美しき怪人は少年少女探偵団を眠らせてくれない

white love it

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第2章

6.

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「おいおい、アカウントが分かっただけじゃ意味がないだろ」

 誠の言うとおりだ。
 が分かっても意味がない。何とかして、本名、あるいは住所を探らないと。
 智也はあらためて、ブタ男の投稿に目をやった。乃愛、ラーメン、乃愛、車、乃愛、乃愛、政治家……プライベートな部分に関してはほとんど載せられていない。車のナンバープレートも映ってないのだ。

「うーん……」

 誠や亜紀も画面を睨んだまま固まっている。
 突然、乃愛が画面をブタ男の二十人ほどのに切り替えた。

「こんな奴をわざわざフォローしてるのって、どんな人達だと思う?」
「難しい質問ね。リアルな友達は少なそうだもの」
「逆よ、亜紀ちゃん。
「そういうことか」

 誠が指をパチンと鳴らした。まるでハリウッド俳優だ。

「現実での数少ない友人くらいしか、こいつをフォローする奴はいないだろうからな。その友達の投稿からブタ男の正体を探るわけだな」
「うん、いいアイデアだと思う」

 智也達がブタ男のフォロワー二十人のなかから目をつけたのは、山田辰紀という男だった。
 ブタ男の投稿に度々コメントをしているほか、ブタ男も返信をつけているのだ。
 読みは当たりだった。
 山田辰紀は自分の投稿で、ブタ男と一緒に巨大ゲームセンターに行った時の写真を載せていたのだ。しかもご丁寧に、コメントにはとわざわざ書いてくれていた。

「ゲームセンターに行ったのは半年前か。このゲームセンターは確かS市の隣のM市にできたやつだったよな?」
「ということはブタ男もM市の可能性が高いわね」
「顔も分かったし、かなりの前進じゃない」

 確かにかなりの前進だ。
 だが智也としてはもう一押しが欲しいところだった。
 いくら住んでいる市と顔が分かっても、それだけで本人を特定したことにはならない。

「ねえ、M市にさ、地元の人しか知らないような秘密の場所ってない?」

 智也は三人に話しかけた。
 答えたのは亜紀だった。

「地元の人だけかどうかはわからないけどさ、市の真ん中にあるM市立第三公園ってなぜかマンドリル公園って呼ばれてたわね。なんでもそういう呼び方をするのは、地元の人だけみたいよ」
「は? マンドリル? 何でだよ? っていうか、なんで亜紀が知ってるんだよ?」
「前に英語のスピーチコンテストでM市の市立公会堂に行ったときにね、向こうの中学の子達がそう呼んでるのを聞いちゃったのよ。でも、そんなのどうするの?」

 智也は乃愛のほうを見ると言った。

「お願いがあるんだけどさ、あのRINGのチャットルームに書き込んでほしいんだ。葛城乃愛がマンドリル公園で、今度の土曜日の正午に雑誌の撮影をするらしいよ、ってさ」

 乃愛が書き込むとすぐに他のチャットメンバー達から、マンドリル公園とはどこなのか?という質問が書き込まれた。
 だが、いつもなら他人の書き込みにすぐ上書きしようとするブタ男が、今回はコメントの気配を一切見せなかった。

「なるほど。自分だけが知ってれば、わざわざ他人に教えてやる必要はないってわけか」

 誠はそう言うと、口元についたクッキーのかけらをぺろりと舐めとった。
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