美しき怪人は少年少女探偵団を眠らせてくれない

white love it

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第2章

5.

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 まずはフォロワー数が百人以上のアカウントを除外することにした。

「だってさ、チャット内でもまともに相手にされてないんだよ? フォロワーなんかまともにつくわけないじゃん」
「となると残りは七人ね。次は?」

 亜紀が尋ねると、今度は誠があるアカウントを指しながら答えた。

「こいつの正体が学生なのか、自由業なのか、無職なのかは分からないけど、これだけ頻繁に書き込める奴がまさかサラリーマンのわけはないよな」

 誠の指したアカウントの持ち主は、どうやら営業の仕事をしているらしい。半年前にあげた写真には会社で使っていると思われる営業車が写っていた。

「あと六人」

 今度は亜紀の番だった。

「どうやって乃愛の私生活を知ったかは分からないけど、他の乃愛のファンアカウントをフォローしている可能性は高いと思うわ。少なくとも、ドラマや映画の感想をちょっと載せてるくらいの人達は除外していいんじゃないかしら」
「あと三人ね。さてと問題はここからね」

 乃愛の言う通り、残りの三人はあまり投稿内容から区別することが難しいように思えた。いずれも乃愛に関する投稿と、プライベートな内容、例えば今日は何を食べたかなどの投稿の比率は同じくらいだった。内容からするに、三人とも大人の男性という点でも共通しており、誰を除外するかは難しいところだった。
 普通に考えれば、だが。
 智也には最後に秘策があった。ただこの方法は、できれば使いたくなかった。無関係の人間を巻き込む上、かなり不快にさせるからだ。
 しかし状況が状況なだけに、もはやためらっている余裕はなかった。

「ねえ、乃愛。今使っているアカウント、別に使えなくなっても構わないよね?」
「うん……それは問題ないけど、どうする気なの?」
「ちょっと汚いやり方だけどね」

 智也は三人にメッセージを送った。

『ブタ男さん。知ってます? チャットルームであなたのこと馬鹿にしてる人達がいるの。犯人はヤスオっていうハンドルネームです。たった今、あなたを誹謗中傷する部屋をつくってましたよ』

「やるな、智也。煽りの釣り針を垂らしたわけか」
「うん、多分ブタ男のことだからすぐに食いつくはず」
「ちょっと待って、智也くん。ヤスオって誰?」
「ああ、それは……」
 
 そこを聞かれると智也としても心が痛い。何せチャットルーム内にいた、全く無関係な人物なのだから。

「まあ、ミルヴァートン邸のアガサってことで……」
「は?」
「お、早速かかったみたいだぞ」

 画面には三人のうちの一人から返事がきていた。

『誰だ、お前? あのチャットの奴か?』

「間違いないね」
「チャットルームのほうにも書き込んでるわ」

 乃愛が画面を切り替えると、ブタ男の最新の書き込みが表示された。

『お~い、俺に言いたいことがある奴、正々堂々とかかってこいよ』

 ヤスオに向かって呼びかけているのは、一目瞭然だった。もっとも事情を知らない他のメンバーからしたら、何のことかチンプンカンプンだろう。

「正々堂々ですって!? よく言うわよ。自分のことは棚に上げて」

 亜紀が呆れた様子で言った。

「でもこれで、ブタ男のアカウントがどれかは分かったわね」
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