等しい。それが可能になる。
単純に数に換算しても、これだけで二つの成果ですよ。それに付随してスキルボックスまで所望するとは、いやはや何とも」
翔は大いに笑った。
「無礼者!」
兵士達は翔に襲いかかる。
ズババババ!!!
翔は抜刀し、襲い来る兵士達を一人残らず刀の錆にした。
「こいつ等はスキルを発動しようとしなかった。つまりこいつ等は召喚者では無い。召喚者はダンジョン攻略にでも出払っているのだろう。プランを変更するかな。メアリー伯爵領の強奪に」
「なっ?」
翔の言葉に大臣は狼狽する。
「何なら増援でも呼んでみるか?そいつ等が到着する前に、お前等を皆殺しに出来るが」
翔は剣をゆっくりと振り上げる。
「お待ちください!」
メアリー伯爵はそう言い、翔の前に跪く。
ショウ・タイム(翔の時間)は加速する。
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